EUでGM種子汚染が拡大
「調査の結果、イタリアでは市販の種子で非GMと言えるのはコーンで14%、大豆ではたった6%だけであることが分った。・・・その上、2,001年7月23日に、フランス食品安全庁による網羅的な調査によれば、2,001年の在来種のコーンの種子には7〜41%のGM種子の混入が認められている」
この記事はNature Biotechnology April 2002 Volume 20 Number 4 pp 324 – 325からの引用。
EUはGM種子で混乱
ローマ発アンナ・メルドレシ
有機消費者協会
訳 河田昌東
EUは在来作物の種子にGMの種子が入りこみ、出まわっている問題に関する論争で混沌の季節を迎えた。EU委員会は、メンバー国がこの問題で明確なルールを作るための種子規則の改定の合意を待っているが、各国はおのおのが輸入する種子にどのような規制をするかは自由であり、輸出会社、種子会社、農家に大混乱をもたらしている。
2000年度のEUの種子輸入量は、コーンが7万トン(必要量の21%)、大豆1.5万トン(68%)、ナタネ4000トン(20%)、綿7000トン(58%)である。種子の完全な分別は技術的に不可能であることを認めた上で、EU委員会はGM混入が取引き上の問題になる以前に作られた現行の種子販売規則を改定しようとしている。
同委員会は、多くのEU各国がアメリカとカナダから輸入された、非GMの綿やナタネ、大豆の種子に少量のGMが検出された2000年の春以来、在来種の種子へのGM種子の許容混入レベルを決めるよう試みてきた。 環境保護派の抗議、種子の廃棄、再輸入、食品用穀類からの種子の排除などが起こった結果、多くのEU各国に対して、EU科学委員会が提案した0.5%混入の許容基準の「暫定措置」受け入れに同意し、種子規則が改定されるまで種子の監視と試験に共同行動をとるよう促してきた。
EU委員会は最近、花粉による交配や雑草化、収穫、輸送、穀物毎に違う貯蔵方法などの混入原因を考慮し、この汚染レベルを改定した。例えば、トウモロコシの場合、雑草化はめったに大きな問題を起こさないが、花粉による汚染は最も重要である。また、ポテトのような野菜では食物連鎖に対する組換え遺伝子の主要な混入源になる。その結果、EU委員会は種子にかんしてスイード・ナタネと綿には0.3%、トマトとビート、チッコリー、トウモロコシ、ポテトには0.5%、大豆には0.7%の許容基準を設けた。これ以上のGM種子の混入がある場合は、基準超過の表示をしなければならない。(この数値は、最終食品がGM表示をしないですむように、食品と食品材料のために作られた規則49/2000の1%制限にマッチするよう厳密に 計算されたものである)
農業、園芸及び森林用種子、植物に関するEU常設委員会(EU参加国の農業代表で構成)は今年の2月28日にこの提案を議論した。最大の関心事はこの基準を超えた種子をどうするかであった。いくつかの国は単にGMを含んでいる、という表示だけでは不充分である、と主張した。彼らは商業的な販売を禁止出来る混入の上限を設けることを欲した。問題はコーンやビート、綿など品種について商業上必要な厳密な純度が決まっていないことであった。大豆の場合は、例えば、特定の品種だと確認するには99%以上の純度が無ければならないことになっている。従って、もしGM含量が0.7%を超えれば、(暫定規制によって)表示義務が生ずる。しかし、GM含量が1%を超えれば(品種規則によって)販売は出来ないことになる。10%のGM種子を含むコーンは、しかしながら、0.5%基準を超えている、と表示しなければならないが、販売は可能である。
EU各国が合意に達するまで、彼らは暫定措置を適用するかどうか自由である。例えばドイツは、それを排除したために、GM種子の許容混入レベルは州毎に異なっている。一方フランスでは生産・流通までのチェーンにおける混合を最小限にする合意をとり自己規制をスタートした。 オーストリアなどいくつかの国では、依然としてゼロ混入規制政策に固執し、2002年1月に0.1%混入基準の法律をパスさせ(現行の検査技術の限界で、結果的にゼロと同じ)、種子生産者と個別の確認をとることにしている。オーストリアのような小さな国では必要量の非GM種子を手に入れることは可能かもしれないが、大きな国ではこれは不可能である。
イタリアは問題のケースである。同国は農業と食品産業の実態にも関わらず、実現できないゼロ基準に固執している。2,001年にイタリアの農業大臣アルフォンゾ・スカニオはゼロ規制の旗を掲げ、輸入コーンや大豆に反対する環境キャンペーンを促進した (Nature. Biotechnology. 19, 603, 2001参照). 2,001年12月28日に、前の公式基準を作ったイタリアの新農業大臣ジャンニ・アレマノは同省に命じて特定の種子(農業省の認可を受けた)を非GMとして市場に出せるようにした。その調査の結果、イタリアの市場で売られているコーンの14%、大豆の6%しか非GMと言えないことが判明したが、これではとてもイタリアの農家のニーズを満たすことは出来ない。(この調査では、非GMの定義は明確にされなかったが) こうした発見にも関わらず、アルマノは口頭でゼロ許容基準を確認したが、事実上法令で定めることはしていない。その結果、種子の監視と検査は標準化されないままである。この状況は2000年8月の法令で更に複雑になっている。それは最も出まわっているGMコーン4品種由来の食品の販売禁止法案である。
(Nature. Biotechnology. 18, 1137,2000参照).
さらに2,001年7月23日には、フランス食品安全庁の網羅的調査で、2,001年の在来コーンの7〜41%がGMを含んでいたことが明らかになった。個々のサンプルの汚染レベルは自己規制の結果2000年度よりは低かったが。(フランスはEUにおける最大の種子生産国で主にドイツ、イタリア、ベルギー、オランダに輸出 している)「フランスのデータに基づけば、イタリアで出まわっている多くの種子にこうしたGMコーンが意図せずに混入していることは明らかだ。しかし、もし我々が文字通りゼロ基準と2000年8月の宣言を採用すれば、イタリアの食品産業による国産穀物の利用を止めざるをえないだろう」とローマの実験穀物研究所の遺伝学主任ノルベルト・ポーニャは言う。
EU常設委員会は規則の改訂版を作り投票にかけることが期待されている。しかし、その交渉には数ヶ月もかかり、年度内に新たな強化規制を作るというEU委員会の計画を駄目にするだろう。