ダウケミカル社の国内GMトウモロコシ圃場試験取り消しについて

 

遺伝子組換え情報室   河田昌東(040817)

 

 8月12日、農水省と環境省は、ダウケミカル日本社から申請されていた、害虫抵抗性・除草剤耐性トウモロコシTC6275株の日本国内での隔離圃場栽培試験を中止した、と発表した。

これはカルタヘナ法第4条第1項に基づく第一種使用等の承認が得られている遺伝子組換え体トウモロコシTC6275株の隔離圃場での栽培試験を目指したものであったが、同社が今年6月播種し、生えてきたところで除草剤(グルホシネート)を散布すると、対照区の非組換え体区画のトウモロコシに、除草剤耐性の株が生えていたことから、これを米国に送り検査したところ、日本国内での栽培認可が下りていないGMトウモロコシ1507株だったことから、これ刈り取り栽培試験の中止を両省に報告したものである。両省とも、同社が7月30日に花穂を切り取り、花粉飛散を抑止した上で8月6日全ての株を刈り取ったことから、国内への汚染はなく問題無かった、としてこの報告を了承した。

 農水省(http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20040812press_1.htm

環境省(http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=5174

 

 問題は、対照区に播種された非組換え体の種子が未認可の1507株で汚染していたことだが、ダウ社文書によれば未認可種子の汚染レベルが15.6%というとんでもない高レベルだったことである。海外での試験栽培を行うに当たって同社がいかなる手順で種子を選定したかは明らかでないが、この結果はいかにもずさん極まりないもので、輸送や保管上の不可避的な混入ではありえず、種子管理の基本的なミスであることを示唆している。同社は混入の原因が単なる「試験サンプルの間違い」だったとしているが、播種用の組換え体種子と非組換え体種子をわざわざ混ぜることはありえず、この説明は混入の原因を説明していない。あるいは、同社の米国内の採種圃場における遺伝子汚染がこれほど深刻である実態を示しているのかもしれない。同社には原因の徹底的な解明と、結果の公開を要求したい。同社は「再発防止策の強化と徹底」で今後汚染が起こらないようにするとしているが、いかなる防止策が取られるのか注目したい。

 

河田注:

 

TC6257トウモロコシの圃場試験申請書(ダウ日本社): http://www.env.go.jp/info/iken/h160512a/a-11.pdf

 

●栽培認可済みTC6275株:

害虫抵抗性遺伝子(Cry1F):アワノメイガECB、サウスウエストコーンボーラーSWCB、フォールアーミーワームFAW、ブラックカットワームBCW,ウエスタンビーンカットワームWBCW,コーンイヤーワームCYW等に抵抗性)と除草剤グルホシネート耐性(bar) 遺伝子を含む。

   Cry1Fのプロモーター:UB1ZM1(2)(トウモロコシのユビキチン遺伝子由来)

  Cry1Fのターミネーター:PINII(ジャガイモ由来のタンパク質分解酵素阻害物質II遺伝子由来)

  bar遺伝子のプロモーター:CaMV35S(カリフラワー・モザイクウイルス由来)

  bar遺伝子のターミネーター:PINII(ジャガイモ由来のタンパク質分解酵素阻害物質II遺伝子由来)

  その他bar遺伝子には発現強化のために次の配列を含む:

     CaMV35S-1841 (カリフラワー・モザイクウイルスのプロモーターの上流にあるエンハンサー)

     ADH1(トウモロコシ由来のアルコール脱水素酵素イントロン1)

   

●栽培未認可のTC1507株:

害虫抵抗性遺伝子(Cry1Fa2):アワノメイガECB、サウスウエストコーンボーラーSWCB、フォールアーミーワームFAW、ブラックカットワームBCW,コーンアースイヤーワームCEW等に抵抗性)と除草剤グルホシネート耐性(bar) 遺伝子を含む。

  Cry1Fa2のプロモーター:UB1ZM1(2)(トウモロコシのユビキチン遺伝子由来)

  Cry1Fa2のターミネーター:Agrobacterium tumefaciensのORF25遺伝子のポリAターミネーター

  bar遺伝子のプロモーター:CaMV35S(カリフラワー・モザイクウイルス由来)

  bar遺伝子のターミネーター:CaMV35SのポリAターミネーター配列

 

● TC1507を食用・飼料用に認可しているのは現在、アメリカ、カナダ、南アフリカ、フィリピン、日本。

● 除草剤グルフォシネートは次の商品名で売られている:バスタ、リリー、リバテイー、フィナーレ。

 

 

 

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