人遺伝子を組み込んだ豚の登場
ポール・リーサー
AP通信科学部記者
2002年9月22日
訳 山田勝巳
ワシントン発-人の遺伝子を豚の精子に組み込み、人間の遺伝子が入った心臓、肝臓、腎臓を持つ豚の品種をイタリアの研究者が開発し、人に臓器移植できる豚の生産に道を開く一歩と見られている。
ナショナル科学アカデミー会報に火曜掲載された研究で、ミラノ大学の研究者は、崩壊促進因子(decay
accelerating factor, or DAF)と呼ばれる遺伝子を移入するために豚の精子を人のDNAと混ぜたと報告している。 この修飾された精子は、豚の卵子を受精させ人遺伝子を持つ子豚を産ませるために使われた。
「効率よく低コストで得られたものは、人のタンパク質を発現した遺伝子組み換え豚です。」と言うのは、ミラノ大学研究者で主筆者のマリアルイザ・ラビトラーノ博士。
ラビトラーノによると、20腹で205匹の子豚が、組み換え精子技術で生まれ、人の遺伝子は20-50%の子豚に出たという。 人の遺伝子は、豚の主要臓器にあり、この人の遺伝子は次世代の豚に継承されるだろうという。 現在、実験動物の臓器は、まだ豚の遺伝子により即座に拒否されるので移植には使えないとラビトラーノは言う。 この技術で豚の精子に人の遺伝子を追加すれば、人の免疫系に拒絶されない臓器を持つ豚を開発できるだろうと付け加えた。
「この子豚が新しい遺伝子移植実験の第一歩になるかもしれない。 動物から利用できる臓器を得る迄に5-7つの豚の遺伝子を抑制するか人の遺伝子と取り替えるかしなければならない。 現在の効率では、2年以内に他の遺伝子を追加し繁殖できるだろうと思う。」
医療研究者は、豚の遺伝子を変えて人体に受け入れられる特殊な品種を作る研究を続けてきた。 臓器移植を待つ間に約4,000人が死亡していると見られている。
別の研究者は、他の方法でアルファ・ガラクトースという糖を作る二つある遺伝子のひとつを除去した。 この遺伝子は、人の免疫系で急性拒否を起こす。 現在もう一つの糖遺伝子を除去すべく研究を続けている。
ミズーリ大学の豚生殖生理学者ランドール・S・プラサー博士と豚の一品種からアルファ-1-ガラクトース除去に協力した助手は、ラビトラーノの研究は、豚のDNAに遺伝子を追加する簡単な方法を示したという点で進歩ではあるが、異種移植用の豚の開発には限界があるという。 「この技術では、遺伝子を追加できるかもしれないが遺伝子を変えたり除去したりはできない。 異種移植用の臓器を動物に作らせるには、何か他の遺伝子が変わるか除去されなければならないのは分かっていることだ。」という。
イタリア式の組み換え豚は、簡単で効率的だが量的進歩であり「組み換え動物を得るには改善ですが、今までできなかったわけではない。」とマサチューセッツ総合病院およびハーバード医学校の研究者ディビッド・H・サックス博士。
豚の部分は、人の心臓弁交換に使われてきたが、臓器丸ごとというのは明かにより混み入った課題だ。専門家によると、異種移植には未確認の豚ウィルスが人の患者に移る可能性があるという。