GMコーン批判の攻撃の陰に国際的PR会社が存在

 

批判の種:反GM科学者はその信頼性に対する広範な攻撃に直面している。この攻撃の陰に誰が居るのか、アンデイ・ローウェルの調査。

 

The Big Issue, No. 484, 4月 15-21日号 2002年

訳 河田昌東

 

GM科学者と活動家はバイテク企業による組織的キャンペーンによって信頼性を攻撃されつつある。キャンペーンはとうとう著名な科学雑誌(Nature)を傷つけるまでになった。

 

GMに批判的な科学論文を昨年掲載したのは間違いだった、というネーチャー誌編集者の告白で攻撃は頂点に達した。こうした告白は同誌の歴史上初めてのことである。これは巨大バイテク企業がGM技術を批判する科学的研究の名誉を傷つけるために前面にたつ組織とウェブ・サイトを使った最新の例である。

 

この武勇伝は昨年11月に、Nature誌がカリフォルニア大学バークレー校の科学者による、メキシコの野生種コーンがGMで汚染されている、という論文を公表してから始まった。

メキシコはGMの商業栽培にモラトリアムをかけているので、この論文は貴重なコーンの多様性の中心に遺伝子汚染を起こした、という問題提起をした。 この論文で研究者とNature誌に対するGM推進科学者とバイテク企業の攻撃が始まった。Natureはとうとう圧力に飛び上がり、この論文を掲載する充分な根拠が無かったと結論した、というコメントを発表した。

「これは明らかにホットな話題だ」とNature誌のジョー・ウエバー氏は言い、この件が単に「技術的な問題でなく政治的問題だ」と認めた。 政治的枠組みは、バイオ企業がヨーロッパ、ブラジル、メキシコの遺伝子組換え種子と食品に対するモラトリアムを廃止させようとしていることである。 これらバイオ企業はGMコーンの栽培禁止だけでもすでに二億ドル以上の損失を抱え、ヨーロッパの扉を開けさせようと自棄になっている。 Natureはこの論争についてそれ以上のコメントを拒否した。

 

今週、オランダのハーグでは生物多様性に関する国連の会議で重大な交渉が行われていた。

Nature誌のコメントは良いタイミングでなかったのでバイテク企業は上機嫌であった。「ハーグの交渉でバイテクのために前面で戦っている私のようなものだけでなく、多くの人々はあのNatureの編集後記を必要としている」と世界をリードするアグリビジネス企業シンジェンタ社のウイリー・デ・グリーフは言う。

 

Natureの妥協にも関わらず、論文の著者のデービッド・クイストとイグナチオ・チャペラは、最初の発見を確認する新たな証拠を出した。彼らはメキシコ政府による二つの研究が彼らの研究を確認したこと、Natureに信じがたい圧力がかかったと信じる、と付け加えた。

「これは、我々の非常に単純な見解の信頼を無くすために、極めてよく準備調整され、協調され、お金が払われたキャンペーンだ」とチャペラはいう。

 

攻撃のコーデイネーターの中心にいるのはいつもCS・プラカシュで、彼はアラバマ州のタスケギー大学の植物分子遺伝学の教授である。彼はAgBioWorld(Agバイオワールド)財団を主催している。AgBioWorldはワシントンに基盤を置く右翼シンクタンク、Competitive Enterprise Institute(競争事業研究所)と共同で設立された。プラカシュはクイストとチャペラの研究を「欠陥品で結果は結論を確認させるものではない。彼らは自分の結論に合う結果を早く発表したかっただけだ」と言う。

 

プラカシュのプロGMウェブサイトは、Natureの論文を議論する中心的なフォーラムである。「私はNatureに対する公の圧力でかなり重要な役割を果たしたと思う。何故なら我々のニュースレターであるAgBioWorldには約3700名の参加者がいて、この論文が公表されるとすぐに多くの科学者が予備的な分析をNatureに投書したからね」 とプラカシュは言っている。 「Agbioviewはこれらの科学者をまとめ、AgBioWorldが科学者のコミュニテイーに集約した声を届けた」。こうした議論の結果、80人以上の署名のある非常に批判的で影響力のある文書でNatureは攻撃されることになった。

 

Natureの原論文を批判したGM推進科学者の書いた2通の手紙が、同誌のチャペラの論文の掲載撤回声明と一緒に掲載された。この手紙を書いたマシュウ・メッツとニック・カプリンスキーはこのプラカシュのウェブサイト上のバイテク推進声明に署名している。

二人は、ノバルテイス社(現在シンジェンタ社)と2500万ドルの契約をしたバークレー校の植物・微生物学部関係者である。チャペラはこの契約に反対していた。「これは大変大きなスキャンダルになったが、彼らは決してあきらめない」とチャペラは言う。

 

しかし、最も大切なことは、プラカシュのウェブサイトで反Nature論争を開始し、火をつけたのはGM企業モンサントのために働いているPR会社であって科学者達ではない、ということだ。最初の攻撃に名前が出たのはマリー・マーフィーと名乗る誰かからの投書で、チャペラの論文が出て数時間後であった。彼女の文章には「Natureの論文の著者のイグナチオ・チャペラは北アメリカの反農薬ネットワークという活動家グループの指導者に名前を連ねている。」とある。 マーフィーはチャペラを「公正な執筆者と呼んではいけない人だ」と告発している。

 

同ウェブサイトの次号では、アンジュラ・スメタセクと名乗る誰かが、「チャペラは環境保護グループの仲間だ」と指摘し、更に悪意に満ちた調子で「彼の論文は独立した科学的分析をにかけられ専門家のチェックを受けた論文ではない」と付け加えた。スメタセクとマーフィーはそれぞれプラカシュのサイトに約60の文章を投稿しやり取りしている。 ではこの二人は一体誰なんだ?

 

マリー・マーフィーのEメールはmmrph@hotmail.comで彼女の所属は分らないようになっている(訳注:Hotmailのこと)。たまたま彼女はインターネット・メッセージ・ボードでこのアドレスを使ったが、彼女がビビングス(Bivings)グループのために働いていることを示す別の痕跡を残した。この会社はワシントンとブルッセル、シカゴ、東京に事務所を置くPR会社である。

 

ビビングス社の顧客の1ダース以上はモンサント系の企業であり、ビビングスはかつて貧弱だったモンサント社のPRイメージ改善に大きな役割を演じて以来、同社のインターネット利用を助けてきた会社である。ビビングスの言うには、「インターネットの強力なメッセージ発信機能を使いウイルス退治をしている。」

 

モンサントのために何をやっているか、という質問にビビングスのスポークスマンは「ヨーロッパ各国でモンサント及び同社と協力関係にあるウェブサイトを運用し、コンサルタントとして彼らを助けている。我々は我々の戦略と個人的意見について議論することは許されていない」と言った。 彼はモンサントのための仕事にかんする情報をそれ以上提供するのを拒否した。 しかし、ビビングスの最近の報告書からそれ以上のことを知ることが出来る。同社は言う「メッセージ・ボード、チャット・ルーム、メーリング・リストなどは、今議論されていることを匿名でモニターするのに最適の方法である。ひとたび貴方がこの世界に入りこんだら、当事者としてでなく第三者として貴方の意見を投稿できるようになるのだから。」

 

「第3者として」ビビングスはCFFARという偽のウエブ・サイト上や論文でバイテク企業批判の悪口をこっそりやり別名で攻撃してきた。 Natureへの攻撃はこの隠密のキャンペーンの続きである。

 

アンジェラ・スメタセクはこうした汚いトリックを何とも思わない人物である。 The Big Issue South Westはまた彼女がエヂンバラ大学のGM推進科学者トニー・トレバワスの名前でスコットランドのヘラルド新聞に掲載された手紙の発信元であったことを明らかに出来る。この手紙はグリーンピースの前代表だったピーター・メルチェットと新聞社との間の訴訟の原因になった。この訴訟は高等裁判所に持ち込まれ、メルチェットが未公開のダメージを受け、ヘラルド社の謝罪を受けて終わった。トレワバスはこの手紙を書いたことをずっと否定している。 今年はじめに書かれた手紙の中で、「スメタセク」は言った。「私はAgBioWorldに送ったメッセージの著者だ」「私はその手紙が起こした騒動に驚いた。何故ならこの手紙の内容に書かれたことは新聞やオンラインで容易に探し出せるものだからだ」。スメタセクはまた「email最前線」である。AgBioViewへの初期の投稿の中で、彼女の住所はロンドンになっていたが、最近の「ザ・エコロジスト誌」への投稿ではニューヨークの電話番号を残している。しかし、the BigIssue South Westがアメリカの公式の記録を慎重に調査した結果では、アメリカにはそのような名前の人物は見当たらなかった。

所属や居住地の住所を知らせて欲しいと言う、ザ・エコロジスト誌の再三にわたる要求にも彼女は回答を拒否している。

 

彼女が誰だかを知る手がかりは、スメタセクのAgBioViewへの最初の投稿がCFFARのウェブサイトを活性化させてきた事実にある。CFFARは食品・農業研究センターの中にあり、自らを「食品の健康と安全、食品生産に関わる持続性の問題を追求し、理解に向けて設立された民間の政策研究機関である。」と紹介している。 実際はこのウェブサイトは、有機農業やグリーンピースのような環境保護団体を「テロリスト」と呼んで攻撃している。

このウェブサイトはモンサントのウェブ職人の1つとして働いているビビングス社に所属している。AgBioWorld財団のウェブサイトは勿論ビビングスにリンクしている。

 

GM活動家のリーダーのジョナサン・マシウスがビビングスの活動を調査した。AgBioWorldのアーカイブスを調べていて、彼はビビングスのデータベースへのアクセスは失敗する、というメッセージを受け取った。インターネットのエキスパート達はこのメッセージはビビングスがAgBioWorldのデータベースを管理していることを示唆していると信じている。これらのエキスパート達はまた、CFFARとビビングス、AgBioWorldのウェブサイトが技術的にそっくりな点に注目している。

プラカシュは、AgBioWorld財団がビビングスから資金や援助を受けていることを否定するが、それは「靴ヒモの上を走るようなものだ(訳註:それほど可能性が薄い、の意)」という。彼はいかなるPR会社とも一緒に仕事をしていないと否定し、「自分はバイテクのプロであり、広告会社は必要ない」という。 しかし、マシウスは言っている「ビビングスを媒介にモンサントはGMの議論に影響を与える様々なショウウインドウを持っている。その1つがAgBioWorldだ。チーフ・マネキンはプラカシュのように見えるが、彼はNatureのGMコーン汚染の失敗問題に非常に大きな影響力を持っている。しかし、Natureは今回の攻撃の背後に誰がいるか知っているかどうか」

 

英国のGeneWatchのスー・メイヤー博士は「バイテク企業と科学界が批判的な科学論文のこき下ろしをこれほど長く続けているのは全く異常な事態だ」という。(終り)

 

 

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