論文:Journal of Animal Science (2003) 81. pp2546-2551

 

遺伝子組み換えコーンBt11を食べさせた豚の胃腸内容物におけるコーン固有及び組み換えDNA断片とCry1Abタンパク質の検出

 

E.h.Chowdhury, H..Kurihara, A.Hino, P. Sultana, O. Mikami, N. Shimada, K.S. Guruge, M. Saito and Y. Nakajima   (筑波動物衛生研究所、国立食品総合研究所、国立畜産草地研究所)

 

要旨翻訳:河田昌東

 遺伝子組み換えコーンは数カ国で動物飼料として認可されているが、その組み換えDNAとタンパク質が体内でどうなっているかに関する情報は不十分である。遺伝子組み換えコーンBt11はバチルス・チューリンギエンシス、クルスタキ亜種由来の殺虫タンパク質Cry1Abをコードする組み換えDNAを挿入し開発されたものである。我々は、Bt11のコーンを与えた豚5頭と、非組み換えコーンを与えた豚5頭の胃腸内容物を、PCRによってコーン由来の遺伝子とcry1Ab遺伝子の存在を調べ、免疫学的テストでCry1Abタンパクの存在を調べた。コーン由来のゼイン・タンパク質の遺伝子(242bp)、インヴェルターゼ・タンパク質の遺伝子(226bp)、リブロース―1,5−二燐酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ遺伝子(1020bp)の各断片がBt11コーンを与えた豚と非組み換えコーンを与えた豚の双方の胃腸内容物に検出された。組み換え遺伝子cry1Abの断片(110bpと437bp)はBt11飼料を与えた豚の胃腸内容物には検出されたが、対照の豚(非組み換え飼料)には検出されなかった。
 PCRでは末梢血中にはコーン由来の遺伝子断片もcry1Ab遺伝子断片も検出出来なかった。ELISA法と免疫クロマトグラフィー、及びイムノブロット法で調べたところ、胃腸内容物のCry1Abタンパク質は陽性であった。しかし、これらの方法は血液では上手く反応しなかったので、これらのタンパク質が血中に吸収されたかどうかは結論できなかった。
 これらの結果は摂取されたコーンのDNAとCry1Abタンパク質が胃腸管内で完全には分解されず、PCRと免疫テストで検出される形で存在することを示した。

訳注:河田

 この論文は、Bt11遺伝子とそれが作るcry1Ab殺虫タンパク質が豚の胃腸管内で短時間に消化分解されず、DNA断片も殺虫タンパク質(一部分解されているが免疫反応はある)も検出可能だったことを示している。この事実は、昨年英国の食品基準庁の依頼でラウンドアップ除草剤耐性大豆を食べた人間の腸管内で未分解のCP4EPSPS遺伝子を検出した、ニューカッスル大学の研究結果と同様の結果である。この研究でもまた、現在政府の安全審査で行われている「人工腸液、人工胃液による試験管内分解試験」では実際の胃腸管内での消化を模擬できないことを明らかである。実験期間中、Btコーン・グループも非組み換えコーン・グループも健康状態には異常はなかった。筆者らは、未分解の組み換え遺伝子やタンパク質が、豚の糞を通じて環境中に放出される可能性についても言及しているが、Bt遺伝子をもつ細菌が広く土壌中に存在することから、実害はないと判断した。このBt11コーンは選択マーカー遺伝子として除草剤グルフォシネート耐性遺伝子(pat)を持っている。しかし、これが抗生物質耐性遺伝子だったらどうだろうか。

 

 

 

戻るTOP