医薬用GM作物が挫折
04年5月24日
有機消費者協会HP
http://www.ems.org/rls/2004/05/24/biotech_industry.html
訳 河田昌東
バイテク企業の「医薬農業:Biopharming」の目論見は失敗に終わった。最近起こったカリフォルニアのエピサイト・ファーマシューテイカル社とベントリア・バイオサイエンス社の挫折について述べる。
地球の友(FoE)と合衆国公益調査グループ(US.PIRG)によれば、バイオファーミングとも呼ばれる遺伝子操作による医薬品や工業製品を作る作物に対する反対は2002年以来次第に高まっていた。最近の失敗例では、医薬用トウモロコシ開発のリーダー的存在のサンジャゴに本拠があるエピサイト・ファーマシューテイカル社は5月6日、開発断念を発表した。もうひとつの例は4月始めにアメリカ農務省がサクラメントの本社があるベントリア・バイオサイエンス社が南カリフォルニアでの医薬用コメを120エーカー栽培するという認可申請を拒否したことで、地球の友と合衆国公益調査団体はこれを歓迎した。「誰もが薬用作物に反対している。投資家も農民も、食品企業も、消費者グループも、バイテク企業自身の一部だって反対だ。スーパーで未認可のスターリンクが見つかって以来4年たって、連邦政府もコーンフレークに医薬品が混ざってくるのにはノーと言わざるを得なくなったのだ」と合衆国公益調査団体の環境問題担当のリチャード・カプランは言った。同グループの分析によれば、個人企業のエピサイト・ファーマシューテイカル社は、2000年のスターリンク騒動と同じように、ヒトの食用に適しない薬用作物が食品流通を汚染するのを止められないのではないかと恐れる投資家が同社への投資を避けたため開発をやめざるを得なくなった。ベントリア社の薬用コメ栽培は同様の懸念をもつ農務省によって却下された。GMOに敏感な日本のロビー活動家らはベントリア社の試験栽培に強く反対したため、カリフォルニアの農家がコメの輸出を失うのではないかと恐れたためだ。コロラドの農家の反対は2003年にフランスの企業メリステム・セラピューテクス社が行うはずだった薬用トウモロコシの試験栽培をストップさせた。リスク・プロフィールに詳しく述べられているように、2002年秋にネブラスカの50万ブッシェルの大豆にアイオワの155エーカーの(薬用)トウモロコシが混入したテキサスのプロデイジーン社事件以来、5000億ドルの市場規模の食品産業界は薬用作物にたいして強く反対してきた。これらの事件はクラフト・フーズ社の前CEO、ベステイ・ホールデンが薬用作物による汚染が彼女の企業や食品産業全体にとって脅威である、と名指しで非難する原因となった。
薬用作物に対しては、科学的にも反対の声が高まっている。合衆国科学アカデミーの2つの委員会が薬用作物の食料供給への混入とヒトの健康への危険性を問題にしている。バイテク企業の指導的役割をしている雑誌、ネーチャー・バイオテクノロジーの編集者は最近、薬用作物を「薬の錠剤を飴玉の包み紙や小麦粉の袋に包んだり、製品を無造作に敷地外に積み上げたりしている薬局」に例えている。「もし政府が医薬用食品や作物を野外で野放しにし続けたら薬がある程度食料供給に入り込むのは疑いない。これは人間の健康にも影響のある生理活性物質だということを忘れてはいけない。一粒のコーンに含まれる血液凝固タンパク質アプロチニンは動物にすい臓病を起こし、ミツバチを殺すほどの毒性があることが分かっているのだから」と地球の友の研究者で薬用農業を広く研究しているビル・フリーズ氏は言った。
薬用作物の批判者らによれば薬用作物の試験栽培の数は、2000年の42件がピークで2003年には3件にまで減っていて、さらに減っているという証拠がある。2003年の10月には業界のリーダーであるモンサント社が薬用作物部門であるインテグレーテド・プロテイン・テクノロジーを廃止した。
FDAはこれまで植物で作られた医薬品を一件も認可していない。「安全で効果的なバイオ薬品はこれまで20年以上も製薬工場で作られ、人間と環境に対するリスクは最低限に押さえられてきた。作物で医薬品を作るのはリスクが大きいばかりでなく、うまく行かないし誰の助けにもならない」とビル・フリーズは付け加えた。
もっと詳しい情報は下記へ:
Bill
Freese, Friends of the Earth: 301-985-3011,
Richard
Caplan, U.S. PIRG: 202-546-9707,