GM食品の安全性チェックはもっと改善すべきである、と王立協会が発表

 

プレスリリース(全文)

英国王立協会

新聞・広報担当 ボブ・ワード

0224

訳 河田昌東

 

多種類の遺伝子組換え植物から作られる食品が人間の摂取に適している、と宣言する前に安全性評価を改善すべきだ、と王立協会の報告書が警告した(0244日)。

 

この報告書は現在利用できるGM原料から作られる食品の安全性に疑いを持つ理由は無いし、遺伝子組換えが本来的に在来種よりも安全性を損なうと信ずべき理由もない。しかしながら、この報告書は全ての新しい食品に関して、特にアレルギー・テストや新生児向けの食品の栄養素について規制の強化を促している。

 

この報告書はまた、GM食品とその在来原料の比較の手法は、安全性評価に当たって「実質的同等性原理」を適用し、更に明白かつ客観的に、またEUのメンバー国間で調和するように行われるべきである、と勧告している。

 

この報告書を作成したワーキング・グループの座長のジム・スミス教授は次のように語った。「我々は現在利用できる全ての研究を精査し、遺伝子組換えの過程が潜在的に食物の安全性を本来的に損なうことを示唆する証拠はない事を発見した。しかしながら、我々は一般の人々が、食品原料がGMであろうと無かろうと、全ての新しい食品に関して充分な安全性と栄養価のチェックが行われたかどうかを知る権利を全面的に支持する。」

さらに彼は続けた。「英国とEU各国におけるGM食品の規制のバラバラなアプローチは、相互に重要なギャップと不一致が存在することを意味する。消費者が安全性に対する充分かつ抜け道のないルールで食品の安全性を保証するよう求めるのは明らかである。しかし、法律が社会にとって潜在的に有益な新たな食品を導入するためのインセンテイブ(動機づけ)を除去するような制限的なものであってはならない。」 

報告書は、植物の遺伝子組換えの際のウイルスのDNAの利用は人間の健康にとって無視しうる程度のリスクしかない、と結論した(訳注)。同様に、消費者は遺伝子組換えされた植物のDNAを含む食品を食べた(消化した)としても、何ら新たな危険に直面することはないであろう。

 

しかしながら、この報告書は全ての新しい食品に関して、それがGM原料を使っているか否かに関わらず、アレルギーの検査を(口からの)吸入の危険性まで拡張すべきだ、と勧告している。現在、試験は食べるものについてだけ行われているが、特に生産者や加工業者が花粉を吸ったり、胞子やゴミを吸うことによるアレルギーの潜在的リスクは存在するからである。

 

遺伝子組換えは将来食物の品質改良に使われるだろうが、栄養に対する予期しない広範な影響もありうる。報告書は、食品成分の変化に赤ん坊が特に敏感なので、いつか遺伝子組換え食品原料が新生児仕様に考慮されるようなことがあれば、厳しい試験が行われるように、英国とEU各国の法律は再検討されるべきである、と指摘している。

 

ワーキング・グループは1998年以降の利用可能な研究結果ばかりでなく、食品規制当局やバイテク企業、NGOなどから出された証拠をも考慮した。口頭で発表された全ての証拠は王立協会のweb サイトに公開した。

 

 

河田訳注411日の当HPの読者の投稿についての私見。

この英国王立協会の遺伝子組換え食品に関する報告書は、同協会がこれまでGM食品に対して示してきた態度からすれば、1歩前進である。GMに限らず新たな食品原料について今より厳しい安全性チェックをし、吸入によるアレルギーまで検査の幅を広げるべきだという主張、及び赤ん坊の食品で成分変更がある場合は厳しいチェックをすべきだという主張は評価できる。

同協会は、かつてGMジャガイモをマウスに与える実験を行ったアーパド・プシュタイ博士に対して激しい攻撃を重ね、彼をローウエット研究所から追い出した実績を持つ、基本的にはGM推進の立場である。 文中、遺伝子組換えでウイルスDNAを使っても問題ない、という主張は、現在英国でカリフラワー・モザイク・ウイルスの35Sプロモーターが高等動植物の遺伝子の発現に影響を与えるのでこの使用を禁止すべきだと主張している、メイ・ワン・ホー博士を意識したものである。

グリーンピースの引用は、積極的に評価できる部分だけを取り出したもので、王立協会がGMに批判的な見解を持つようになったわけではない。こうした海外の報告や論評を、特に2次情報として見る場合には注意が必要である。互いに都合の良い部分だけを取り出して引用すれば、議論は平行線になるからである。

 

 

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