イギリス BBCニュース (科学/自然)
02年9月3日(火)グリニッジ標準時14:22 UK15:22放送
訳 森野 俊子
遺伝子組み換え飼育動物に対する懸念
遺伝子組み換え(GM)およびクローン動物の開発には、‘過失’をふせぐために、今まで以上に厳しい規制が敷かれるべきだ、と専門家による諮問委員会は述べた。
農業環境バイオテクノロジー委員会(AEBC)は、飼育された遺伝子組み換え(GM)鮭が自然界に逃げ出すというような懸念があることを認めた。GM飼育動物をめぐる問題を特別に処理する戦略機関を設立すべきだ、と委員会は火曜日に発表された報告で述べた。
AEBCは、GMおよびクローン動物は慣行農法においては、ややなじみないものと認めた。しかしGM作物や食物が社会に受け入れられるときにおこる問題を避けるため、さまざまな決定権をもつ者は、事前に、いままでよりもっと広く社会の意見を求めるべきだと述べた。
遺伝子組換え鮭
イギリス(UK)政府のこの諮問委員会は、動物福利法の見直しを勧めた。 議長のマルコルム・グラント教授は言う。「遺伝子組み換え動物が飼育されたり、環境に放されたりしないうちに、公開討論を行ったり適切な規制機関をつくるべきだ。」 その報告では、GM動物の可能性として、乳の中に薬を産生する羊から、野生種より2〜3倍速く成長する鮭にいたるまで調査している。報告では、野生種に与える環境影響に関する疑問が残っている限り、GM鮭や他の魚の商業的開発を今までどおり禁止すべきだと述べた。
「国民は、開発のスピードと過失の可能性を懸念している」
AEBCレポート
グラント教授はロンドンでの記者会見で次のように語った。「いったん鮭が自然界に出てしまうと、もうもとには戻らない。私たちには、その影響が悪いものかよいものか正確に予測することはできない。」教授は、ペットをクローニングするという考えは「浅薄で不愉快な」ことだと述べた。
「不信」
報告によると、遺伝子工学の進歩はそのスピードと生み出す動物へ与える変化の性質上、非常に繊細なものである。 委員会は、その問題については戦略的見方をし、規制システムがGMおよびクローン動物の将来の進展に対処できるかどうかを調査した。
報告では次のことを強調した。「そうすることで、私たちの勧告が社会の見解を反映するものであることを確かにした。私たちの調査では、公の機関に対する不信は、この問題に対する態度に影響することを示している。GMやクローニングを動物に応用することに対して真っ向からの反対はほとんどないようにみえるが、一般国民は開発のスピードや過失の可能性について懸念している。とりわけ彼らは信頼できる透明な規制システムを求めている。」
国民の参加
動物およびバイオテクノロジーに関しての他の勧告
遺伝子工学についての決定に国民を参加させるための新しい方法や資金の運用
GMクローンも従来の動物も可能なかぎり同じ規制をかけること
1911年の動物保護法の見直し
商業化された後のGMおよびクローン飼育動物の追跡調査
AEBCは、農業と環境に影響するバイオテク問題に関して、諸大臣に助言する機関である。
設立は2000年7月で、昨年9月GM作物のイギリスでの圃場実験について報告を行った。
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