Pest
Management Science: 61: 301–311 (2005)
DOI: 10.1002/ps.1015
除草剤耐性作物と除草剤耐性雑草
Micheal DK Owen∗ and Ian A Zelaya
Iowa State University, Ames, IA 50011-1011, USA
訳 河田昌東
要旨:
遺伝子組換え作物(GM)の栽培は過去3年間に劇的に増加し、現在、世界全体では5200万ヘクタールのGM作物が植えられている。植えられているGM作物のうちおよそ4100万ヘクタールが除草剤耐性で、この中には3330万ヘクタールの除草剤耐性大豆が含まれている。
除草剤耐性トウモロコシ、キャノーラ、綿、そして大豆は2001年にはGM作物の77%であった。
しかし、テンサイ、小麦、その他14種類もの作物が近い将来に除草剤耐性品種として商業利用されるであろう。
GMと除草剤耐性作物の生産には、穀物同士の混入や分別、除草剤耐性形質の水平伝達、市場の受容や除草剤に対する信頼などを含む多くのリスクが伴っている。後者の問題は、雑草群の変化や除草剤耐性雑草の出現、除草剤耐性作物の野生化などの形で現れている。その他の問題は、除草剤耐性作物の栽培による単純な除草計画が雑草群落に与える生態学的影響である。
ツユクサ(Commelina cumminus L)、シロザ(Chenopodium album L)、イタドリ(Polygonum convolvulus L)等が、除草剤耐性作物の栽培と除草剤の使用がもたらす単純かつ有意義な選択圧の結果、いくつかの農業生態系で顕著に増加していると報告されている。結果的には、除草剤耐性作物とそれに伴う除草プログラムが原因で、除草剤耐性の雑草群落が出現した。
除草剤耐性の雑草群落の例としては、 N-(phosphonomethyl) glycine (グリフォサート)に耐性を持つヒメムカシヨイモギ(Conyza canadensis L)がある。重要な疑問は、これらの問題が将来の農業にとって有意の経済的影響をあらわすかどうかである。
除草剤耐性作物の雑草群落に与える影響についての新たな研究
http://www.weeds.iastate.edu/weednews/2005/newpublicaiton.htm
by Micheal D. K. Owen
訳 河田昌東
2005年5月23日
アイオワ州立大学農学部の行った研究が最近、病害虫科学(Pest Management Science (61:301-311)訳注:上の論文)に掲載された。紹介された論文は、2004年3月に第227回アメリカ化学会の農薬分科会で行われた、バイオテクノロジーによる除草剤耐性作物が農業に与える影響に関するシンポジウムで、マイケル.D.K.オーウエン(Micheal D. K. Owen)とイアン.A.ゼラヤ(and Ian A. Zelaya)が発表したものである。
この特別シンポジウムは、農薬研究に与えられる国際的な賞の受賞者であるステファン.O.ヂューク博士を称えて行われたものである。この論文は、除草剤耐性作物の雑草群落に与える影響を述べたものである。特に、除草剤耐性作物の増加による選択圧と除草剤耐性雑草の発生に絞って詳しく述べている。ヒメムカシヨモギ属の交配とグリフォサート耐性の遺伝子移行について定量的に述べられている。下の写真は、左が小型のノミヨケソウ(Conyza
ramosissima)、右がヒメムカシヨモギ(Conyza
canadensis)、真中が両者の交配種である。ヒメムカシヨモギのグリフォサート耐性形質が雑種の子どもに遺伝した。
交配が温室の中で行われたということ、グリフォサート耐性が遺伝した、ということの意味がまだはっきりしないことを認識することは大切である。交配が野外でも自然に起こる、という限られたケーススタディの証拠である。