GMO表示がEUの難問
ブルッセル発ロイター
2001年11月8日
訳 山田勝巳
ベルギーの厳しい表示に関する大西洋を越えた論争を解決しようとする欧州15カ国ブロックは、法的課題があるため結論はまだ先だという(2035参照)。
ヨーロッパ委員会の政策担当者は、遺伝子組み換え作物への消費者の懸念とその将来性のバランスを取ることは、厳しく認識していながら、その製品全てに表示の義務化を計画している。 狂牛病やダイオキシン スキャンダルでヨーロッパ市民の世論は、GMOに対し懐疑的で、時には報道で「フランケンシュタイン食品」とさえ呼ばれている。 アメリカの農民や輸出業者にとって、厳しい対応では機能しないとして問題となっている。 だが、ヨ−ロッパで3年間続いている新品種登録禁止が解除されれば、アメリカが対応する可能性も出てくる。
新しい追跡可能性案では、GM作物由来の製品は、植物オイルのように製造工程で遺伝物質が取り除かれた物もGM表示が必要になっている。 法律では、製造段階毎にGM成分の証明書を発行することが求められており、この義務はアメリカの農民にとっては余分なコストになり、管理側にとっては間違いやごまかしの元になる。 従って、市場に出される最終製品の検査結果をもってGM表示とするシステムが好ましいという。
モラトリアムを終わらせる試み
EU委員会は、法が制定されるまでは新たなGMは一切認めないというフランスがリードする強硬派6カ国を、譲歩に導く難しい役割を押しつけられている。
1998年以来13のGM品種が当局の保留箱に積まれており、モンサントやノバルティスなどの企業は、いつになったらEUで彼らの新しいトウモロコシ、大豆、綿の種子が売れるのか首を長くして待っている。
委員会の代表ロマノ・プロディは、ヨーロッパがバイテクレースに遅れて経済的損失を被るのではないか、消費者の意見形成に反GMロビー家に自由を与えすぎてきたのではないかと懸念している。
EU食品安全委員ディビッド・バーンは、この問題を消費者に説明する努力がもっと必要だという。「GMOの議論は白熱すれども光が見えてこない。 政治家として、生命工学の偏見のない事実を市民の前に出して理解してもらうようにしなければならない。」と最近講演した。委員会は、表示法が採択(するにはあと2年かかる)されなくても、企業が新しいルールを守るという条件で、禁止は解除すべきだと提案している。
加盟国は自国の立場を堅持
先月ルクセンブルグでの会議では、強硬派の国は自国の立場を堅持する一方、委員会の意見に理解を示すのはスペインとオランダと英国だけであった。 フランスは、表示と追跡可能性の実際の運用方法が決まらなければ解除は考えられないと言い、更に環境責任法を追加する意向を示した。
委員会は、科学的に試験された物を拒否し続けることは国際法上でも不可能で、バイテク企業が法的に訴えれば、各国の意見は却下される恐れがあると心配する。
EU環境委員のマーゴット・ウォールストロームは「難しい問題でどうして良いか分からない。我々は、違法な状態で、WTOではアメリカに責められるだろう。」と懸念する。
モンサントは2003年にGM小麦を売り出す予定で、EU政府への圧力はますます強まる物と思われる。