GM作物で農薬使用量増加
ジョン・バイダル
2004年1月8日
ザ・ガーディアン(http://www.guardian.co.uk/gmdebate/Story/0,2763,1118364,00.html)
訳 河田昌東
アメリカでの8年間にわたる遺伝子組換えトウモロコシ、ワタ、大豆の栽培で除草剤と殺虫剤の使用量が有意に増加した、とアメリカの報告書は述べており、GM作物栽培を認めるか否か検討中のイギリス政府に影響を与えるかもしれない。
遺伝子組換え作物の農薬使用量に関するこの最も包括的な研究は、同作物の商業栽培が始まって以来のアメリカ政府のデータを引用している。この報告書はGM作物のメリットの主なセールスポイントの一つである人工的な農薬が減らせる、という主張を覆すかもしれない。この報告書の著者、チャールス・ベンブルック氏はアイダホ州サンドポイントのノースウエスト・科学と環境政策センターのリーダーで、彼はGM作物の導入後3年間は農薬が25%減少したが、その後は顕著に増加したことを発見した。2001年にはこの報告書によれば非組換え作物に比べて組換え作物は除草剤と殺虫剤が5%多く散布され、2002年には7.9%、2003年には11.5%も多く使われた、という。その結果GM作物が原因で2001年から2003年の間に、アメリカでは合計で7300万ポンドの農薬が余分に散布された、とこの報告書は述べている。この報告書はアイオワ州立大学とアメリカ消費者協会その他の委託を受けて調査作成されたものである。
2002年と2003年の間に、GMトウモロコシの畑1エーカー当り平均29%多い除草剤が使われた。しかし、この傾向は過去8年間にはなかったものだ。全体としてトウモロコシとワタでは殺虫剤使用は緩やかに減少し、病害虫が耐性を獲得したという兆候は見られなかった。イギリスの試験栽培では3種類のGM作物のうち2種類(ナタネと砂糖大根)では在来種に比べて環境に有害な影響がみられたが、GMトウモロコシでは雑草や昆虫の生存に影響はなかったという結果が得られた。 昆虫と雑草の生存のポイントは在来作物であれGM作物であれ、使った農薬の量であった。
ベンブルック博士は「バイテクを推進する人はGM品種が農薬使用量を大幅に減らせる、と主張する。広範に栽培が始まって数年間はそうだったが、今は違う。除草剤耐性品種の畑に散布された平均1エーカー当たりの除草剤の量ははじめの数年間に比べて増加した」と述べた。
昨晩、イギリスのGM産業貿易グループの農業バイオテクノロジー委員会は、この報告書を批判し、農薬使用量とGM作物を直接関連付けるのは不可能だ、と述べた。「農薬使用量には気象条件が与える影響が大きい。我々は2001年に比べて2002年に農薬使用量が20%増えたことは否定しないが、2001年が使用量が数年間で最低だったからだ。」と述べた。
イギリス土壌協会の政策主任、ピーター・メルヒットは昨日「これはGMトウモロコシがもしわが国で栽培されれば農薬増加につながり、野生生物に重大なダメージを与える、という明確な証拠だ。バイテク企業はGM作物が農薬の量を大幅に減らすと主張し、GMトウモロコシはイギリスでの商業栽培に向けてその先頭を切ってきた。これまではアメリカでの8年間にわたる商業栽培で彼らの主張が嘘だという明確な証拠がなかったが、この報告書で我々はその証拠を手に入れた。こののっぴきならない証拠が出たからには、政府がGMトウモロコシ栽培にゴーサインを出すのはとんでもないことだ」と言った。
しかし、除草剤増加の最も重要な要因はGM企業モンサント社の除草剤グリフォサートの特許が最近切れたことにあると考えられる。これは除草剤耐性植物に使われてきた主な農薬だからだ。この報告書によると、新たな競合製品が出たため価格が半分にさがり、このことも散布量増加につながったという。
昨日、トニー・ブレア首相はイギリスのGM製品開発には世論が無視できない、といった。イギリスでのGM栽培に関する最終的な決定に際し、これが最近の政府の議論に如何なる影響を与えるか、という質問にたいして彼は言った。「専門家会議で進める我々の決定にとって重大だが、GMの科学的根拠にも影響はある」