GM雑草の悪夢
デーリー・メール
04年4月15日
チム・ウットン(サイエンス・レポーター)
訳 河田昌東
先進的にGM農業を始めた国で起こるべくして起こった惨禍が警告を発している、と科学者らが今日主張した。アルゼンチンの田舎では「超雑草」がはびこって農家が健康を害している、と専門家が警告している。アルゼンチンでは、1997年以来遺伝子組換え大豆が国中の畑のほとんど半分に植えられている。今、農民は耐性雑草をやっつけるためにますます多量の除草剤を使わざるを得なくなり、何世代にもわたって土壌をだめにしている。
権威のある科学雑誌「ニュー・サイエンテイスト誌」に詳しく載っている研究によれば、除草剤の使いすぎで土壌が「不活性」になり、加えて人の健康を直接害している。アルゼンチンのGM畑の近くに住む農民とその家族は、発疹や涙目その他の症状を訴えている。家畜が死んだり、奇形の子どもが生まれたという者もいる。
昨夜、イギリスの活動家らがアルゼンチンの危機は、もしイギリス政府がGM栽培にゴーサインを出せば、いずれイギリスでもおこることだと主張した。ニューサイエンテイスト誌はいわく「イギリスを含む他の国々が次第にGM作物の栽培を認可するような状況で、アルゼンチンを見れば将来どうなるか分かるはずだ」
こうした状況に逆行して、先月、環境大臣マーガレット・ベケットはイギリスでの動物飼料用のGMトウモロコシの栽培を認可した。政府が行った調査でも10人中9人までがヒトの健康と環境に与える影響についてもっと証拠が挙がるまでGM作物の商業栽培を行うべきで無いという結果が出ているのに彼女はこれを認可した。特に有機農家はGMの花粉が自分たちの作物を汚染するのではないかと恐れている。地球の友の活動家ピート・リリーは「アルゼンチンにとっては残念なことだが、彼らの大規模なGM実験は急速に失敗しつつある」と言った。「モンサントが約束した利益は同国の農民と土地、環境にとって災難に変わりつつある。イギリスはアルゼンチンの農家がGM作物への転換を急いだ良くない判断から学ばなければならない。」
7年前、モンサントがラウンドアップ大豆を導入して以来、アルゼンチンはGM作物を認可した最初の国のひとつとなった。膨大な数の農民が除草剤グリフォサート耐性のGM大豆を歓迎した。彼らは、GM推進派が主張する、収量が上がり除草剤の量も減らせるという2つのセールスポイントの約束に飛びついた。今、科学者らはこれらの農民たちが手に入れた「苦い収穫」に警鐘を鳴らしている、とニューサイエンテイスト誌は報告している。GM大豆生産者は、在来大豆の農家と比べて自分たちが2倍もの除草剤を使っていることを認めている。その原因がはびこり始めた除草剤耐性の「超雑草」である。超雑草はGM作物が雑草に耐性遺伝子を移しかえたために生ずる、と多くの研究が示している。また、除草剤をたくさん使うために健康な土壌には普通に見られるバクテリアが減少し、土壌自体が不活性になっている、と研究は示している。
アメリカのアイダホ州の科学環境政策センターの農業コンサルタント、チャールス・ベンブルックは「アルゼンチンは世界中のいかなる他の国よりも急速にGM技術を採用した。土壌の生産性を守り耐性雑草を管理する適切な安全策を持たなかった。こうした農業は今後数年以上持続できるとは思えない」と言う。同様の問題がアメリカでも起こっているとカナダの西オンタリオ大学のジョー・カミンズは言っている。アルゼンチンとアメリカはGMテクノロジーをリードし、世界のGM作物の84%を占めている。
グリーンピースのベン・アブリフは昨夜「モンサントの約束とは違い、農民はますます多くの化学薬品を使って除草している。その結果土壌や人間の健康をだめにしている。アルゼンチンはGM作物の受け入れを急ぎすぎ、今その逆風に見舞われているんだ」と言った。昨夜、モンサントのバイオテクノロジー・マネージャーでラウンドアップ耐性大豆の販売を行っているコリン・メリットは、南アメリカでは環境面でも生態学的にも立派に成功している、と言った。彼は「ニューサイエンテイスト誌がこんな偏った不正確な論文を掲載するなんてショックだ。この論文は良く知られた二人の反GM活動家しか引用していないし、これに反する独立した科学的証拠を無視している。もし、彼らが主張するような問題が世界中に実際にあるなら、なぜ数百万人の農家が過去30年間も安全で効果的だとして使ってきたラウンドアップがいまだに使われているんだ?」と言った。同社のGM大豆はラウンドアップに耐性を持つように作り変えられ、これまで使われている。