論文1 The New England Journal of Medicie
Volume
345:1147-1154 October 18, 2001, Number 16
The Isolation of
Antibiotic-Resistant Salmonella from Retail Ground Meats
David G. White, Ph.D.,
Shaohua Zhao, D.V.M., Ph.D., Robert Sudler, M.S., Sherry Ayers, Sharon
Friedman, B.A., Sheng Chen, D.V.M., Patrick F. McDermott, Ph.D., Shawn
McDermott, B.S., David D. Wagner, Ph.D., and Jianghong Meng, D.V.M., Ph.D.
抄訳 河田昌東
市販のひき肉から抗生物質耐性サルモネラ菌を検出
要約 スーパーの食肉の約20%は抗生物質耐性菌で汚染
この論文を発表したのは、デビッド・ホワイトなどメリーランド大学とFDA(食品医薬品局)の研究者10名である。彼らはワシントン州の3つのスーパーマーケットで買ったひき肉(サンプル数はチキン51、牛肉50、七面鳥50、豚49)に付着している抗生物質耐性のサルモネラ菌を検索した。汚染程度は合計200サンプルのうち、ニワトリが35%と最も高く、七面鳥24%、豚16%、牛6%であった。合計では41サンプル(20%)にサルモネラ菌が検出され、その84%(全体の17%)は最低1種類以上の抗生物質に耐性を持っていた。菌の53%は3種類以上の抗生物質に耐性を示した。12種類の抗生物質に耐性をもつ菌も2株あった。抗生物質別に見ると、テトラサイクリン耐性(80%)ストレプトマイシン耐性(73%)、サルファメトキサゾール耐性(60%)、アンピシリン耐性(27%)、フロルフェニコール、クロランフェニコール、アモキシリン、セファロチン、セフトリアゾンなどにはいずれも16%が耐性を持っていた。異なる店舗や食肉加工工場由来のものも同じ耐性菌で汚染しており、汚染は特定店舗のものだけではなかった。アメリカでは最近、子どものサルモネラ感染症治療に使われるセフトリアゾンの効かない例が急増しており、原因は牛肉など食肉が感染源と考えられた。アメリカ疾病予防センター(CDC)の調査によれば、これらの抗生物質耐性菌による人間への感染は1979年から80年にかけては0.6%に過ぎなかったが、1996年には34%に増加した。
この論文では、サルモネラ菌だけに注目して調査が行われたが、これらの抗生物質耐性は細菌内のプラスミドと呼ばれる独立した遺伝子を通じて、他の細菌に移行することができ、広範な汚染が懸念される、と著者らは指摘している。