イギリスBBCニュース

2002年1013

アレックス・カービイ(BBCニュースオンライン環境通信員)

訳 森野 俊子

 

GM種子拡散」警告

 

ヨーロッパ委員会が行った種子に関する許容規制を変更するという提案は、野生生物に重大な害を及ぼす事になる、とイギリス政府顧問たち(アドバイザー)は発言している。委員会の提案は、在来の種子中の遺伝子組み換え(GM)物質の許容限度を決めるものである。顧問たちは提案された許容限度はあまりにも高すぎて農地の生物種に悪影響を及ぼすだろうと述べている。彼らは、通常の除草剤使用量に耐性のGM「スーパー雑草」の出現を懸念している。

 

「スーパー雑草」

顧問たちはイギリスの合法的自然保護団体―イングリッシュネイチャー、スコットランド自然遺産、ウエールズカントリーサイドカウンシルなどである。

「ヨーロッパ全土で、GM汚染された種子の販売を許可することは惨事のもとになる。」とフレンズオブアースのピート・リレイ氏は述べている。

 

フレンズオブアース(FoE)の運動家たちは、ブリュッセル発の当該提出草案に対して、政府顧問である各自然保護団体が意見を述べたもののコピーを入手した。それには、いわゆる「遺伝子多重組み換え(スタッキング)の影響への懸念が表明されている。 遺伝子スタッキングとは野外での他家受粉により、同じ植物にひとつ以上の組み換え特性が現れる現象をさす。保護団体の報告は次のように語っている。

「この草案では、組み換え遺伝子の多重組み換え作用によりもたらされる農学的生態学的影響がほとんど理解されていない。」

 

「懸念されること」

「われわれは除草剤耐性のスタッキングについて懸念している。というのはこれにより農民はさらに多量の除草剤を使うようになる恐れがあるからだ。ひいては生物多様性にますます多くの害を与える可能性がある。」場合によっては、これは「在来種のゆっくりとした雑草化」を引き起こすだろう、と報告されている。

 

このヨーロッパ委員会草案では、従来のナタネの種子中にGM種子は03%まで含まれても良いとしている。報告では、これは1ヘクタールあたり10000個のGM種子が意図せずして蒔かれることになると言っている。仮に隣接農家も知らぬままGM汚染種子を使うとしたら、これは遺伝子スタッキングが起こりうる恰好の例になる。

 

草案中で提議されたナタネ種子以外のGM許容率は、トマト、ビート、ワタ、チコリー、トウモロコシ、ジャガイモは05%、大豆は07%である。各許容量を超えるものについてはGM物質含有という表示をしなければならない。

 

「受諾不可能」

保護団体は言う。「提案された組み換え種子の許容混入率は決して認めることはできない。」「これらの比率は、現在GM含有1%のものが認められているのだから、食品表示規制上ではつじつまが合う。しかし環境保護の観点から考え出されたものではない。

 

「われわれは、イギリスが在来種の種子にほぼゼロの組み換え種子混入率をめざすことを勧告する。委員会の決めた許容率はあまりにも高すぎる。」

 

惨事への処方」

FoEのピート・リレイは述べた。「ヨーロッパ全土でGM汚染種子を販売許可することは、惨事への処方である。「それはわれわれの食物や国土を汚染し、消費者の選択権を奪う。仮にこの新技術に不具合があるとすれば、大惨事をはらんだ結果は取り返しがつかないことになろう。」

 

リレイ氏はBBCニュースオンラインに語った。「これはイギリス政府と委員会が真剣に取り組まなければならないきわめて重大な問題である。 「イギリス国土の広い範囲に汚染が広がることになるだろう。われわれは種子へのGM混入率をゼロにしなければならない。さもないと未来世代の選択の機会を閉ざしてしまうことになる。「適切な品質管理をし、作物と作物の間に現実的な隔離距離をとれば、ゼロに行き着くかもしれない。 しかしわれわれにとって実際問題として‘現実的な’というのがどんなものなのか不明である。「それで市民に選択権を与え、環境を保護しようとするなら、イギリスでGM作物を禁止することがただひとつの残された道である。」

FoEはEU(ヨーロッパ連合)の農業および環境各大臣に今回の種子基準に関する草案を廃案にするよう強く要求している。

 

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