日本有機農業研究会
久保田裕子
2003年8月17日
反GM藤島宣言
今年2月に、反GM藤島宣言を採択(第31回日本有機農業研究会大会)した山形県藤島町では、じつは2年前、バイオ作物懇話会系統の人が、町内で、大豆を作付けたということがあったそうです。
それで、町としても、困り、開花前に鋤込んでもらい、また、他で栽培していたその人の大豆も分別してもらうなど、大変だったそうです。その経験で、加藤鉱一氏(町議員、日本有機農業研究会幹事)が提案、宣言と、条例をつくったとのことです。
今度、加藤さんに、このあたりのことを、『土と健康』(日本有機農業研究会会誌)に書いていただくことにしています。とりあえず、条例のその部分を以下に掲載しておきます。
山形県藤島町のGM作物栽培に関する条例(第8条第1項(3)参照):
同町ホームページより
○人と環境にやさしいまちづくり条例
平成14年12月13日
条例第36号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 責務と役割(第4条―第7条)
第3章 基本的施策(第8条―第11条)
第4章 評価と調整(第12条・第13条)
第5章 推進体制(第14条―第17条)
附則
わたしたちは、人類も地球環境の一部であるという視点に立ち、自然との共生とはなにか、真の豊かさとはなにかを問い直し、その役割を果たす時と考える。
藤島町は、重要な食糧生産基地の一翼であることを自覚し、町民が楽しく誇りを持って生産活動に励み、安全で良質な農産物を生産し、消費者から信頼される農業の町で在り続けたいと願っている。
藤島に住むわたしたちは、都市を支えているのは農山村であるという認識のもとに永遠に青い空と緑の大地、澄んだ空気ときれいな水のある町として存在し続けていることを願い、「豊かな自然と恵みの大地」を、これからも豊かで誇れる郷土として子孫に引き継いでいくため、持続可能な「環境にやさしい暮らし方」、安全・安心な「循環型社会」のまちづくりを実現するため、この条例を定める。
第1章
総則
(目的)
第1条 この条例は、人と環境にやさしいまちづくりに関する基本的事項を定め、町、町民及び事業者が協働してまちづくりに取り組み、個性豊かで活力ある緑豊かな農村社会としての藤島町を形成することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 人と環境にやさしい 自然環境との共生を目指す暮らし方とともに、地域全体が心のふれあいに満ち、共に支えあうことをいう。
(2) 地球環境 通念的には、人類を取り巻く地球上の自然的要因を指すが、この条例では、人類を含む広義の環境をいう。
(3) 食農教育 食について学んだり、農業体験や農村の自然にふれあうことによって、食、農業及び環境の問題を身近に感じることを通して、食べ物の大切さや農業の重要性を認識し、生命の尊厳、健康及び環境を守ることの意義等を学ぶことをいう。
(4) 持続可能な 自然環境に配慮しながら、無理なく経済の営みが維持され、健康で文化的な生活を確保し、及び継続されることをいう。
(5) 循環型社会 農業を核とし、家庭と事業所、更には農業と商工業等の垣根を越えた町全体の資源循環システムを構築することによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会をいう。
(6) 人と環境にやさしい農業 自然の摂理を尊重し、化学合成農薬及び化学合成肥料の使用を極力避け、堆肥その他の有機質資材の適正な使用のもとに、自然生態系を有効に活用した農業をいう。
(7)
地産地消 地元で生産されたものを地元で消費することをいう。
(基本理念)
第3条 人と環境にやさしいまちづくりの基本理念(以下「基本理念」という。)は、次の各号に掲げるものとする。
(1) 町民が住んで楽しく、誇りの持てる持続可能な循環型のまちづくりを実現すること。
(2) 安心・安全な食料生産基地としての役割を果たすまちづくりを実現すること。
(3) 都市と共存できるまちづくりを実現すること。
第2章 責務と役割
(町の責務)
第4条
第1項 町は、前条に定める基本理念に基づき、人と環境にやさしいまちづくりに関する基本的かつ総合的な施策を実施するものとする。
第2項 町は、人と環境にやさしいまちづくりの理解を推進するため、普及啓発活動を行うものとする。
第3項 町は、町民及び事業者の人と環境にやさしいまちづくりへの参画を奨励するものとする。
第4項 町は、人と環境にやさしいまちづくりを推進するに当たっては、広く町民から意見を聴取し、施策に反映するものとする。
第5項 町は、人と環境にやさしいまちづくりの企画立案、実施及び評価に関する情報を町民に提供するものとする。
(町民の役割)
第5条
第1項 町民は、基本理念を理解し、自発的かつ自立的に人と環境にやさしいまちづくりに取り組むとともに、町が実施する人と環境にやさしいまちづくりに関する施策に協力するように努めるものとする。
第2項 町民は、町に対して人と環境にやさしいまちづくりに関する意見を述べるように努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条
第1項 事業者は、その事業活動が人と環境にやさしいまちづくりと密接な関係にあることを自覚し、基本理念を理解し、及び町民と協力して人と環境にやさしいまちづくりに取り組むとともに、町が実施する人と環境にやさしいまちづくりに関する施策に協力するように努めるものとする。
第2項 事業者は、町に対して人と環境にやさしいまちづくりに関する意見を述べるように努めるものとする。
(来訪者の役割)
第7条 来訪者は、町が推進する人と環境にやさしいまちづくりに関する施策を理解し、協力するように努めるものとする。
第3章 基本的施策
(産業の振興)
第8条
第1項 町は、人と環境にやさしいまちづくりの基盤となる農村社会を築くため、次の各号に掲げる施策を講じるものとする。
(1) 農業及び商工業等の広範な連携を図り、安全・安心な食料生産基地を目指す循環型社会の構築に努めること。
(2) 日本農林規格に沿った有機農産物の生産を奨励するとともに、人と環境にやさしい農業を推進し、消費者に信頼され愛される藤島町農業の確立に努めること。
(3) 食料生産基地としての信頼を確保するため、遺伝子組み換え農産物等の監視を強化し、町の許可なく栽培しないように規制を設けること。
(4) 産業界、研究機関及び公的機関等との連携を深め、循環型社会の確立に関する調査研究、資源の開発等に努めること。
第2項 町民は、産業振興のため、町で生産された農産物、加工された食品及びその他の製品の利用に努めるものとする。
第3項 事業者は、基本理念を理解し、誇りを持って自らの事業の推進及び発展に努めるものとする。
(環境の保全)
第9条
第1項 町は、循環型社会を構築するため、次の各号に掲げる施策を講じるものとする。
(1) 山林、河川等の自然環境、耕地及び街並み等を良好に保全すること。
(2) 資源循環型リサイクルシステムを構築すること。
(3) 産業界、研究機関及び公的機関等との連携を深め、エネルギー資源の調査研究に努めること。
第2項 町民は、基本理念を理解し、循環型社会の構築と環境保全のため、自ら行うことを見出し、その取組みに努めるものとする。
第3項 事業者は、基本理念を理解し、自ら環境を守る取組みに努めるものとする。
(福祉及び健康の増進)
第10条
第1項 町は、町民の福祉及び健康の増進を図るため、次の各号に掲げる施策を講じるものとする。
(1) 地域全体が、人と環境にやさしいまちづくりをとおして暖かい愛情と理解を持ち、共生型の農村社会を実現すること。
(2) 社会福祉の充実を基盤とし、保健、医療、教育及び労働等の関連分野を含めた総合的な施策を推進すること。
(3) 安全・安心な農産物の生産を推進し、地産地消を奨励すること。
(4) 食と健康に関する情報の収集及び提供を行うとともに、関連の事業を実行すること。
(5) 産業界、研究機関及び公的機関等との連携を深め、食と健康に関する調査研究及び取組みを進めること。
第2項 町民は、基本理念を理解し、共生型の農村社会を実現するため、ボランティア活動等に積極的に参加するように努めるとともに、地産地消を心がけ、自らの健康は自らが守るように努めるものとする。
第3項 事業者は、町民の福祉と健康に寄与するため、関連の情報を町に提供するように努めるとともに、積極的に企業ボランティア等の推進に努めるものとする。
(教育及び文化の振興)
第11条
第1項 町は、人と環境にやさしい暮らし方を実現するため、次の各号に掲げる施策を講じるものとする。
(1) 町民に対し、循環型社会に関する学習機会を提供すること。
(2) 次代を担う子供たちに対し、循環型社会の重要性を啓発するとともに、環境及び食農教育を推進すること。
(3) 伝統文化を調査研究するとともに、農村文化の振興を図ること。
第2項 町民は、基本理念を理解し、積極的に学習及び文化活動をすすめ、伝統文化の伝承に努めるものとする。
第3項 事業者は、基本理念を理解し、魅力ある農村社会を創造するため、それぞれの事業活動の特性を活かした取組みをするように努めるものとする。
第4章 評価と調整
(評価)
第12条 町は、時代の変遷や社会の変化等町の状況に照らし、人と環境にやさしいまちづくりが町民、ひいては地球環境にとって真に価値のあるものとして実行されているかどうかについて評価するものとする。
(調整)
第13条 町は、前条の評価の結果に基づき、人と環境にやさしいまちづくりの全体の調整を行うものとする。
第5章 推進体制
(意見の聴取及び審議会等)
第14条
第1項 町は、人と環境にやさしいまちづくりに関する基本的施策を推進するに当たり、町民に関わる重要な事項について計画し、及び実施しようとする場合においては、あらかじめその概要を公表し、町民に意見を求めるものとする。
第2項 町は、前項の基本的施策を推進するに当たり、必要な場合は審議会、委員会及びプロジェクトチーム等を設けることができる。
第3項 前2項に定めるもののほか、必要な事項は別に定めるものとする。
(町の体制整備)
第15条 町は、人と環境にやさしいまちづくりを推進するため、町の体制を整備するものとする。
(条例等の整備)
第16条 町は、この条例に基づいて、産業、環境、福祉及び教育等必要と認められる分野の条例、規則及びその他の規程の整備に努めるものとする。
(連携)
第17条 町は、人と環境にやさしいまちづくりの充実を図るため、他の自治体及び関連団体との連携並びに国際的な連携を図るものとする。
附 則
この条例は、平成15年4月1日から施行する。