魚油を作る遺伝子組換えマウスが誕生

 

ニューサイエンテイスト

NewScientist.com

04年2月4日

訳 河田昌東

 

心臓病を防止することが知られている魚の油を今や動物体内で作ることができる。遺伝子工学者の仕事に感謝。この研究者らは線虫の遺伝子をマウスに導入し、哺乳動物がオメガ―3―脂肪酸を作れるようにした。もし同じことが家畜や肉、ミルク、卵などでできれば直接このオイルでこれらの栄養価を高めることができる。

これは人間にとって利益があるだけでなく、家畜の健康にも良いだろう。「これはダブル・ボーナスだ」というのはアメリカのカリフォルニア医科大学でこの組換えマウスを開発したチームのジン・カングである。現在、家畜がつくる肉や乳製品には、餌に値段が高く海産物資源を浪費する魚粉を与えても、オメガ―3−オイルしか含まれていない。

 

循環系の改善

 カングはマウスに線虫 Caenorhabditis elegansから取ったfat-1と呼ばれる遺伝子を導入した。この遺伝子はオメガ―3−脂肪酸サチュラーゼという酵素を作り、オメガ―6−脂肪酸をオメガ―3−脂肪酸に変える。 人間や動物はオメガ―6−脂肪酸を作る。オメガ―3−脂肪酸は心臓を守るだけでなく血液循環を良くし、炎症を緩和しガンの予防にも効くといわれる。サバやシャケ、ニシンはオメガ―3−脂肪酸を含むが、多くの人はこれらの魚を必要量だけは食べない。他の食品やサプリメントはこのオイルを含み利用可能だが高価である。「遺伝子工学で動物の油脂を変えればすばらしいアプローチになる」と英国ノルヴィッチの食糧研究所のリッツ・ルンドは言う。「しかし、動物の遺伝子組換えが受け入れられればの話だが。アメリカの市場は受け入れやすいだろうが特にヨーロッパではGM動物を人々に食べさせるのは極めて難しい。」とルンドは言う。彼はオメガ―3−脂肪酸がラットで大腸がんを予防するという研究をしている。

 しかし、カングはこのプロジェクトは進んでいる、言い「我々はまずそれをニワトリでやろうとしている」と言う。

 

 

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参考文献: Nature (vol 427, p 504) Andy Coghlan