イギリス政府がアーパッド・プシュタイ事件の処理の間違いを認める

英国政府はプシュタイ博士が犠牲者と認めた

 

02年6月22日

ザ・ガーデイアン(ロンドン発)

ロブ・エバンス記者

訳 河田昌東

 

遺伝子組換え食品の安全性について疑問を公表した「年寄りのボケた」科学者の名誉を傷つけるキャンペーンのせいで彼は犠牲者になった、と英国政府が発表した。公式のメモで、同政府当局者は政府がアーパド・プシュタイ氏の発見に関する論争で過ちを犯したことを認め、その大騒ぎのために一般の人々のGMテクノロジーに対する信頼が損なわれた、と認めた。

72歳のプシュタイ博士は、アバーデイーンのローウエット研究所で行った、遺伝子組換えポテトがラットに有害であるという実験結果を公表したあと、長い矛盾したごたごたの中に巻き込まれた。

政府のメモは、明日放送予定の「苦い収穫」という番組のために遺伝子組換え食品の開発過程を調査中に、ガーデイアン紙とBBC放送の手に渡った。1999年7月、ごたごたが起こってから数ヶ月たった頃に、当時の農林水産省の職員らが書いたもので、「プシュタイ問題の扱いに私は懸念する。この問題から教訓を得たと私は思わない」と書いている。

プシュタイ博士は遺伝子組換えポテトをラットに食べさせると、ラットが如何に発育阻害され、免疫系が抑制されたかをテレビ番組で述べたあと、辞職するように研究所から勧告された。 農水省は彼の研究結果を批判し,反対派の科学者らが同博士の仕事の妥当性を攻撃した。大英帝国の最も優れた科学者の団体である王立協会の科学者らは彼の実験を調査し、彼の試験は「実験計画や実施、分析など多くの点で欠陥がある」という声明を出した。

 農水省のメモは「この固く団結した科学者の団体の見解が、弱い老科学者に対するアカデミックな予断を押しつけ、同情と公正さに基づく多くの判断を失わせた」と記している。さらに同当局者は次のように付け加えた。「後知恵だが政府はもっと別のアプローチをすべきだった」 大臣達は、自分たちが彼の研究結果に関心はあるが、まだ十分な証拠が無い、というべきだった。大臣達はプシュタイ氏に「あなたの結果は食物の安全性に直接関係は無いが、懸念されるようなことが本当かどうか、あなたのやったことをもっと大規模に再現して欲しい」と言えば良かった。「そうすれば、プシュタイ博士を犠牲者にしないですんだし、反GMグループを喜ばせることも無かったはずだ」

また、別のメモで農水省当局者は「専門家の間の騒ぎが科学者の意見に対する一般の人々の信頼をさらに傷つけた」という。また、別の当局者はプシュタイ博士の発見は「GM食品反対のキャンペーンを長引かせた」という。 「このことがかえって、イギリスの消費者の間に警告と疑問の雰囲気を作りだし、大手のスーパーや生産者がGM原料を使うのを止める結果をもたらした。」

しかし、ある当局者はこの「ダメージは論争によって生じたのではなく、研究そのものによって生じたのだ」と反論している。「プシュタイ氏の仕事による研究と発表を傷つけた騒ぎは、GMテクノロジーに多大なダメージをもたらした。この研究がきちんと行われていれば、何がしかの懸念と恐らくGMテクノロジーの後退をもたらしただろう。しかし、ダメージは貧弱な実験と説明不可能な結果によって起こったのだ」

 

 

戻るTOPへ