ニューズウィーク、GE作物が世界的に拒絶されていることを取り上げる
アメリカ有機消費者協会より引用
ニューズウィーク・インターナショナル
2003年1月27日号
フレッド・ギュター
訳 中田みち
食への恐怖、次から次へ、各国が遺伝子を組み換えられた作物への反対を表明、アメリカが孤立している
トニー・ホールの経歴は、常に彼がコーンに対して影響力をもっていることによって成り立っていた。例えば、あなたは昨年アメリカが900万ブッシェル以上、全世界の供給量の42%にあたるコーンを生産していたということを知っていただろうか? そしてアメリカの輸出量の1年分は貨物列車に積むと、パリから北京までカルカッタ経由でつながってしまうほどの量だということを知っていただろうか?
1984年、ホールがオハイオ州のコーンベルト地帯選出の下院議員だった当時、彼は飢餓に苦しむエチオピアへの食糧援助の増加をワシントンで効果的に訴えることができるよう、現地で事実を確認するために視察に出かけた。ホールが現地で見たのは、事実以上のものだった。彼が側近とともにアラマタの街の北方にある高原に車で乗り入れると、「そこには50,000人の人々が、そこらじゅうに静かに横たわり、うめきながら亡くなっていっているところでした。」と彼は回想する。「帰国すると、私は決意しました。議会で私ができることは他にもいろいろあるかもしれないが、それらに本当に価値があるのだろうか。このことこそが、重要なことだと。」
世界の飢餓問題を自分の重要課題として取り上げることは、必ずしも選挙で選ばれた政治家がするようなことではないかもしれない。しかし、ホールはそれをした。彼は手始めに飢餓と闘う発議を下院議会に提案し、1993年には彼の主張を訴えるために、22日間のハンガーストライキまで行った。そしておそらく、アメリカの膨大な穀物生産を世界のために役立ててきた彼にとっての晴れ舞台が、昨年の秋、国連食糧会議のアメリカ大使としてローマに降り立った時であるはずだった。しかし、それは彼にとって最悪のタイミングだったのだ。現在、世界で最も飢えている地域ですら、オハイオのゴールデンコーンのような遺伝子組み換えされたアメリカの食糧を嫌がっているのだ。
ヨーロッパはここ数年、科学者が不自然な遺伝子を操作して組み込んだアメリカの作物、コーン、トマト、大豆などにそっぽを向いてきた。今では世界的な反アメリカ主義のすりかえか、他の国々も右へならえの状況だ。大農業生産国のひとつである中国は、これまで莫大な資金をGM作物に費やしてきたにも関わらず、昨年、遺伝子組み換え種子の輸入、新たな種子開発への海外投資受け入れから手を引いた。そして、世界の貧しい国々でさえ、ありがたいことにアメリカの穀物は必要ないと見える。11月、インドはアメリカからのコーンと大豆の食糧援助を凍結した。そして10月にはザンビアが、300万人の市民が飢餓の瀬戸際で苦しんでいるのにも関わらず、18,000トンのアメリカからのコーンを拒否した。レヴィ・ムワナワサ大統領はスカイ・ニュースに「有害なものを食べるくらいなら、死んだ方がましだ」と語った。そしてグリーンピースはこのザンビアの拒否を「国家主権の勝利だ」と勝ち誇った。しかしホールにとっては、これは侮辱されたようなものだった。「もしもすべてのことを見るつもりなら、飢えた人々が国の役人に石を投げつけ暴動を起こしている国から、食糧が運び出されていくところを目撃するだろう。」と彼は言う。「これは知的な話し合いではない、モラルの問題、生きるか死ぬかの問題なのです。」
何がこれほどまでに、いわゆる「フランケンフード」への反対を引き起こすのだろうか? 答えは、それらを作るために遺伝子を組み換えること同様、複雑になってきている。アメリカ政府は、孤立からもしかすると少し錯乱気味に、GM作物に対する全ての反対の裏にはヨーロッパの影響があると見ている。アメリカ通商代表部(USTR)のロバート・ゼーリックは、ヨーロッパが新たなGM食品に対して設けるモラトリアムを、「モラルに反した」「テクノロジー嫌い」の産物として、世界貿易機関(WTO)に提訴しようとしている。ヨーロッパは、他の地域に圧力をかけていることに関しては否定している。「EUがモラトリアム実施について加盟国政府に対して圧力をかけている事実はない。GM食品を拒否しているのは各国政府自身なのだ。」とEU議会、緑の党のメンバー、アレキサンダー・デルーは言う。「もちろん、欧州委員会の健康および消費者保護局(Health and Consumer Protection directorage
general)は、関心のある国には文書とリサーチを提供しています。けれども彼らの決定に影響を与えようとしているわけではありません。」とスポークス・ウーマン、ベアテ・グマインダーは語る。
アメリカ人たちは怪訝に思っている。なぜなら遺伝子組み換えコーンは全く安全そうに思われるからだ。結局それは暗闇で光を放つわけでもなければ、放射能を発するわけでもない。事実、見た目も味も昔ながらの普通のコーンと同じであり、遺伝子上も科学者達が実験室でバクテリアであるバチラス・チューリンゲンシスから移植したたったひとつの遺伝子を除いてはほとんど変わらないのである。その遺伝子によって、コーンは時にコーン畑を壊滅させることもある厄介なボールワーム等の害虫を撃退する能力を与えられている。もっとも幅広く使われているGM作物、ワタ、コーンにこのBT遺伝子が組み込まれている。アメリカの農業界が熱心に主張するように、この技術は大きな成功を収めている。農業生産者がコーン畑に投入すべき殺虫剤の量を減らし、環境と人々の健康に幸福な結果をもたらしている。アメリカの保健当局は、いまだBTコーンを食べたことによる、いかなる問題も発見していない。現在ではアメリカ全土の店頭にあるコーン製品のおおよそ3分の2が、BTコーンであると見られる。「GM食品はすでに市場に出回っていますが、人々の健康に問題がある兆候はありません。」と言うのはWHOの食品安全プログラムのディレクター、ヨルゲン・シュルントである。ヨーロッパの公的筋でさえ、健康へのリスクは小さいと認めている。だから、世界中の皆さんも気を楽にして、コーンマフィンでも焼いてみたらいかがだろうか?
「疑い、無知、そして悪意だ。」とホールは言う。そうかもしれない。しかしGM作物への疑いにはそれ以上のこともあるようだ。インド政府は、遺伝子組み換え食品の安全性について常にヨーロッパ式の注意を払うことを続けてきた。昨年の3月に政府は4年間の激論を経てBtワタを承認したが、GMコーンやその他の食用作物については認可しなかった。ワタに関する議論がかえって抵抗を強固なものにしてしまったのだ。11月にはインド当局は、アメリカからの援助食糧にGM穀物が一切含まれていないことを文書で証明することを要求してきた。ケア・アンド・カトリック救援サービス(CARE and Catholic Relief Service)の労働者達はそれに応えることができず、6ヶ月の立ち往生ののち、その食糧はアフリカへ向けて送られた。そのうちに、インドはアメリカからのコーン、大豆の粉の新たな出荷を全て禁止した。その他の作物も同様に足止めを食っている。11月には、ニューデリーで何年にも渡り試験をしてきたGMカラシナを受け入れるかどうかの決定を延期してもいる。規制当局は作物そのものよりも、世論のほうを恐れることがある。「我々はGMワタで非難を受けました。私の役目は、GM作物に関して急ぎすぎでいると責められないようにすることなのです。」とGM認可委員会の前委員長、アシュット・ゴカールは言う。インドの市民、そしてフランスやジンバブエなどの国々においても人々は、GM食品をアメリカ農業そのものと同一視し、どちらも信頼していないようだ。 彼らが恐れるのは、外来遺伝子がなんらかの方法で彼ら自身の作物を汚染し、農民達がGM種子を求めてアメリカの企業に依存するようになるのではないかということだ。「遺伝子組み換えはインドの農業をアメリカ企業の支配下におくための、まさに武器なのだ。」とデリーに本拠を置くバイオテクノロジーと食品安全フォーラムの代表、デヴィンダー・シャルマは言う。インドの活動家は数年前のスターリンクをめぐる騒動を鮮明に記憶している。スターリンク騒動はアメリカで家畜飼料にのみ認可されたGMコーンが、アメリカ農業産業にとって全く恥さらしなことに、人間の消費用の食品であるタコベルのブリトーなどに混入していることが発見されたものだ。スターリンクは遺伝子組み換えによって人間にアレルギー反応を引き起こすおそれがあるタンパク質を含んでいたのである。その後の試験ではそのような反応は起きなかったが、ダメージは取り返しがつかなかった。突如として全てのアメリカ産の穀物が、GMかGMでないかに関わらず混入が疑われ、声高に反対されることとなった。
中国が最近になってGM食品に対する態度を180度転換させたのには、科学的な要因と同様、政治的な原因も影響している。中国はもともと早くから遺伝子組み換えを使った農業に関しては熱心だった。北京の東南30マイルのところにあるランファンと言う土地でワタを栽培しているチャイ・ホンリャンとその兄弟ゼンボはかつて、害虫が畑を壊滅させるのを防ぐために何トンもの殺虫剤を畑に投入していた。5年前に彼らは政府が許可したアメリカのバイテク企業、モンサント社のBtワタを栽培し始めた。それによって兄弟は殺虫剤の散布量を大幅に減らすことができ、それによって収入が倍増した。彼らはBtワタのタネを売る小さな店まで出店することができた。ある統計によると、中国のワタ生産農家は昨年生産性を10%伸ばしたという。
しかしそれでも、中国の農家は同国がWTO加盟後輸入されるようになったアメリカの安価な穀物とは競争することができない。 春には中国当局は輸入されたGM作物には表示をするよう要求し始めた。100万トンの大豆を積んで中国への輸出を待っていた船は、アメリカの港に何週間も足止めされた。結局北京は猶予期間としてこの輸出を認めたが、それでもその年のアメリカから中国への大豆の輸出は20%も減少した。北京政府はまた、外国の種子会社が遺伝子組み換え植物の新たな品種系統の開発のために行う投資にモラトリアムを設け、一時禁止することを宣言した。
興味深いのは北京の動きが単なる貿易保護主義的なものだというだけでなく、またしても戦略的な事実上の貿易障壁であることである。しかもそれはWTOで禁止されているものなのだ。GM食品に関しての中国の後退は、成長途上の中国のアグリ産業にも影響を及ぼす。1980年代後半から、中国政府は遺伝子農業の研究に大金をつぎ込んできた。現在では年に1億ドルに達しているとも言われる。ねらいは生産性の向上と、海外への輸出を現在の農業生産の5%レベルよりも、もっと押し上げようということだった。100以上の研究所が立ち上がり、研究者達は150以上の遺伝子組み換えをされたGM作物の系統を作り出した。「我々はみんなこの技術を、とても重要なものになるだろうと考えています。」北京大学でウイルス抵抗性のトマトとピーマンを開発した研究者、チェン・ザンリャンは言う。しかし昨年、研究室が彼らの新しい作物を商業化しようと申請したとき、中国政府はそれを認可しなかった。
政府はその理由を安全性への懸念や環境への配慮だとしているが、輸出市場から締め出されるのではないかということのほうが切実な脅威であるかもしれない。いったんGM作物が広範囲で作付けされると、農的システムからそれを排除することは不可能といわないまでも、難しいものになるのは確実だからだ。GM作物とNON-GM作物を分別するのが難しいことはスターリンク事件で証明されている。もし、その害虫抵抗性に魅力を感じる中国の農民が自分の畑にこっそり栽培したら、強力な遺伝子を組み込まれたGMコーンが、弱い自然のコーンの系統に取って代わるのをどうやって食い止めるというのだろう。中国は輸出に「GM」という汚名を着せられることをとても恐れている。それによってヨーロッパの市場はもちろん、より敏感な韓国などアジアの市場での評価にも影響を与えるとみられるからだ。これは理論上だけの脅威ではない。事実中国がタバコのGM系統を開発した後、ヨーロッパは1990年代に中国からの輸入に対し、門戸を閉ざしたのだ。「これは貿易に大きな影響を及ぼしました。」中国農業政策センターのディレクター、ホアン・ジクンは言う。「これによって中国政府は、バイオテクノロジーの安全性に関する懸念が及ぼしうる経済的なインパクトについて認識したのです。」
中国の方向転換は、現在いかにワシントンが孤立しているかを浮き彫りにすることとなった。「バイテクに関して、中国は我々の仲間だと思っていた。」とあるアメリカ政府関係者は言う。「以前は我々の資源は、ヨーロッパのような問題のある地域に向かっていた。」しかしそれは今では変わってきている。最近アメリカ政府は中国の遺伝子組み換え作物関係の規制当局への訓練を始めた。中国向けにその生産量の半分が輸出されているアメリカの大豆産業のロビイスト達は、会議などで出会う中国政府関係者をつかまえて、GM大豆に関する科学者の情報を送っている。
環境団体はワシントンの絶望感を感じ取っている。グリーンピースは昨年の夏、北京にショップを開き、現地のメディアや周辺の地方委員会を支配している共産党を通じて「遺伝子組み換え食品について市民の認識を高める」活動を行っていると、グリーンピースの広報官、ズー・ヤンは語る。今では、GM作物に関係するほとんど全ての役所や科学施設などで、グリーンピースのニュースレターを目にすることができる。2001年の終わりには、グリーンピースは中国南部の環境団体と共同で遺伝子組み換え植物の危険性について警告をするレポートを作成した。(もっとも、別の政府系機関が後ほどこのレポートを「信頼できない」として回収している。)
しかし中国の人々自身も疑いを持ち始めている兆候がある。ホアンの農業政策センターが1,000人以上の中国の消費者を調査したところ、3%がGM食品は食べないと答えた。これはまだ多数とはいえないが、前回の調査よりは増加している。「数年前、政策立案者と話をすると誰一人としてGM作物に反対の人はいなかった。」とホアンは語る。「しかしこの2〜3年、私が話をした中国の政府関係者は『私自身はバイテク食品は食べません。』と言うんだ。」と語るのはアメリカの政府関係者。「悪夢のようなシナリオとして、保護貿易主義者が環境NGOと結託して、ヒステリックな反GMO旋風をあおることが考えられる。そうなったら最悪の事態だ。」
ただ、リスクとその見返りの比率のバランスによっては、GM作物が巻き返すことも考えられる。今のところ遺伝子技術はその価格が極端に安くなっているわけではない。しかし供給が増えれば、30%くらいは価格が下がると予測する専門家もいる。フィリピンにある研究機関、農業バイテク応用推進国際サービス(International Service for the Acquisition
of Agri-biotech Applications) が行った最近の調査によると、2001年、GM作物は全世界の5300万ヘクタールで栽培され、前年よりも15%増加した。また大豆の生産量が世界第2位のブラジルは、今のところ遺伝子組み換え系統を避けている。しかしブラジルの科学者達はすでにいくつかのタイプのGM作物を開発している。もしも彼らが魅力的な種子を生み出したとしたら、ブラジルは遅かれ早かれ認可に踏み切るかもしれない。
しかし結局のところ、インド、中国、ブラジルでの最終的な状況は、ヨーロッパで起こることに大きく影響を受けるのだ。現時点では、GM食品はヨーロッパの人々には恐ろしく不人気だ。彼らの記憶には、まだあの狂牛病の大失敗が生々しく残っている。ただし、いったんきちんとした規制が整備されれば、彼らの態度も和らぐ可能性がある。今年、EUは表示法を制定する。それに伴って責任を明確化する法律が強化され、消費者が食品業界のごまかしを監視できると感じるようになれば、彼らは現在のようなGM作物への抵抗を変えるかもしれない。「私は、GM食品は今後5年から10年の間に、ヨーロッパの人々に受け入れられるようになるだろうと思っています。」と言うのはワシントンにあるウッドロー・ウィルソン・インターナショナルセンター(Woodrow Wilson International Center)のジュリア・ムーアである。「もしアメリカが賢明であるならば(これ以上、貿易戦争や大言壮語でヨーロッパの消費者をしらけさせるようなことをしなければ)、10年よりももっと早くそれが実現するでしょう。」 問題は、その時、EUのような規制の保護のない世界中の他の国々の消費者の心を変えるのに、手遅れではないのだろうかということである。
ニューズウィーク・インターナショナル
2003年1月27日
訳 中田みち
中国、インド、ザンビアが遺伝子組み換え食品に抵抗することを決めたとき、これらの国々はヨーロッパに追従したものと幅広く受け止められた。アメリカ通商代表部のロバート・ゼーリックはGM作物に対する政策について、ヨーロッパを世界貿易機関(WTO)に引きずり出すと脅している。これに対し欧州委員会の通商担当委員、パスカル・ラミーが事実関係を明確にする。
●なぜヨーロッパは、科学者が安全だと言うのにGM食品に抵抗するのでしょう?
「世界中の科学者達は、食品はGMであるないに関わらず、有害物質を含んでいる可能性、アレルギーを引き起こす可能性を持っていると認めている。人間の健康面に対するアメリカのアプローチは、GM食品をNON-GMの同じ食品と『実質的に同等』とみなし、事前のテスト無しに市場化を許してしまうというものだ。このことについては、法的な認可の基準として十分かどうか疑いを持つ科学者も多い。ヨーロッパでは、全てのGM品種に関して、より徹底的な試験を行っている。私達の目的は、近年の食品騒動で大きく揺さぶられてしまった消費者の信頼を再生することなのだ。」
●ヨーロッパの人々はなぜGM食品を嫌うのでしょうか?
「アメリカ人と同じように、ヨーロッパ人も食品に関して好みを持っている。それは栄養、味、その食品が作られる状況、生産国の政治体制、オーガニックであるかどうかなどだ。中にはGM食品を嫌うヨーロッパ人もいる。アメリカ人の中にもいるだろう。我々は市民が選ぶ権利を持つべきだと信じているのだ。」
●ヨーロッパのGM食品に対するスタンスは、他のアメリカの政策に対するお返しですか?
「これはアメリカに対してのことではない。ただ単純に、ヨーロッパがヨーロッパの利益のために望んでいることなのだ。もしもGM食品が人間の健康や環境に対して害がないと消費者が納得し、その製品にメリットがあると認めれば、消費者は喜んでGM食品を買うだろう。そのためには国の機関が十分な規制のシステムを整え、バイテク製品を売る企業は消費者に対し、品質や価格など内容を開示することが必要になるだろう。」
●GM食品の問題は、どの程度まで貿易問題といえるのでしょうか?
「これは全く貿易問題ではない。いったんGM食品が安全だと認められれば、自由に取引することができる。我々はすでにアメリカからはGM大豆、アルゼンチンからはGMコーンを多量に輸入している。GM食品に対するヨーロッパの政策は保護貿易主義と言われるものではないのだ。これは消費者の健康と環境に対する懸念に応え、また消費者に選択する権利をあたえるものなのだ。」
●アメリカはGM食品の問題をWTOに持ち込むと思いますか?
「この問題に関して、WTOはまったく関係がない。ヨーロッパは合理的で、徹底した許認可システムを持っている。アメリカはこのシステムにもっと迅速に動いて欲しいと思っているのだろう。WTOの紛争事項になれば、敵意が生まれ、消費者の信頼を得るには逆効果だろう。」
●ヨーロッパのGM表示制度によって、なにが達成されるのでしょうか?
「表示は、ヨーロッパの消費者が情報を知らされた上で選択ができるようにする手段なのだ。表示によって消費者は選択をすることに慣れることができ、品物の価格や価値を吟味することができるようになる。」
●アメリカの援助物資のコーンを拒否したザンビア政府は、まぬけかヒーロー、どちらでしょう?
「ザンビアは主権国家であり、自国で判断する。ザンビア人たちは主権を行使するのに、英雄的である必要はない。それに、ザンビアがしたようにバイオテクノロジーには好意的だが、あるGMコーンの品種系統については、輸入を許可する前に健康と環境への影響を詳しく調査したいということがまぬけだとも思わない。非遺伝子組み換え物資は南部アフリカで余剰がある。ヨーロッパの政策では、食糧援助は自国の余剰作物の処分先とするのではなく、現地で調達することとしている。」
●ヨーロッパはザンビアの決定に関与していましたか?
「なにひとつしていない。ヨーロッパはすでにいくつかのアメリカのコーン品種を承認して輸入していることを、ザンビアに対して明らかにしている。またヨーロッパはGM食品を人間にとって危険だとして拒絶したことなどないことも、彼らにはっきりと示している。それに科学的な調査結果も可能な範囲で彼らに提供している。私自身も最近の訪問で、ザンビア側にこのメッセージを伝えている。」
●ヨーロッパは中国に対して、GM食品を避けるよう圧力を掛けたことがありますか?
「われわれは誰に対してもGM食品を避けるように圧力をかけたことなどない。われわれは各国の主権を行使してGM食品に関する政策を決めることを尊重する。GMの使用に関して世界中に積極的に圧力を掛けるのは、アメリカの方がお得意なはずだが。」