ストップ組み換え栽培!NEWS 8
2003.08.06 茨城発
『遺伝子組み換え作物いらない!茨城ネットワーク』
■明日の「茨城ネットと農水省との質疑応答」を控え、今日8月6日、茨城ネットワークとして下記の『日本モンサント社、河内試験場にかかわる質問と要請』(下記参照)を農水省技術会議事務局に手渡してきました。
■8月3日の集会では、このモンサント試験場への質問要請をより多くの「連名」で行おうということが確認されていましたが、集会後の茨城ネットの幹事会では、経過の事実関係が少々不明瞭な点もあり、先行して「茨城ネット」単独でもまず出しておいて、どこが問題かを明らかにした上で、何をポイントに攻めてゆくかを絞り込んだ上で、その点での共同行動をすすめようということになりましたのでご報告しておきます。
■そんなこともあり、事務局から素案を提案ののち、「茨城ネット」構成員から意見を集めてそれをまとめるという作業をしていたものですから少々時間がかかってしまいました。
【内容的】には、事実経過をきちんと把握するための質問(1:圃場自体の承認、2:組み換えデントコーン試験の経緯と目的、3:組み換え大豆の管理状況】を質問した上で、4:それへの各省庁の指導措置について、以上を踏まえて、5:組み換え作物の国内栽培の問題に集約させるという構成になっています。
■同日行われていた種子ネット等の呼びかけで行われていた「行政交渉」でも、モンサント河内試験場にかかわる質問と応答があると聞いて、参加させて頂きました。全体のやりとりは主催者がまとめてくださると思いますので、私たちが明日農水省と追加でやりとりする予定のこのモンサント試験圃場にかかわる「新?事実」について事前に報告しておきます。
なお、ほとんどは齋藤京子技術会議事務局安全課長(この7月1日よりこの部署に異動)が説明していた。
●「隔離圃場」の設備の承認にあたっては、模擬的環境利用の「施設整備方針」なるものの基準に準拠し、モンサント河内圃場については平成11年に現地調査もして承認している。
●日本での「隔離圃場」は平成15年時点で全国で8ヶ所。(リストは提出される予定)
(ハイリシンデントコーンの隔離圃場試験について)
●モンサント河内圃場の利用計画は、平成11年以降、最初のイネからワタ、そして平成15年にハイリシンのデントコーンの隔離圃場試験の申請を受け、要件を確認して承認している。
●試験の目的は、花粉の稔性の調査、条件として「近縁の野生種との交雑を避ける措置をして試験を行う」ことをモンサントから申し出があって、その条件で承認している。
●「交雑を避ける措置」とは、@「雄しべの雄蕊(ゆうずい)が出穂したら直ちに抜き取る」ことを行うこと、A3mの緩衝帯を設けて非組み換え体のデントコーンを植えることになっている。
●「花粉の稔性の調査」は、採種する対象の花粉の雄しべだけに袋をかけて採種し、調査後に処分する。
以上の説明を受け、いくつか質問した。
Q.現在の管理状況を農水省は確認しているか?
A.現地に行っては確認していない。
Q.わたしはつくばに住んでいるので農業環境技術研究所の隔離圃場も見たことがあるが、岡さん(農環研)のところの隔離圃場は、周囲に防風林があり、内側にトラッピング植物も植えて防虫対策もし、排水施設もかなり厳重で外部へ持ち出さないようになっていたが、モンサント圃場はかなりずさんな環境下で実験しているが、本当にこんな施設でよいのか?
A.農環研は日本ではじめての隔離圃場であり、かなり厳密に設計している。
Q.土壌の処理、廃水の処理はいったいあのモンサント圃場ではどのようにしているのか?
A.そのまますきこんでいる。
ところが、何かの拍子で齋藤京子課長が隣の畑はスイートコーンで、デントコーンとは交配しないし、時期がずれていることを確認しているとか発言したので、
Q.あなたは現地に行っているのか?と問うたら、
A.実は7/25にこの施設を視察している。
Q.我々がモンサントの隔離圃場に行くことがわかっていて事前に打ち合わせに行っているのか?7/25というと、我々が農水省の事務局と谷和原の組み換え大豆にかかわるギリギリの要請をしていた時ではないか?モンサントの圃場に行って、その時一番焦眉の問題になっていた谷和原の一般圃場に何故視察に行かなかったのか?
A.そうではなく、7月1日に現職に赴任したばかりで、勉強のためにつくばの農業環境研究所の隔離圃場を視察し、その足でモンサントの隔離圃場を視察した。午前中はSTAFFでのバイオテクノロジー体験研修の最終日に出席し、参加者がどのような点で遺伝子組み換えに不安を持っているのかを聞きに行った。谷和原のことは、中村議員からの要請もあって、途中途中で連絡報告を受けていた。夜農水省に戻ってからこの件で会議もおこなった。
Q.デントコーンの花粉の寿命はどれだけか?
A.乾燥していると数時間、湿度が高いと1日〜1.5日の寿命。
Q.開花のタイムラグは?
A.上から開花しているが、上下一日の差で開花する。
Q.このデントコーンはいつ開花したか?
A.7月31日に雄蕊の出穂が認められたと報告を受けている。パートを雇ってこれを抜いている。
Q.7月31日というのは我々が視察に行った日ではないか。この時はもうすでに開花していたはずだが?
A.外側の3mの緩衝帯の非遺伝子組み換えのデントコーンではなかったか?
Q.まるでとってつけたように、我々が行ったから何か言われると思って、あとから交雑を防ぐために雄蕊を抜きとることになったのではないのか?本当に申請時点でこのことが条件になっていたのか?
A.本当です。この雄蕊を抜き取るという条件は、平成12年以降この条件で来ている。これはモンサント側からの提案だ。
Q.それなら、申請時のこの条件が記載された書類を証拠として提出して頂きたい。
A.わかりました。
Q.31日には午前も午後もパートさんなどいなかった。出穂が認められたら本当なら慌てて措置をするはずなのに、2人の職員だけしかいなかった。それにしても2m近くあるデントコーンの雄蕊を脚立に上がって抜き取る作業をあれだけの広さのものを開花期に一度にやるのは容易な作業ではないはず。パートさんを雇って雄蕊(ゆうずい)を抜き取っているのなら、いつ何人のパートさんを雇ってどのような作業をさせたのかの記録を提出してもらいたい。タイムカードもあるはずだ。給料も支払っているはずだ。その方達に会って本当にどのような作業をしたのかも我々が聞いて確認したい。
A.わかりました。
Q.本当にこの作業を行ったか農水省として確認してもらいたい。よければ私もいっしょに同席する。
A.農水省として責任持ってやるので任せてほしい。
(大豆の件)
Q.何のために横に在来種を植えているのか?(安田)
A.行って見たときには、以前イネの実験場だった田に大豆を植えて、ラウンドアップをかけたのとそうでないのと3つの対照区を設けてあり、さらにその横に田の黒豆、丹波黒豆、納豆小粒、盆踊りがデモ用として植えられていた。あくまで一般見学者向けのデモ用と聞いている。この組み換え大豆はすでに承認されているものなので、特に問題ない。
Q.周辺の大豆が汚染されてもよいということか?
A.「汚染」という言葉は馴染まないが、モンサントは近縁の大豆との開花期をずらしていると言っており、さらに、周辺で大豆を作っていて交雑する可能性が会った場合は、その大豆をすべてモンサントが買い取るとしている。
Q.この在来種への交雑についてDNA検査をするので提出してもらいたい(安田)
A.そのような要望があったことを伝えます。
(共同研究の件)
Q.隔離圃場の中で国の機関が企業と共同研究しているところはどこか?
A.旧農水省関係のところで、農環研、九州の・・・(聞き取れず)、北海道の農研センター、那須の草地研の4ヶ所。
Q.組み換え大豆系統40-3-2もモンサント・STAFF・農環研の三者の共同利用とされているが、先日農環研にその研究成果の資料を見せてくれといったら、自分たちには公開する権限がないのでSTAFFで見せてもらってくれと言われた。このように責任関係が不明確だ。
国が研究にかかわる場合は、国が責任をもつべきではないのか?
A.それぞれが研究目的を分担しているので、わからない部分もある。研究成果の公開はSTAFFに委託しているのでそうなっている。
Q.国が承認しているので包括的責任は国にあるということか。
A.包括的責任は承認している国にあります。
他に周辺農家への周知・合意について質疑応答もありましたが、それは主催者の記録に委ねます。
なお、茨城ネットで質問している「閉鎖系温室」(評価項目は導入遺伝子の発現形態・生育特性)、「非閉鎖系温室」(形態・生育特性・生殖特性・有害物質の産生性の評価)の安全性評価は文部科学省の科学技術学術審議会で組み換えDNA実験指針に基づいておこなわれ、「隔離ほ場」になって安全性評価は農水省の農林水産技術会議組み換え体利用専門委員会での評価となるので、温室試験の資料提出は文部科学省への要求になると思われます。
また隔離圃場での評価項目は、@国内栽培またはA加工利用を目的とした安全性評価として「周辺生物相への影響と雑草性」が評価される。
これも踏まえて、今日明らかになった点のいろいろな疑問に対してたたみかけたいと思います。
明日の「茨城ネットと農水省との協議」では、7月26日の事態にかかわる農水省の責任が中心的質問ではありますが、モンサント隔離圃場も同様の問題であるので追加質問し、以上の点も踏まえて質問してゆきたいと思います。明日農水相技術会議事務局安全課(6F)にて午後2時〜5時を予定しています。
「いらないキャンペーン」からも応援が来てくれる予定です。また埼玉大学の本庄昇先生(元公正取引委員、JAS法も専門)、国学院大学の久保田裕子先生も同席してくれて法的な点から応援してくれます。さらに、資料請求権を持つ議員(秘書)として中村議員の秘書さんや、北村れん子さんの秘書さんも同席してくれる予定で、必要な書類があれば提出させることをその場でお願いすることとします。
茨城ネットとしての対モンサント圃場対策として、明日の質疑ののち、現地周辺の農家への教宣の準備として、事前調査(戸数や農家数)、周辺のトウモロコシ栽培地、大豆栽培地の調査、役場や農業委員会へ行っての地主やモンサントからの事前の説明会の有無等の調査を数日のうちでおこなうこととします。また、周辺近隣での意識ある農業者やグループに協力依頼してゆく予定です。
また、国産のナタネも町などの「菜の花ロード」のような景観作物として植えているところはどうもアメリカの組み換え種子を使っている可能性があり、そうなるとシュマイザーさんの講演にあった近縁の野菜(キャベツやブロッコリー)に遺伝子汚染がはじまっていることも考えられます。東北農試で改良したキザキのナタネも母系はどうも外来種らしく、かなり交雑しやすいようで、常総生協ですすめている菜の花プロジェクトでも危機感を強めています。
今日、来年4月に茨城で開催する予定の『菜の花サミットinいばらき』でのテーマについて、主管となる常総生協とアサザプロジェクトとの協議がおこなわれ、「生物多様性の保全と国産菜の花の遺伝子汚染」をテーマのひとつに入れることになった旨、ウチの理事長より連絡がありました。JAやさとさんをはじめ、県内の菜の花のグループを集めた「菜の花プロジェクト茨城ネットワーク」の結成作業に入りますので、秋の種まきの前に種の検査もおこないたいと思います。全国菜の花ネットワークへの茨城発の提案をしてゆきたいと思います。
(下記が今日提出したモンサント圃場に関する質問状です)
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文部科学大臣 遠山敦子 殿
農林水産大臣 亀井善之 殿
厚生労働大臣 坂口 力 殿
日本モンサント社、河内試験場にかかわる質問と要請
去る7月31日、遺伝子組み換え作物いらない!茨城ネットワーク」の構成団体呼びかけで、茨城県河内町にある日本モンサント株式会社河内試験場(隔離圃場)の視察をいたしました。そこでわたしたちはこの「隔離圃場」が極めて杜撰な管理状態であることを確認いたしました。つきましては、緊急にこの「隔離圃場」への実態把握と措置をしていただけるよう、いくつかの質問とあわせて要請する次第です。
この実態を見ると、事は緊急を要しますので、至急以下を明らかにしてください。
(質問)
1.この日本モンサント河内試験圃場(「隔離圃場」)についてお伺いします。
(1)文部科学省、農林水産省、厚生労働省は、このモンサントの隔離圃場の現地にいかれたことがあるか。行かれた場合、いつ、誰が、何の目的で行かれたかを教えてください。
(2)この「隔離圃場」は、いつ、誰が、どのような審査を経て、どのような要件で承認し たかを教えてください。
(3)「隔離圃場」という場合、この「隔離」の意味は、「組み換え遺伝子を隔離する」と いう意味でよろしいですか?
(4)「隔離圃場」の空気の移動による花粉流動性防止措置、ならびに排水が外に流れない ような施設構造になっていることを実地に確認されていますか?
(5)国の機関での試験の場合、多くは事前にその地域の自治会等に事前説明会がありますが、この圃場でおこなわれる試験ごとに周辺住民、農家、行政(県、町)、JA等に事前説明会を開催しているか教えてください?またそれを国各省庁は把握しているか教えて下さい?
(6)このような「隔離圃場」は、民間、独立行政法人、国のそれぞれに何カ所ありますか。
2.現在この隔離圃場で「高リシン・デントコーン」の実験が行われていると聞きましたが、以下、この組み換えコーンについてお聞きします。
(承認)
(1)この組み換えコーンの「隔離圃場」試験はモンサント社単独の試験か、国の関連法人との共同研究かを教えてください。
(2)文部科学省において「指針」にもとづき、この組み換えコーンの実験が承認されたのは、いつ、どこで行われたものかを明らかにしてください。
(事前データならびに評価)
(2)この組み換えコーンについて、「隔離圃場」試験前の段階で、「閉鎖系温室」、「非閉鎖系温室」の実験のデータの提出があるはずですが、それがどの場で誰がどのように検討されたのかを明らかにしてください。
(3)「閉鎖系」ならびに「非閉鎖系」の試験データをもとに「隔離圃場」での実験が承認されていると思われますが、以下の点のデータについて明 らかにし、それに対してどのような検討がおこなわれたのかを明らかにしてください。
また、以下のうちで現在おこなわれている「隔離圃場」での実験に関わる事項はまとめて列記し、その試験の目的と中間のデータ提出・公表をさせてください。
@ファミリアティーに関する事項のデータ提出をしてください。
宿主に関する情報:自然界分布、生殖繁殖様式、遺伝様式、花粉飛散性、雑草性、
有害物質(他感物質)産生性
導入遺伝子に関する情報:純化、もともとの機能、遺伝子の由来、置換したときのアミノ酸配
列、導入するときに使うベクターの性質
選択マーカー遺伝子に関する情報:
発現性:導入遺伝子の存在形態と発現性
A事前の試験データについて以下を明らかにしてください。
生殖特性、種子の稔性特性、花粉の形状と稔性、
花粉の飛散性(特にトラッピングデータ)、花粉の寿命データ
B下記の事項についての影響評価データを提出してください。
競合や交雑による在来種・野生種・亜種などの個体群への影響データ
産生物質(アレロパシー)による微生物相への影響データ
微生物の物質循環機能への影響データ
評価の結果、影響が生じないような管理が必要とされた事項
モニタリングの実施が必要と認められたか否か
環境への影響が発生すると予想された場合、その緊急対応措置の具体的想定
(試験方法とデータ処理の客観性の検証評価)
(4)上記について、その試験の「試験方法」に関する「客観性」検討と評価はどこでどのようにおこなわれ、何か問題となった点があったかどうかを教えてください。
またそのデータで、データ処理の改竄の疑いや、都合のいい解釈、まとめの点で何か問題となった点があったかどうかを教えてください。
(管理と周知)
(5)この「隔離圃場」での組み換えコーンの試験の目的の中には、他家受粉・風媒花としての組み換えトウモロコシの花粉の飛散性についての実験は含まれていますか、それともそれはすでに温室で確かめているので実験目的には入っていないのかを教えてください。
(6)現在この高リジン産性遺伝子組み換えコーンの施設は、周囲を1cmメッシュのネットで覆い、その周囲を5cmメッシュのフェンスで囲っているだけです。(上空はなにもありません。虫媒防止策もありません)周囲に防風林もなく、また周囲にトラッピング植物も植えられていません。そして、この組み換えコーンの圃場のすぐ横10mのところに民間のトウモロコシが植えられています。
メッシュのネットならびにフェンスでこのコーンの花粉が「隔離」できると、いつ誰が判断したか教えてください。
(7)周辺住民、農家、行政(県、町)、JA等のこの試験に関する意向・意見はどのようなものだったのかを教えてください。もし万が一国が周辺住民の意向を把握していないならば、あるいは把握する必要がないと思われているようでしたら、その理由を教えてください。
3.現在この施設では、同時に「デモンストレーション圃場」(試験栽培?)として、すでに承認済みの除草剤耐性大豆系統40-3-2が栽培されています。
そのすぐ横に一列に日本の在来種(納豆小粒、丹波黒豆、盆踊り、田の黒豆)が植えられています。もちろん施設の外周は5cmメッシュのフェンスのみで、空気の流動性・昆虫の出入りにおいても一般の圃場と同様です。
この組み換え大豆の栽培について以下質問いたします。
(1)昨年11月の組み換え大豆の栽培について農水省通知(お願い)は、当然のごとくこの施設にも適用されると思われますが、その栽培情報は事前に県および周辺住民、JA等に提供されて、農水相ならびにSTAFFはその情報を把握し、関係機関に事前に報告さているか
また大豆についても「花粉飛散措置」「交雑防止措置」がどのように行われているか把握していますか?「お願い」をしているにもかかわらず、その措置がとられていない場合はどのようにするつもりか明らかにしてください。
(2)組み換え大豆の横に日本の在来種4種を並べて栽培していることを農水省は報告を受けて知っていましたか?その目的は何かの説明を受けましたか?
(3)日本モンサント社の説明では「60cm離せば交雑しない」、バイオ作物懇話会の説明では「自家受粉だから交雑しないことは科学的に証明されている」と公言していますがこの「科学的証明」についての事前資料が、審査した各省庁に提出されているはずですので、その資料「データ」、「科学的証明」の提出をしてください。
(3)先般農水省より頂きました資料の通り、大豆は虫媒花であり、ミツバチでさえ行動半径2kmに交雑をさせることが知られています。外国では大豆のハチミツもあります。
養蜂業界によるとミツバチは蜜と同時に、女王蜂用のプロポリスの原料としての花粉を目的として花粉を集めることが知られています。この大豆における訪花昆虫の観察がおこなわれているか教えてください。行われている場合、観察ビデオの記録ならびにその昆虫の挙動と交雑の生データ(一般論文ではない)を公開してください。
(4)他家受粉から自家受粉への植物の受粉確率の向上に向けた進化過程は、周囲の環境ともかかわりながら共進しており、それは明確に区分されるものではなくグレーゾーンがあること、また花粉の自己・非自己を区別する機能は高等動物のような機能として定着していないと言われています。
その点で、農水省の資料でも0.06%の交雑の確率を認めています。依拠する交雑試験の複数の研究論文を公開してください。またその追試をしているかを教えてください。
(5)以上の点からこのことからかなり厳しい虫媒防止措置、交雑防止措置が必要と判断されますが、関係機関はその措置が必要と思われるか不要と思われるかを教えてください。
4.この隔離圃場における管理状況への各省庁の対応について以下質問と要請をいたします。
(1)国各省庁は上記の指摘を受けて、この施設で行われている組み換えコーンの「隔離試験」の管理実態、周知実態、ならびに組み換え大豆の「交雑防止措置」、および横に植えられている在来種の大豆の管理処分に関する調査を行う用意があります
か?
(2)この施設と試験における調査を関係機関がおこなう意志がない場合、わたしたちは数日中に周囲にシャーレを並べて実態調査を行う予定にしています。もし組み換えコーンならびに花粉飛散が確認された場合の、責任の所在はどこにあると判断されるか各省庁の考えを確認したくお聞かせください。
(3)わたしたちは、「交雑されない権利」と「予防原則に基づく措置」として、「疑わしきがある場合は行わない」ことを求め、現状のあの実態においてはただちに花粉飛散防止として不識布による全面包囲を行うよう国として指導されるよう申し入れます。
それができない場合は、試験栽培の中止措置の行政指導の判断を下されることを要請いたします。もしそれができない場合は根拠を明確にして回答してください。
(4)「汚染されては困る」「汚染が拡散するのは困る」と判断する人と、「試験をしたい」という当事者との間で、緊急にその対策につき協議をおこなう場を開催する用意があるかお答えください。
5.試験栽培を含む国内栽培の原則に関わる質問と要請を以下行います。
(1)組み換え食品・作物については人類が口にしたり、栽培されてわずか7年です。長期的な慢性毒性の臨床試験は行われていないこと、また環境への影響についても長期的な影響や複合的な影響はいまだ未知の世界です。各省庁は、この7年で世界でおきている組み換え遺伝子の挙動、人体への影響、農業現場の状況、当該開発企業が何をやっているか、各国の組み換え体への社会的対応と考え、生物多様性への影響等を早急に調査し、まとめておくべきことを要請いたします。
(2) 「わずかでも交雑する可能性がある場合」は、自己増殖する生物であるがゆえに、この「わずか」が拡大増幅してゆく可能性があります。複雑系の中にこうした未知のものを放つことは、狭い国土の中でとりかえしのつかない生物層の変化による循環の攪乱や多様性の減少をもたらし、もって我が国の貴重な財産を失う危険性を秘めています。 慎重の上に慎重を重ねる必要があると判断されますが、各省庁はこうした基本認識があるかをお尋ねしたい。
(3)複雑な自然にたいする人間の行為の予測不可能性がある以上、長期影響評価に必要な科学的検証と知見が得られていないもの、社会的合意が十分に得られていないものについて、国・関係省庁は、国内での試験栽培をする場合でも、慎重な事前のモニタリング試験を実施し、ならびに万全な必要措置・監視態勢を取ったうえでの部分的な試験利用に制限することが必要と思われますが、このような考えはお持ちか教えてください。
(4)組み換え作物を国が承認したもので、組み換え遺伝子の挙動によって他の栽培者が不必要とした作物までが汚染された場合の責任の所在、JAS法・食品衛生法にもとづく表示の方法、検査の方法と手順、損害賠償の仕方、原状復帰の方法と手順(土壌を含む)、「風評被害」などの社会的影響に対する補償の仕方について明確に明らかにしてください。
また、この国が承認したもので起きた権利をめぐる紛争(汚染させる権利があるか、汚染されない権利等々)について、国が国民の権利に対していかなる責任を負うか明確にしてください。
今回の7月26日の茨城県での事態は、「他との合意なしに他に影響を及ぼす作物を作る権利があるか」をめぐる社会的問題であり、さらに影響を受けた場合の表示とその経済的影響への責任を含む問題であり、承認した国は当然こうした社会経済的問題点も検討された上での承認であったはずですので、この点は明確に回答してください。
これは引き続き河内町、そして全国の試験圃場で同じことがおきることが予測されますので、至急明らかにしてください。
また、カナダで起きた「生物特許」権をめぐる、「特許権侵害」なることが惹起されていますが、生物に対する「特許」の是非について国としての主体的な考えを示してください。
(5)事故あるいは意図的な作為によってバイオハザードが発生したときの国としての緊急対応の用意について教えてください。
(6)国各省庁ならびに関係行政法人は、企業との「共同研究」を進められていますが、責任関係が非常に不明確です。少なくとも最後まで社会経済的責任を持つ主管を明確にしてください。また国が関わる場合、国は立場が違いますからその包括的責任を国民に対して負うことを明確にする用意があるかを表明してください。
以 上
2003年8月6日
「遺伝子組み換え作物いらない!茨城ネットワーク」
つくば環境と人権のための市民会議 代 表 中島 スミ子
八郷町農業協同組合(JAやさと) 組合長 萩原 久
日本有機農業研究会(八郷町在住) 理 事 魚住 道郎
北浦・微生物農法の会 代 表 長島 昌裕
砂長商店(米穀/水海道市) 代 表 砂長 弘一
常総生活協同組合 理事長 畠山 智子
(事務局/常総生活協同組合 0297-48-4911/大石)
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