Nature Biotechnology

May 2002, Volume 20 ,Number 5, pp 484 – 487

 

遺伝子組換えにより牛乳中に人間のラクトフェリンを大量生産

 

Patrick H.C. van Berkel1, Mick M. Welling2, Marlieke Geerts1, Harry A. van Veen1, Bep Ravensbergen3, Mourad Salaheddine1, Ernest K. J. Pauwels2, Frank Pieper1, Jan H. Nuijens1 & Peter H. Nibbering3
 

Summary 翻訳 河田昌東

 

現行のバイオリアクター(訳注:大腸菌などのタンク培養による生産)の能力に限界があるため、バイオ製薬企業は別の蛋白質生産システムの研究に力を入れてきた。牛の遺伝子組換えでミルクを作る事ができれば、バイオ医薬品の大量生産に魅力的な手段を提供するかもしれない。しかし、そのような組換え蛋白質の性質に関する報告はこれまでなかった。我々はこの論文で、生まれながらの生体防御反応に関わる鉄結合糖蛋白質であるヒト・ラクトフェリン(rhLF)の組換え遺伝子による牛乳中濃度一リットル当りグラム単位の生産について述べる。生産された組換えhLF(rhLF)はヒトの母乳中の天然hLFと鉄結合の性質及び細胞外分泌特性に関しては同じであった。天然hLFとrhLFはN−グリコシル結合が異なっていたが、免疫応答性欠損症と白血球減少症のマウスを使った3種類の感染モデル実験では同等の性質を示し、感染場所における局所濃度も同じであった。これらを考慮すれば、この実験結果は大規模バイオ製薬に遺伝子組換え乳牛を使える可能性があることを示すものである。

 

 

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