GM作物の破綻
12月14日
リム・リ・チン、ジョナサン・マシュウズ
訳 山田勝巳
「GM作物は収量が高く、特性も改善されており、大幅に化学薬品の量を減らせる。農民は収入が増えるので気に入っている。」 リム・リ・チンとジョナサン・マシュウズが、この神話を世界中のGM作物が破綻している状況を示す文書で崩す。
低い収量
GM作物の収量が有意に低いことを何千もの対照試験が示している。アメリカの大学が1998年に行った8200の大豆試験に基づく調査では(1)、優秀RR品種と優秀在来品種の収量差は平均6.7%で、中には同じ種苗会社が売った在来品種の方がRR品種よりも平均10%収量が高かった地域もある。
ネブラスカ大学の農業天然資源研究所が行った2年間の調査結果が2000年5月に出され、それによると、RR大豆の収量は、最も近縁の非GM種より6%、非GMの高収量品種よりも11%低かった(2)。 この低い収量は、遺伝子挿入プロセスが原因だとされている。
同様の低収量は1977年以来報告が続いている。
a.. 1997年, パーデュ大学の調査では、同じ場所で組み換え種は12-20%非組み換え種よりも収量が少なかった[3].。
b.. 1998年に公表されたアーカンサス大学とシアナミドの研究では、GM大豆と綿で非組み換えのものよりも利益と収量が落ちている[3].。
c.. ウィスコンシン大学では1998年のGM大豆は、非組み換え品種よりも全米9州の実験の80%で収量が低かった [4]。
d.. アイオワ州では、1999年の調査で、365圃場でRR大豆収量が平均4%落ちていた[5]。
e.. アメリカ中北部の40の大豆試験栽培でRR大豆の収量が平均4%1999年までに落ちていた[6]。
f.. イギリスでは、国立農業植物研究所の作物試験で、GM冬菜種と砂糖大根の収量が5-8%在来高収量品種よりも低かった
[7]。
GM作物の収量は、在来手法による優秀な品種や雑種よりも少ないのが一般的だ[8]。
収量減は、根の生育、根粒形成、窒素固定に問題があることと関係があり、特に窒素固定菌がラウンドアップや乾燥に弱いため乾燥や地力の低い状況で下がっている[9]。 更に、除草剤耐性やBt内毒素を発現するために新陳代謝負荷が掛かっている。例えば、ラウンドアップを撒くと、植物の防御反応を司る蛋白質の生成レベルが抑制される。 このレベルは最終的には正常に戻るが、生育が最適状態にないときには病原菌は急速に植物を冒してゆく。 この修復のためにエネルギーを消耗し、取り戻せない収量減の結果をもたらす。
ミネソタ大学の経済学者バーノン・W・ラタンは「これまでの所、バイテクは植物の持つ収量能力を上げていない[10]。」と結論している。
にもかかわらず、800人の農民に対して行われた世論調査では間違った認識が示され、この中の殆ど(53%)は、RR品種の収量が非GM種より高いと考えて選んでいる。彼らの農場から実際のデータを取ってみると、全く逆の結果が出ている[5]。「半分以上の農民がGM大豆を使う理由として収量増を挙げているのに、収量は低かったというのは注目に値する。」
Bt抵抗性と農薬増加
もう一つのGM宣伝文句は、農薬を減らせることだ。 事実は、除草剤耐性とBt組み換え品種は、農民を農薬依存に陥れている。最近、南スラウェシのブルクンバでGM綿の農場数百ヘクタールが害虫のために全滅している[11]。 役人は「心配することはない」といっており、モンサント(GMボールガード種子供給者)の担当者は、「葉を食べる幼虫で、綿の生産に支障はない。」と断言した。 しかし、農民は、種子供給した会社は、この綿品種はどんな虫にも効くと言っていたと文句を言っていた。
GM作物が約束通りの害虫抵抗性がなかった場合どうなるのか。 オーストラリアの農民は、「INGARDの有効性が低い場合には」、モンサントもGM Bt綿には、更にINGARDを散布するよう指導を受けている[12]。 最新の公的指導では[13]、Bt綿は、標的昆虫であるヘイコヴェルパ・アーミゲラに効かない場合もあると明言している。
GM作物が害虫抵抗性を見せているときでさえ、農薬が減っている証拠は余りない
アメリカの綿の1/4がGMのBt品種であるにもかかわらず、殺虫剤の使用総量は有意に減っていないことがデータで証明されている[14]。 それどころか、Bt綿で置き換わるはずだったのに、その殺虫剤が使われた殺虫剤の少ない方を形成している。
同様にBtコーンでは、産業側の宣伝文句にも関わらず、農薬総量が減ったと証明できる証拠がない。 経済的利点も、病害虫が酷かった地域以外では出ていない。 Btコーンでの殺虫剤使用は、実のところ僅かに増えている。 西洋アワノメイガに対する殺虫剤の使用は1995年に4%だったのが、2000年には5%になっている[5]。
除草剤使用も傾向は同じだ。 過去数年間アメリカに於ける除草剤耐性綿の作付け面積は倍々で増えてきたが、除草剤の使用量は殆ど減っていない。 もっと意味深長なのは、GM綿と共に使える除草剤の売り上げが、除草剤耐性綿の導入以来急激に伸びていることだ[14]。
ラウンドアップ・レディ大豆方式で雑草管理が簡単になってはいるが、他の雑草管理方式よりも除草剤の使用が2−5倍増を伴っている[1]。 雑草品種にラウンドアップ耐性が出てきており、農薬の増加に繋がっている。 農務省データを使った、偏りのない現場の比較では、RR大豆は宣伝文句にも関わらず、従来の大豆よりも除草剤を多く必要としている[9,15]。 1998年にはアメリカ6州でのRR大豆で使った除草剤は、在来種よりも30%多い[9]。
分析では、RR大豆方式は、「……除草剤の使用も依存も減らすことは出来そうもない。 そうではないという主張は、情報が不完全か全部を示さない、間違った比較分析によるものだ[1]。」 それに、RRコーンでは、農務省の2000年のデータは、平均RRコーン面積では非GMコーン面積の平均よりも30%多く除草剤を使っている[15]。
懸念されたとおり、アルバータ大学の研究では、花粉の長距離飛散の結果、カナダのナタネで多種の除草剤に耐性を持つものが急速に増えたことを明らかにしている[16]。 グリフォサート抵抗性品種とグルフォシネート、又はイミダゾリノン抵抗性品種が交雑している。 この証拠は抵抗遺伝子が一つの圃場から別の圃場へ花粉を介して移っていることを示している。 異常に早く、何度も起こっており、ランダムに交雑して、3種の抵抗性を持つものもある[17]。 3種抵抗性のものが、花粉源から550m離れたところで見つかったものもあり、種子メーカーのいう100mの緩衝距離を大幅に超している。
利益減少
GM種子に余分に払うことと除草剤コストの増加は既に農民の財布を直撃している。そして、収量減分と技術料は、収益性に悪材料だ。 例えば、大豆生産者の余計に掛かるコストは、粗利で12%/エーカー以上にもなる[1]。
アイオワ州立大学の持続性農業レオポルドセンターが、1998年にアイオワの農民800人に対し、GM作物を作ることがこれまで以上に利益が上がるかを聞き取り調査した[5]。 連作の62コーン農場、輪作315コーン農場、大豆365農場の無作為な調査で、2つの作物で収益性は変わらなかった。 つまり、GM作物を作った農家は、競争力が増したわけではない。
初めての農家レベルのBtコーンの経済分析では、純益が少なく、コーン価格が下がり、コーン輸出市場を失って、GMコーンを作ることがコストに見合うのか疑問だ[18]。 1996−2001年、アメリカの農民はBtコーンを植えるために少なくとも65900万ドルのプレミアムを払っており、収穫はたったの27600万ブッシェル:56700万ドル値しか増えていない。 結果は、農家の9200万ドルの純損で約1.31ドル/エーカーとなる。 その上、アメリカはヨーロッパ向けコーン3500万ブッシェルの輸出を1996/97以来、EUがGMOを拒否したため失っている。 これは3重のマイナス、コーン輸出の喪失、コーン価格の低下、Btコーンからの純益の減少になる。
GM綿品種で害虫抑制が簡単になるかも知れないが、収量や繊維の質を考えると余分な費用が常に意味あるとは言えない。アーカンサス大学の調査では、在来種で最高収量を得ているものが多い[19]。 ボ−ルガード・ラウンドアップ品種と在来品種を経済的に較べてみると、「害虫被害が少ない年は、在来品種が高価な組み換え品種よりエーカー当たり10ドル費用が少ない。」
それに、環境費用を追加できるだろうか。 北米農民にGM作物の人気があるのは、便利さにあると調査は示している。ネブラスカ大学の報告では、農民は必要もないのに「雑草のない」農場にするためにこの技術を取り入れていることを示している「2」。 利益が減ったばかりでなく、生物多様性を破壊していることも調査は示している。
南の国からの教訓
南の農民の経験を見ることは教訓になる。非GMの代替品が存続していることは、52カ国208プロジェクト/自主取組でアジア、アフリカ、ラテンアメリカの2900万ヘクタールの土地で898万農民の調査で示されている[20]。 様々な持続可能な農業技術(GM技術はひとつも使われていない)による天水農業で50−100%、灌漑農業で5−10%の収量増を達成している。
南のローテク革新が生産を上げている[21]。 例えば、東アフリカでは、コーンには2つの大敵がある。 茎虫と寄生植物ストリガである。地元の茎虫が好む雑草を植えてそちらに引きつけ、この草は茎虫の幼虫を殺すネバネバした物質を出す、密の罠へ導く。 別の雑草デスモジウム、をコーンの畝間に植えるとストリガは、デスモジウムと共生できないため育たない。 殺虫剤は天敵に置き換えられ、肥料は天然の糞や作物残渣や窒素固定する植物である。
また、化学肥料や農薬の制限があり、GM技術は除外されている有機にする方が途上国経済により有益だ。 FAOは最近、貧しい国に対し、先進国の市場でブームになっている有機農産物輸出を増やすよう要請している[22]。
持続性農業と有機農業は万能薬ではない。 しかし、環境に優しくて収量が増え、収入も増えることが分かっていて、GM技術に変わる方法である。 これは、神話ではない。
1..
Benbrook, C.M. (1999) ‘Evidence of the
magnitude and consequences of the Roundup Ready soybean yield drag from
university-based varietal trials in 1998’, Ag BioTech InfoNet Technical Paper Number 1, www.biotech-info.net/RR_yield_drag_98.pdf
2.. University of
Nebraska (2000) ‘Research shows
Roundup Ready soybeans yield less’,
IANR News Service,www.biotech-info.net/Roundup_soybeans_yield_less.html
3.. See Griffiths, M. (1999)
‘The emperor’s transgenic clothes’, Are GMO lemmings in
the US leading all of us over the biotechnology
cliff?
www.btinternet.com/~nlpwessex/Documents/GMlemmings.htm
4.. See www.btinternet.com/~nlpwessex/Documents/wisconsinRRsoyatrials98.htm
5..
Duffy, M. (1999) ‘1998 crop survey
shows equal returns for GMO, non-GMO crops’, www.leopold.iastate.edu/news/9-22-99GMOrel.html
6.. Oplinger, E.S., M.J.
Martinka, and K.A. Schmitz (1999) ‘Performance of transgenetic
soybeans - Northern US’, presented to the ASTA Meetings, Chicago, cited in
[8].
7.. Reported in Farmers
Weekly (UK), 4th December 1998.
8..
Clark, E.A. (1999) ‘10 reasons why
farmers should think twice before growing GE crops’, www.plant.uoguelph.ca/faculty/eclark/10reasons.htm
9..
Benbrook, C.M. (2001) ‘Troubled times
amid commercial success for Roundup Ready soybeans: glyphosate efficacy is
slipping and unstable transgene expression erodes plant defenses and yields’, Ag BioTech InfoNet Technical Paper Number 4,
www.biotech-info.net/troubledtimes.html
10.. 'Economist: Biotech
has not made impact yet', Farm Progress, 21 November 2000.
11.. See the Jakarta
Post.com, ‘Pests attack
genetically modified cotton’, 29 June 2001,
www.thejakartapost.com/yesterdaydetail.asp?fileid=20010629.A06
12.. See
www.biotech-info.net/Aussie_bt_cotton_problems.html
13.. ‘Resistance management plan for INGARDR Cotton 2001-2002’, Transgenic and Insect
Management Strategy (TIMS) Committee of the
Australian Cotton Growers Research Association,
www.cotton.pi.csiro.au/Publicat/Pest/IRMS/irms0102.htm
14..
See Thalmann, P. & V. Kung (2000) ‘No reduction of pesticides use with genetically engineered cotton’, for WWF International,
www.biotech-info.net/WWF_inter_update.pdf; and
Thalmann, P. & V. Kung (2000)
‘Transgenic cotton: Are there benefits for
conservation? A case study of
GMOs in agriculture, with special emphasis on
freshwater’,
www.panda.org/resources/publications/water/cotton/transgenic.html
15.. Benbrook, C.M. (2001)
‘Do GM crops mean
less pesticide use?’Pesticide
Outlook, October 2001.
16..
Hall, L.M., J. Huffman, and K. Topinka (2000), ‘Pollen flow between herbicide tolerant canola (Brassica
napus), Weed Science Society of America Abstracts 40: 48,
http://www.mindfully.org/GE/Multiple-Resistant-Volunteers.htm
17..
Westwood, J. (2001) ‘Cross-pollination
leads to triple herbicide resistance’, ISB News Report [extract only] March 2001, covering Agricultural and
Environmental Biotechnology Developments, www.biotech-info.net/cross_pollination2.html
18..
See Benbrook, C.M. (2001) ‘When does it pay
to plant Bt corn: farm-level economic impacts of Bt corn, 1996-2001’
,www.gefoodalert.org/library/admin/uploadedfiles/When_Does_It_Pay_To_Plant_Bt_Corn.pdf
or
http://www.biotech-info.net/Bt_corn_FF_final.pdf; press release from the
Institute of Agriculture and Trade Policy (IATP),
http://www.gefoodalert.org/library/admin/uploadedfiles/Benbrook_Bt_Press_Rel ease.doc
19.. See ‘Conventional vs. transgenic cotton’, edited by AgWeb.com Editors, 12/3/2001,
www.agweb.com/news_show_news_article.asp?articleID=81926&newscat=GN
20..Pretty, J. and R. Hine (2001) ‘Reducing food poverty with sustainable agriculture:
a summary of new evidence’, Occasional
Paper 2001-2, Centre for Environment and Society, University of Essex,www2.essex.ac.uk/ces/ResearchProgrammes/CESOccasionalPapers/SAFErepSUBHEADS.htm
21.. Pearce, F. (2001) ‘An ordinary miracle’, New Scientist, Vol. 169,Issue 2276, p. 16,
3 February 2001.
22.. Brough, D. (2001) ‘FAO urges poor nations to boost organic foodsales’, Reuters,
4
December 2001, www.planetark.org/dailynewsstory.cfm/newsid/13562/story.htm