論文2 The New England Journal of Medicie

Volume 345:1155-1160 October 18, 2001, Number 16

Quinupristin-Dalfopristin–Resistant Enterococcus faecium on Chicken and in Human Stool Specimens

L. Clifford McDonald, M.D., Shannon Rossiter, M.P.H., Constance Mackinson, M.T., Yong Yu Wang, M.D., M.P.H., Susan Johnson, M.T., Maureen Sullivan, M.P.H., Robert Sokolow, M.B.A., Emilio DeBess, D.V.M., M.P.V.M., Laura Gilbert, M.P.H., James A. Benson, M.T., Bertha Hill, and Frederick J. Angulo, D.V.M., Ph.D.

 

抄訳 河田昌東

 

鶏肉と人間の便からキヌプリスチン―ダルフォプリスチン耐性の腸球菌を検出

 

要約 市販の鶏肉と人間の便から抗生物質耐性菌検出

この論文はアメリカ疾病予防センターとオレゴン、ジョージア、ミネソタ各州の保健局、メリーランド大学などの12名の研究者らによる。彼らは1999年に、最近アメリカで増加するバンコマイシン耐性のエンテロコッカス・フェシウム菌の感染病治療用に、キヌプリスチン(以下QP)とダルフォプリスチン(DP)と呼ばれる新たな抗生物質が認可されたのを受けて、このいわば最後の手段ともいえる新たな抗生物質に対する耐性菌の調査を行った。分析サンプルは、ジョージア州、メリーランド州、ミネソタ州、オレゴン州の26のスーパーマーケットで買い集めた407個のブロイラー(丸ごと)とこれらの州の外来病院の患者334名の便である。対象菌はエンテロコッカス、即ちMRSAなどになる腸内常在菌である。407検体のうち、QPDP、アンピシリンに耐性を持つエンテロコッカスは335検体、82%の高率で検出された。これらのうち、エンテロコッカス・フェシウムと同定された菌が58%であった。州別に見ると、ミネソタ州(58検体中10検体、17%)が最低で、最高はオレゴン州(1099587%)であった。26スーパーマーケット中2181%)から耐性菌が検出され、商品ブランド別にみると27ブランド中16ブランド(59%)が汚染していた。このように、アメリカの鶏肉の80%以上は最新の抗生物質にもすでに耐性を獲得していることになる。

さらに著者らは、外来病院患者の便334検体中76検体(保菌者割合23%)にこれらの抗生物質耐性菌を検出した。エンテロコッカス・フェシウム菌に限れば耐性菌保菌者は3名(1%)であった。チキンから検出された耐性菌の抗生物質耐性レベル(半数増殖阻止)は、1ミリリットルあたり4から32マイクログラムであったが、患者の便からのものは2マイクログラムと比較的低く、現在のところ治療は可能だが、治療用にQPDPが使われるようになれば、高濃度耐性菌の出現は時間の問題、と著者らは警告している。単離されたQPDP耐性菌の多くは、リファンピン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、ペニシリンなど他の抗生物質にも耐性を持っていた。

原因は家畜飼料に肥育効果があるとして混入されている、多種類の抗生物質にあると思われる。バンコマイシンと構造の似たバージニアマイシンが、アメリカでは飼料1トンあたり5から10グラム混入されている。2,001年には全米で87トンのバージニアマイシンが使われたと見られる。

 

 

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