国民の疑念で政府はGMを再検討

大臣達はGM採用による政治的リスクがGMの利益を上回ると判断

 

ポール・ブラウン(環境通信員)

ザ・ガーデイアン(UK)

2003年7月18日

訳 河田昌東

 

政府は今秋予定されていた遺伝子組換え作物の導入の解禁計画を再検討している。原因は、この技術そのものとGMを導入しようという大臣の動機に対する多数の国民の疑念が晴れていないことによる。閣僚達はGM導入の政治的リスクが次第に高まり、導入によるメリットを上回るようになっていると判断した、と関係者がガーデイアン記者に語った。先週、内閣府の戦略グループが、もし在来種と有機作物の汚染を防止する厳しい規制を敷かなければ世論の動揺が抑えられない、という予想を発表したことでGM導入計画の信頼性はさらに揺らいだ。

GMテクノロジーに執念を燃やしてきたブレア首相は、政府筋によれば、世論の抵抗を考え、GM作物の早期導入に対する気持ちを変えたようだ。彼はもし英国がGMに反対すれば国の科学研究と開発の基礎に対し将来的なロスになることを依然として懸念している。しかし、疑い深い世論によるGMの真のインパクトは、二年後にやってくる総選挙で彼が直面する恐怖である。大臣達の心配は今日付けで終わるGMに関する全国的議論「GMネーション」の結果でさらに増幅された。その結果によれば、科学ロビイストと産業界による膨大な努力にも関わらず、世論は政府がGMテクノロジーを推進することに対し、健康と環境に対するリスクが十分かっていないと未だに感じていることを示している。

450回以上の公聴会が開かれ、23000通に及ぶ文書による意見が寄せられた。この結果の全部の分析は秋までかかるだろうが、公聴会の大多数はこの技術を英国の国土に解き放つのはまだ時期尚早だ、と結論した。アメリカ政府がもしEUがGM食品の輸入を阻止すれば貿易戦争になる、と脅したことも世論の反対に油を注いだ。世論に逆らってGMロビーの側に立つ政治的リスクは大臣達に警告を鳴らした。

月曜日(21日)、GMの健康影響に関する科学的報告が出されるが、それもまた予想される以上に慎重な注意を促すだろう。この科学委員会のあるメンバーは、政府側の中心的科学者であるデービド・キング卿(教授)、食品基準庁長官ジョン・クレブス卿、環境・食糧省のチーフ科学アドバイザー、ハワード・ダルトン教授などがGMの熱狂的な支持者であることに異議を唱えていた。この報告書はGMに全面的な賛成を与えず、現在の知識と潜在的な厄介な問題との間にはまだギャップがある、との結論になるはずである。キング教授はGMテクノロジーを支持し、第三世界を養い英国の科学的基盤を維持するには、GMが欠かせない、と主張して首相に強い影響を与えてきた。しかし、選挙の側面からみればブレア氏は英国中産階級の強い反発に直面することになる。更なる情報公開を求めている団体の中で、女性研究所と消費者協会は何れもさらに広範な議論を要求している。アクション・エイド、クリスチャン・エイド、オクスファム・セーブ・チルドレンはGMが開発途上国を養うという主張は間違いであり、推進の根拠にすべきでない、と言っている。最近EUがGM食品に対する表示とGM作物の栽培に規制が必要だと決めたことはさらに問題を混乱させた。

政府は汚染を防止するために在来種とGM作物を分離する方法を決めなければならない。もし汚染が生じたら被害者が補償を求めることが出来るよう義務付ける法律も作らなければならない。しかしながら、この法律が農家に与える潜在的な財政的リスクを考えれば、GM作物の栽培は極端に魅力を失ってしまうだろう。

 GM推進の大臣達の熱意は、今週英国のスーパー・マーケットが環境大臣マーガレット・ベケットに対し、同社が遺伝子組み換え食品を売るつもりが無いと言明したことで、さらに挫けさせられた。そうなれば英国で栽培されたGM作物の国内市場はほとんどなくなるだろう。さらに、GM作物の試験栽培の結果が9月に出るが、それも推進の決定的根拠にはならず、政府は別の頭痛に悩まされるだろうという問題もある。さてどうするか?

 

マルコム・グラント教授が座長となって開かれた昨日のGM公聴会で、彼は450回の公聴会が開かれ、先週末までに23000通の意見が寄せられたことに勇気付けられた、と宣言した。

 

今後の予定:

月曜日(21日):

GMに関する科学的知識と社会的コンセンサス、不確定な分野などを取りまとめたGMのレビューを公表する。問題となるのは、食品と飼料の安全性、遺伝子流出、検出、環境影響である。

 

9月:

公聴会の結果をまとめ、GMを国内で栽培し食品とすべきかどうか、するとすれば何時かを決める。起こり得るセーフガードに関する議論も必要。 過去3年間のGM作物の環境影響に関する科学的試験栽培の結果が科学雑誌に発表される。内閣府戦略グループによるGM作物の経済性評価のコメントが出る。

 

12月:

政府はGM作物の輸入と国内栽培を認めるかどうか決定しなければならない。

 

 

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