遺伝子組み換えイネより在来イネの方がはるかに優秀
遺伝子組み換えイネだって?
在来イネを一度見てみなさい
ヒンドスタンタイムズ
02年12月12日(ニューデリー)
ソニ・ミシュラ
訳 山田勝巳
政府が干ばつや洪水、塩分に耐性を持つ遺伝子組み換えイネの導入に夢中になっている一方で、環境保護運動家たちは農家自身が持っている品種に焦点を移そうとしている。最も厳しい環境条件にも負けない品種がたくさんあるという。そういう在来イネを前にすると、遺伝子技術がなにか遅れたテクノロジーのように見えてしまう。
実例を挙げると・・・NavdanyaというNGOの「記録簿」によると、西ベンガルだけで、乾燥条件に適したイネが78種類も栽培されている。Navdanyaは、種子に対する農民の権利獲得運動の一環としてその「記録簿」を作ったという。Uttararnchalの農民も負けていない。54種の干ばつ耐性イネを栽培し、毎年、栽培・消費を繰り返しながら種子を保存してきた。Keralaでは約40種の干ばつ耐性品種が開発されたし、餓死の多いことで知られるOrissaでも、干ばつ耐性品種が数種類栽培されている。
NavdanyaのVandana Shivaは言う「私たちは、9つの州の農民団体とともに、15年間にわたって品種の照合を進めてきました。品種に対する認識を広め、それを保存することの必要性を強調したいのです」。
「記録簿」によれば、インドの農民は12−15日間の浸水にも耐えるイネをも開発してきたという。普通のイネならば、2−3日の浸水で死んでしまうのだが。
塩分に対する耐性に関して言えば、西ベンガルの、塩分の多いマングローブ地帯で栽培するほど、イネにとって過酷な試験はないだろう。マングローブ地帯の、海水の入り込む水の中で3品種が栽培されており、最高で14%の塩分にも耐える。土壌は肥沃で、作物は農民が手をかけずとも育つ。田植え後は稲刈りまでほったらかしでよいというのだ。生物多様性の「記録簿」によると、Orissa, Kerala,
Karnatakaでもさまざまな塩分耐性品種が栽培されている。
Shivaは言う「こういう品種が遺伝子組み換え品種に勝る点は、生態系と共存していることです。なんといっても、農民たちが何百年もの間使い、試してきた品種なのだから」。遺伝子組み換え品種の、生態系に対する影響はあまり理解されていない。そのうえ農家の持っている品種は、毎年繰り返し栽培されなかった場合、絶滅してしまうだろう。「緑の革命」のとき、過酷な気候条件に耐えるだけでなくいつも確実な収量を上げてきた何千という在来種が絶滅したように。
インド農業研究所の重要な科学者であるS U Zaman博士は、遺伝子組み換えイネはさほど恐ろしいものではないという。新しい品種はすべて、世界的に認められた安全性審査を通過してはじめて実用化されるのだから。しかし博士は、在来種をどうやって保存していくかも同時に考えなければならないと警告する。在来種が新品種とともに存続できるような包括的なシステムが必要だ、と。イネの専門家たる博士は言う「長い年月の試練を経た在来種が手に入る地域には、遺伝子組み換え品種は必要ない。よい在来種を入手できない農民にこそ新しい品種を提供するべきだ」。
多国籍企業によって遺伝子組み換え品種が供給されることに反対する論拠がもう一つある。企業は自ら品種をつくり出しているのではなく、農家がつくり上げてきた品種から遺伝子を取り出して、またそれを入れているだけなのだ。 Shivaは言う「これは知的略奪行為です。農家の品種から奪った遺伝子で遺伝子組み換えイネをつくっておきながら、知的所有権制度のもとでその特許を申請するというのは、知的略奪行為であり、生物略奪行為です」。Shivaは、合衆国の企業ライステクがbasmatiイネ品種について出した特許申請を実例としてあげた。その品種は、インド農民の育てたbasmatiから遺伝子を取り出したものである。その申請が認可されていたら、ライステク以外の者が同じ特徴を持つイネを栽培することも、”basmati”の名称を使うことも違法になるところだった。しかし、Navdanyaと科学・技術・環境研究財団のはじめた世界的なキャンペーンの成果で、2001年8月、合衆国特許商標局に却下された。
Shivaは言う「記録簿は、単なる事実の記録ではありません。農民の手で開発されたイネ品種は農民のものであるという認識を広め多国籍企業に盗まれないよう保護する運動の、重要な一部分なのです」。