遺伝子組換え作物の遺伝子封じ込めのための分子戦略
Science:June 2002 Volume 20
Number 6 pp 581 – 586
ヘンリー・ダニール
(中央フロリダ大学分子生物学・微生物学部)
要約の訳 河田昌東
遺伝子組換え作物が花粉を通じて外来遺伝子を関連する植物に伝達する潜在能力が環境問題になっている。新たな遺伝子が重要な作物や雑草などに与える環境影響に関して更に明らかになるまで、実質的な規制を考えるに当たって、遺伝子組換え作物の将来に渡る遺伝子に対して遺伝子封じ込めのアプローチを採用する必要がありそうである。
作物と雑草間の遺伝子流出をコントロールするための多くの分子的アプローチとしては、母性遺伝や雄性不稔、種子不稔などに焦点が当てられてきた。その他いくつかの封じ込め戦略も遺伝子流出を制限するのに有用かもしれない。例えば、アポミクシス(無配偶生殖:挿し木、接木等の無性生殖と未受精種子形成)、閉花受精(花が咲かない自家受精)、ゲノム不和合性、組換え遺伝子の化学的誘導/欠損、組換え遺伝子の子実特異的な除去、あるいは組換え遺伝子の沈静化(雑種でのみ機能する組換え遺伝子)などである。
これまでは、しかしながら、全ての作物種に広く適用できる戦略は無く、いくつかの方法の組み合わせが次世代組換え作物を作るに当たっては最も効果的だといえる。