医薬品を作るGMライスの栽培
インデペンデント(UK)ニュース
2004年2月1日
http://news.independent.co.uk/world/environment/story.jsp?story=486659
環境記者 ジョフェリー・リーン
訳 河田昌東
医薬品用GM作物が始めて商業栽培されようとしている、とインデペンデント紙は日曜日(2月1日)に明らかにした。アメリカのバイテク企業が今春下痢止め用医薬品を遺伝子組換えコメで作る計画をスタートする。この計画は先週カリフォルニアの規制当局によって審査されたが、当局はこの計画を止めることが出来なかった。このコメは第二世代の遺伝子組換えに扉を開くもので、これまで世界中に議論を巻き起こしてきた第一世代よりもさらに世論を分裂させるのは間違いない。現在のGM作物と違い、これらは数百万人の人々に実際の利益を提供することができるだろうが、健康へのリスクもまたさらに大きくなる。環境食品田園省(DEFRA)当局はこの新たな作物は大変危険なので英国では栽培すべきでないと考えている。しかし、首相は慎重にそれらを進めたい考えだ。
植物で医薬品を作る可能性は「pharming」というあだ名で呼ばれるが、この数年間研究されてきており、科学者らは実験室でいくつかの通常の食物の中でワクチンやその他幅広い医薬品を作るよう開発してきた。しかし、今サクラメントに本社のあるヴェントリア・バイオサイエンス社がラクトフェリンと重篤な下痢を治療する飲用水和剤として利用する感染症対策の医薬品リゾチームを作る新たなGMライス2種類を130エーカーに栽培する新たな突破口を開こうとしている。同社はこれで少なくとも65万人の病気の子どもを治療するに十分なラクトフェリンと650万人の患者に十分なリゾチームを作れる、と言っている。同社は数年以内には栽培面積を1000エーカーに広げたい意向である。同社はこの新たなGMライスの栽培場所を公開しない。理由は反対者らに破壊される恐れがあるからだ。しかし、この植物はすでにカリフォルニアのコメ生産地域で警告を発している。特に有機栽培農家はこのGMライスが彼らの作物を汚染するのを恐れている。同社は汚染のリスクはない、といっているが。
木曜日(1月29日)に開かれたカリフォルニア・ライス委員会の席で、このコメを栽培するに当っての条件を作成しようとした委員会は徹底的に批判された。しかし、委員長のチム・ジョンソンはインデペンデント紙に対し、同委員会も同委員会が報告書を提出する州農業局であろうとこのコメの栽培をストップする力は誰にもないだろう、と2月1日(日曜日)に語った。彼は同委員会が栽培をストップする代わりに、リスクを最小限にするために在来作物とGM作物の距離を置くといった条件つくりをするつもりだ、と言った。
コメの中の医薬品は比較的マイルドで、母乳の中にもあるものだが、これを許せば更に強力な医薬品製造に道を開くことにもなる。 例えば科学者らはハシカやB型肝炎を治療するワクチンや、抗がん剤や虫歯治療薬、避妊薬や陰部ヘルペスなど広範な治療用抗体を、ジャガイモやトウモロコシ、小麦、コメ、アルファルファ、人参、トマトなどで作る開発を行っている。同社はこのGMライスが「生命を脅かす病気と闘う治療用タンパク質を生産する“工場”になるだろう」と語っている。さらに「バイテクを利用して改善された植物はガンやHIV,心臓病、結核、アルツハイマー病、腎臓病、クローン病、筋萎縮症その他多くの病気を治療する画期的な医薬品を作り出すことができるだろう」と付け加えた。