除草剤耐性がラウンドアップ・アンレーデイに(*)
ニューヨーク・タイムズ
2003年2月19日
訳 河田昌東
近代農業で最も普及している薬品の一つがグリフォサートと呼ばれる除草剤で、これはラウンドアップという商品名でよく知られている。1974年にモンサントによってこれが始めて導入されたときは、それが今ほど広がり農業を変えるほどになるとは誰も予想しなかった。ラウンドアップは安全でよく効き、環境にもやさしいといわれてきた。これは農家が土を耕さずにスプレーで除草する「不耕起」栽培に欠かせない手段の一つになり次第にポピュラーになった。しかし、ラウンドアップの普及がもたらした本当の結果は遺伝子組換え作物、特に大豆、綿、コーンなどラウンドアップを直接散布しても耐性を持つ作物の開発であった。
雑草は死ぬがラウンドアップ・レデイーと呼ばれるこれらの作物は生き残る。昨年度栽培された大豆の75%はラウンドアップ・レデイーであった。綿は65%、コーンは10%がラウンドアップ耐性であった。大豆だけを取ってみると、昨年度農家が散布したグリフォサートの量は3300万ポンド(約14500トン)に上る。
しかし、今度は自然が自らラウンドアップ・レデイー雑草を作り出した。「スギナ」と「ウオーター・ヒンプ(water himp:Acnida cannabina:ヒユ科の雑草)」と呼ばれる二種類の雑草がすでに耐性を示し始めており、他の雑草もそれに続くだろう。これは単に自然への適応が働いたにすぎない。ラウンドアップがその万能的な効果をもうすぐ失うだろうと言う人は誰もいない。しかし、モンサントの首脳と科学者達が除草剤を守るべく最善を尽くしている間、自然もまたその除草剤を無効にする努力をしてきたのである。まさに事実の問題として、ラウンドアップの広がりが自然に巨大な利益を与えてきたのである。あたかも細菌が農業用抗生物質の多用でそれに対する耐性を獲得したように。
工業的な農業の論理によれば、最適な手段を価値がなくなるまで利用し続けなければならず、それを出来るだけたくさん使うことで価値の喪失を促進することである。これはコーン・ボーラーという害虫を殺す毒を作る遺伝子を含むコーンを販売することに対し何故たくさんの反対があったか、というのとまさに同じである。Bt(殺虫遺伝子)は園芸家や農家にとって安全で、自然で効果的な武器ではあったが、それを多用することで効果を失わせる、ラウンドアップ同様の困った廃棄物なってしまう。工業的農業は常に銀の弾丸を捜し求めているが、結局銀の弾丸は不発に終わることを忘れている。
(訳注:unreadeyはRoundup Readyを皮肉り、「効かない」という意味に使われている)