ISISレポート

2002年7月6日

訳 山田勝巳

GM 樹木にご用心

 

  ジョー・カミンズ教授が、水銀蒸気を放つGM樹木を開発する、狂った学者に用心するよう警告し、リグニン含量を減らしたGM樹木に疑問を投げかけている。

 

水銀蒸気を放出するGM樹木

  土壌の水銀汚染は深刻な慢性的危害である。その多くが歴史的な工業跡地で、特に金鉱では今でも原始的水銀による金抽出が行われ土壌と水系を汚染している可能性が高い。土壌汚染は人的というよりも地質的なところも多い。現在大気圏に滞留する水銀は北国の都市や湖沼の主たる汚染源である。この問題の大部分は化石燃料と医療廃棄物の焼却と関係がある。

 

  水銀汚染濃度が高い土地では、水銀イオンや有機水銀を取り込む遺伝子組み換え樹木を使って毒性の低い水銀原子に変換し空気中に放出して‘安全に希釈’するという‘樹木処理’が計画されている。

 

  組み換え樹木処理の賛成派は、水銀処理を施されたところの水銀放出は水銀元素で現在の放出レベルよりも低くなると主張している。水銀元素は空気中に最長二年間滞留し降下するまでの間に“無毒”なレベルまで希釈されるという。又、汚染は化石燃料を燃やすのは病院の廃棄物焼却に比べれば無視できる量だとも言う。 水銀元素は植物組織から急速に放出されるので、GM植物で飼育される家畜は、従来の植物で飼育される家畜よりも水銀に曝露する量が少なくなると言う。水銀放出遺伝子は、非組み換え植物に移動することはないと信じてもいる。

 

  残念ながら、水銀元素は最長二年まで空中にただよい常に雨や雪と共に降ってくる。北極は降下する水銀が濃縮して溜まる場所になり、大きな北米諸都市を含む北部社会がこの降下による水銀蓄積の増加の害を被る。降下した水銀元素は急速に水銀イオンや有機水銀に転換する。

 

樹木処理の意味するところは、南部社会の汚染地域から北部社会へ土壌水銀をまき散らすことに他ならない。水銀汚染した土壌や沈殿物のあるところは、地質的に水銀濃度の高い場所に沿ってかなりの数がある。例えば、アマゾンに沿ってある粗雑な金採掘技術を使っている金鉱では土壌水銀レベルが高い。ここで樹木処理をすると空気中に放出される水銀は、北部アメリカとカナダに降下する可能性が高く、北極ではひどい影響を受ける。放出され海で濃縮された水銀は、食物連鎖による生体濃縮で世界の食卓に乗るようになる。

 

  現在の組み換え作物からの経験からすると、組み換え花粉や種子が散逸することは間違いない。 地質学的に水銀汚染のある地域一帯に組み換え水銀樹木を植えることは、地球規模の災害につながる可能性が高い。

 

  一方で水銀を樹木処理して放出する研究を支援し、もう一方で空気中の水銀濃度を下げる大きなプロジェクトを支援しているアメリカのEPAは分裂病的といえる。地球規模の水銀やその他の揮発性汚染源の大気中滞留を規制するのは国連が主体で行うべきだ。

 

 

リグニンを減らしたGM樹木 三文(パルプ)小説?

  植物細胞壁は三つの重要な組成からなっている;セルロース、リグニン、ヘミセルロースである。リグニンは特に生分解しにくい物質で、他の細胞壁成分の利用を制限している。リグニンはフェニルプロパン群の複合高分子で色々な化学物質と相互につながっている。この複雑性がこれまで科学的にも微生物分解をも詳しい解釈を拒んできた。

 

  それでも、生物、特にキノコ類にはリグニンを組成物質に分解する酵素を作るものもあり、これが生態系の栄養循環に重要な役割を果たしている。

 

  遺伝子組み換えをしてリグニンを減らしパルプ生産を容易にしようと様々な努力が続けられている。飼料用作物も家畜がより多くの草やサイレージを消化できるように組み換えがされている。ほとんどの遺伝子操作ではアンチセンス遺伝子配列が使われ、リグニン生産の代謝過程で特定の遺伝子産物を抑止するようにしている。

 

アンチセンス組み換えでは、本来のメッセンジャーRNAと相補的な配列を持つメッセンジャーRNAを作り、二重螺旋RNAを作って組み込むとこれが植物細胞のウィルス感染防御機構によって破壊される。 リグニンは植物にとっては大切なもので、これがストレスや病原への抵抗力となっており、リグニンが少ないということは飼料作物の場合、現実世界(温室害)で繁茂するには弱すぎる可能性がある。

 

  低リグニン・アンチセンス組み換えポプラは四年ほど育てられており、高質のパルプ生産が成長や適応性の問題もなく出来ているという報告がある。別の低リグニン、アンチセンスポプラではリグニンは低いもののリグニンの構造が正常な木よりも工業的に分解しにくい形に変わっていることが分かった。 低リグニン多年草植物(アルファルファ、スズメノチャヒキ、オーチャードグラスなど)を従来の育種で選抜したものの大規模な研究では、冬越しが出来ない、バイオマスが少ないなどの問題が出ている。

 

  組み換えアンチセンス低リグニン樹木は、大規模に植樹を検討する前に環境ストレスや病害虫に曝すなどの広範な試験が必要だし、そのような樹木の遺伝子拡散を含む生態系への影響も調べなければならない。

 

 

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