イタリアで未認可遺伝子組み換え作物の作付け発覚、新たな混乱発生

 

インタープレス・サービス

(ミラノ・イタリア発)

2003年8月4日

エルネスト・フェリーニ

訳 河田昌東

 

イタリアのピードモント地域での定例調査で、作付けされた400ヘクタールの在来トウモロコシが実は 遺伝子組み換えであったことが先月明らかになった。遺伝子組み換え食品と動物飼料に関する表示とトレーサビリティーに関する新たなEUの規制が始まった直後だけに、ピードモントの事件では種子の汚染に対する責任者への厳しい規制と法的な処置を要求する声があがっている。ピードモントの事件に関わった100又はそれ以上の農家は、自分達が植えたのは在来種だと信じていた、と言っている。事件の真相は調査中である。

 

農家の懇願にも関わらず、これらのGMトウモロコシはエンゾ・ギーゴ、ピードモント州知事の命令で直ちに処分された。バイテク関連機関はこうした強硬な措置に批判的だが、消費者や環境関連の 団体はギーゴ知事の決断を支持している。環境保護団体レガンビエンテの代表フランシスコ・フェランテは、これに代わる処置はない、なぜならGMの栽培は隣接の在来種を汚染させるからだ、といった。グリーンピースはさらに彼らの記者会見で、「州の報告書とこれまでの経験からモンサントのGM品種が汚染の原因だ」と言った。同団体はモンサントが非GM種子と非GM農業の汚染をもたらす作戦を取っている事実を調査するよう要求した。モンサントはGM作物の開発におけるアメリカのパイオニアである。「もしモンサントとその販売エージェントのパイオニア・シーズが正常な非GM種子の汚染を今後も許されるようなら、新たなEUの規制は全くナンセンスになる。消費者にとっても生産者にとっても選択の自由が否定されてしまうのだから」とグリーンピースの広報担当フェデリカ・フェライオは言った。

 

EU議会は先月5年間のGM食品モラトリアムを終わらせる決議をしたが、同時に世界で最も厳しいGM食品の表示とトレーサビリティー規則を採択したばかりである。アメリカとバイテク多国籍企業は最近GM食品に関するEUの長い禁止に対してWTOに提訴した。新たな規制に従えばヨーロッパではGM食品は明確に表示されたものだけが販売可能である。0.9%以上GMが含まれている全ての食品は表示が必要である。この基準には、食品の原料、例えば以前は対照でなかったGMトウモロコシから高度に精製したオイルや動物飼料も含まれる。また、デイーラーには流通経路の全てにわたる厳密な記録の保存が要求される。しかし、この新たな規制にはGM栽培から隣接在来種を保護する規定が盛り込まれていない。EUの各加盟国はGM汚染に対する独自の規制をすることは許されているが、それは義務ではない。ヨーロッパの消費者問題コミッショナ―、デーヴィド・バイルンは新たな法律は消費者にGMか否かを選ばせるものだ、という。しかし、これにはアメリカもGM企業も満足していない。ブッシュ政権は表示義務化はバイテク輸入に対する不公正な貿易障壁だ、と言っている。彼らは大部分の消費者がGM製品と表示のあるものを買わなくなるのではないかと恐れている。その恐れには十分根拠がある。 いくつかの調査によれば、EUの大半の人々は遺伝子組み換え食品に反対しており、「これはGMOです」といった表示のある食品は買わないだろう、という結果が出ているからだ。この消費者トレンドは食品生産者や販売業者らの間ではこれまで気にされてこなかった。

イギリスの高級商品街の90%を占めるブリテイッシュ・リテール・コンソシアムは、「スーパーマーケットが売れない商品のための棚は作らないといっているのだから我々はGM食品を取り扱わない」と宣言した。

イタリア食品産業連盟総裁のルイジ・ロッシ・デ・モンテレラは、消費者がそうした商品を買いたくないなら、生産者と流通業者がGM食品を扱いたくない、という意見に同意した。

 

ドイツの食品会社をグリーンピースが調査したところによれば、216企業の内170企業がGM原料を使わない製品を求め、GM食品を排除したくないと答えたのはたった18社だった。しかし、消費者と企業の強い抵抗にも関わらず、環境保護団体はGM食品の取り扱い業者が新しい規制の抜け道をかいくぐるのではないかと心配している。最も大きな懸念は、ピードモント事件のような、GM作物による在来作物の汚染である。「我々はGM作物と多国籍企業がGM混入というトロイの木馬を使って偶然、又は意図的に汚染をもたらすのを黙ってみているわけにはいかない」とフェランテはいった。「伝子汚染を阻止することは今EUにおける最優先の課題だ。もし在来種や有機農作物を遺伝子汚染から保護するために何もなされないなら、次第にノンGM製品の供給が困難になり、数年後には新たな表示制度が何の役にも立たなくなる恐れがある」と言うのは遺伝子操作関係のグリーンピースのEUアドバイザー、エリック・ガルである。

 

 

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