国内で研究中の遺伝子組換えイネ
(遺伝子組み換えイネ市民監視センター調べ)
(1)トリプトファン高蓄積イネ(日本晴)
独立行政法人農業技術研究機構 作物研究所(北興化学工業開発研究所、旧農業研究センター)
隔離ほ場栽培(2003)
イネ由来アントラニル酸合成酵素αサブユニットの改変型遺伝子を導入したイネ2系統(HW1,HW5)飼料用添加アミノ酸として使われるトリプトファンを蓄積する。飼料用として想定。農業環境技術研究所内の隔離ほ場で実験が行われる。
確認の概要プレスリリース http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/2003/0428/0428_7.htm
農林水産技術会議事務局
技術安全課 2003年4月28日プレスリリース
実験場所は、茨城県つくば市 ほ場の見学は申請すればできる。
農業環境技術研究所2003年5月2日、5月14日に平成15年度組換え体利用計画 (模擬的環境 利用)の一般説明会についてとするプレスリリースを発表
問い合わせ先:
農業環境技術研究所 企画調整部 研究交流科 029−838−8184
見学申込先:
農業環境技術研究所 企画調整部 情報資料課 029−838−8191
時事情報
研究成果
遺伝子組換え技術によるトリプトファン含量の高いイネの育成
稲研究部 遺伝子技術研究室 若狭暁
トリプトファン生合成系遺伝子を改変し、トリプトファン生成量の多い組み換えイネを開発。稔性が低いため、今後改良する。また、この改変遺伝子を導入マーカー遺伝子としても使用できることが分かった。(98.12.9日本農業 98.12.10 日本工業) 99年春にも隔離ほ場での実験を開始したい。将来は、トウモロコシ、アルファルファなどの飼料作物に組み込みたい。(98.11.8日経産業)
注:その後、隔離ほ場実験は行われていない(2001.3現在) 。必須アミノ酸のリジン増強イネ、農業研究センターと共同でトリプトファン増強イネを開発。飼料用をめざす。この技術を応用して、飼料用アミノ酸増強トウモロコシの開発もめざす。(99.3.16日経産業)
(2)酸性土壌耐性(トウモロコシ遺伝子導入C4)イネ(キタアケ)
農業生物資源研究所、農業環境技術研究所
開放ほ場栽培(2003年)
昨年隔離ほ場栽培が認められたキタアケの2系統がそのまま開放ほ場栽培となる。
今回の申請者は、申請者:独立行政法人
農業生物資源研究所
申請確認の内容http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/2003/0428/0428_1.htm
(農林水産技術会議事務局 プレスリリース2003年4月28日)
北海道で試験栽培が行われる、2003年5月9日、独立行政法人
農業技術研究機構 北海道農業研究センター はプレスリリースを行ない、酸性土壌耐性の改良品種として開放ほ場栽培試験を行うことを告知、説明会を20日に行うとした。ほ場は、所内407圃場、試験担当は作物開発部稲育種研究室。独立行政法人
農業技術研究機構 北海道農業研究センター 同5月9日告知
告知中の問い合わせ先 独立行政法人 農業技術研究機構 北海道農業研究センター
企画調整部 連絡調整室 企画班(担当:吉川・山口)
電 話
011−857−9490(直通)
F
A X 011−859−2178(代表)
Eメール
kikkawa@affrc.go.jp
隔離ほ場栽培(2002年)
トウモロコシC4型PEPC(ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ)遺伝子を導入した品種キタアケが2系統隔離ほ場栽培されることとなった。(PE2,PE84)
申請者は、農業生物資源研究所、農業環境技術研究所で、名古屋大学の関わりは不明、農水省の確認告知はこちら
時事情報
光合成能力の高いC4植物であるトウモロコシの遺伝子をC3植物であるイネに組み込むことで、光合成の能力を高めることに成功。イネの酵素活性は40〜100 倍になる。(97.4.4日経産業、97.4.16日刊工業)
98.11.19農林経済誌に農業生物資源研究所・桂直樹氏による「遺伝子解析・導入 研究の先端分野を推進」の詳論あり。具体的な導入酵素と反応についての解説など。
(3)糖尿病治療(血糖値調整機能)イネ
三和化学研究所、日本製紙、農業生物資源研究所
開発中品種(メーカーは商品化への意欲を示す)
時事情報
(株)三和化学研究所、(株)日本製紙、独立行政法人農業生物資源研究所の3法人は、2003年5月12日、それぞれプレスリリースを行ない、「ペプチド薬を多量に含む遺伝子組換え米」を作るシステム開発に成功し、このシステムから糖尿病の薬となるインスリン分泌を促すペプチド薬「GLP−1」を含むコメを遺伝子組み換えにより開発、「2型糖尿病患者向けの医療食として、需要が見込まれる」として商品化をめざす方針を示した。2型糖尿病は生活習慣が原因の糖尿病。「このような米の開発に成功すれば画期的なことであり、2型糖尿病患者に朗報をもたらすものと期待しています。なお、今後、2〜3年で有効性、安全性などを検証し、商品化を目指す予定」として、商品化への意欲を示している。日本製紙が遺伝子組換え技術「MATベクターシステム」、農業生物資源研究所が「米へのペプチド蓄積システム」、三和化学が「ペプチド=デザイン技術」を担っている。
(株)三和化学研究所
ニュースリリース http://www.skk-net.com/new/data/news030512.html
株)日本ユニパックホールディング(日本製紙)
ニュースリリース http://www.nipponunipac.com/news/news03051201.html
独立行政法人 農業生物資源研究所
ニュースリリース http://www.nias.affrc.go.jp/pressrelease/2003/20030512.html
ニュースリリースにある問い合わせ先
「生研機構プロジェクト」:
独立行政法人
農業生物資源研究所 研究チーム長 高岩文雄
Tel:029(838)8373
Fax:029(838)8397
E-Mail:takaiwa@nias.affrc.go.jp
(4)「ペプチド薬を多量に含む遺伝子組換え米の作成システム」:
日本製紙株式会社
技術研究所 主席研究員 海老沼宏安
Tel:03(3911)5106(代)
Fax:03(3914)3350
E-Mail:0880080@nipponunipac.co.jp
(5)「インスリン分泌を促す米」:
株式会社三和化学研究所 研究部長 城森孝仁
Tel:0594(72)6221(代)
Fax:0594(82)0071
E-Mail:t_johmori@mb4.skk-net.com
早ければ2006年にも商品化する計画、世界で1号の商品化となる可能性も。(読売新聞web版 03年5月12日)
血糖値調整作用をもつペプチドをイネに組み込む開発を進める。食後の高血糖を防ぐためインスリン分泌を促すペプチドホルモンをコメから摂取しできるのが狙い。(00.11.15化学工業日報)
三和化学は、生物資源研究所と共同で、口から摂取しても機能が壊れないアミノ酸配列を研究し、遺伝子を改良する。プロモーターは生物資源研究所、日本製紙が組み換え体の生産を行う。2005年完成予定。完成後2〜3年での商品化を狙う。生物系特定産業技術研究推進機構委託事業として年間5千万円程度の委 託費が出される。(01.1.1日経産業)
(6)低温耐性ササニシキ
岩手生物工学研究センター
隔離ほ場(2003)
グルタチオンS−トランスフェラーゼ遺伝子導入により、低温耐性を獲得させる。ちなみに、除草剤パラコートへの耐性ももつという。
時事情報
屋外実験は、2003年5月から。岩手大農学部附属寒冷バイオシステム研究センター江尻慎一郎教授が担当。「屋外実験は縦5メートル、横1メートルの圃場2カ所で行われる。外部と遮断するために高さ約1・5メートルの鉄柵とコンクリート側溝で囲い、イネの上にはネットを張る」「他の水田とは120メートルの緩衝がある」としている。(2003.4.18 岩手日報 http://www.iwate-np.co.jp/news/y2003/m04/d18/NippoNews_7.html)
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/2003/0403/0403_1.htm(農水省先端研)
ササニシキに対し、抗菌ペプチドのオリゼマチン遺伝子、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ遺伝子をそれぞれ、いもち耐性、低温抵抗性を目的に組み込み、イネの研究を続けている。(http://www.ibrc.or.jp/kenkyu/nenpo/ine.html)
糸状菌のリゾプスから採取したキチナーゼの遺伝子を導入。糸状菌細胞を溶解することで耐イモチ病性を獲得したいとしている。今後、閉鎖系温室で研究を本格化。(95.10.25日刊工業)
(7)短幹イネ
名古屋大学生物分子応答研究センター・理化学研究所
基礎研究
時事情報
緑の革命の遺伝子単離に成功し、その後、成長ホルモンのジベレリンが作用しても成長を抑制し、背丈を低くしたままにする実験に成功した。実験は突然変異を利用。この作用を遺伝子組み換えにより、イネやムギ、トウモロコシに応用する ことで、短幹で生産量の多い品種を生育し、「第二の緑の革命」を起こすことができるとしている。(中日新聞03年03月27日付)
名古屋大学生物機能開発利用研究センター(http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~nubs/)
イネの「緑の革命」の遺伝子単離に成功 (http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~naikan/MG-HP-MIDORI-top.htm)
(8)花粉症予防イネ
慈恵医科大学・東北大学農学部
開発中品種
時事情報
スギ花粉症の原因となるタンパク質のうちの1種類をイネに組み込み、このタンパク質を生むイネを開発。コメをマウスに食べさせ、減感作療法と同様にアレルギーの発症抑制を起こすことがわかった。加熱しても効果が落ちないという。(東京新聞03年2月22日付)
(9)耐塩性イネ(組み換え体交配)
植物工学研究所
開発中品種
時事情報
大腸菌由来の浸透圧調整物質(耐塩性)を生みだす遺伝子を組み込んだイネと、好塩性植物のホソバノハマアカザ由来の細胞質内ナトリウム濃度をコントロールすることで耐塩性を生みだすNa+/H−アンチポーター遺伝子を組み込んだイネをかけあわせ、F1種をつくる。さらに、F2種までつくり、ふたつの遺伝形質が受け継がれていることを実験で確認した。単独の組み換え体に比べて、耐塩性が増していることが分かったという。(化学工業日報02年11月07日)
(9)短針 2002.9.13 ●うるちをもちに、人工DNA導入で
岡崎国立共同研究機構・基礎生物学研究所の飯田滋教授らは、イネの特定の遺伝子のみを組み換え味や形などを変える技術開発を行った。うるち米ともち米の違いは、特定の遺伝子が機能するかしないかによって決まる。人工DNAをうるち 米の細胞に導入し、組み換えを起こし、もち米にすることができた。組み換えを効率よく、かつ、特定の遺伝子に限って起こせるとして、効率よい遺伝子組み換えにつながるものと見られている。9日付Nature
Biotechnology電子版で発表された。(読売新聞9月9日、時事通信9月9日)
(10)短針 2002.9.13 ●マーカー遺伝子に除草剤耐性イネ遺伝子
農業技術研究機構中央農業総合研究センター、農業生物資源研究所、クミアイ化学工業株式会社は共同で、突然変異イネ由来の除草剤耐性をもつ遺伝子と、カルスでのみ遺伝子を発現させるプロモーターによる、組み換え体の選別マーカーとするを実現した。従来は主に抗生物質耐性を選別マーカーとしていた。イネ以外にも使用できる。クミアイ化学工業(株)の除草剤ビスピリバックナトリウム塩 (ノミニー、グラスショート)は、イネなどが持つアセト乳酸合成酵素の活性を阻害するものだが、突然変異により耐性を持った同酵素の遺伝子を選抜した。
プレスリリースでは、「抗生物質耐性遺伝子はバクテリアに由来するものが多く、環境への拡散や、作出された組換え体の食品素材としての安全性に対する消費者の懸念もあり、組換え体の受容と普及に当たっての障害になってきている。こうした組換え体の安全性に対する社会的な動きを受けて、消費者により受け入れられやすい、安全性に十分に配慮した組換え体の選抜技術」を開発したとしている。あわせて、特許問題の回避の側面もある。
プレスリリースによれば、カルスでのみ発現するため、現在の遺伝子組み換え作物のようにマーカー遺伝子の抗生物質耐性が可食部に発現するなどの問題がなくなるとしている。
http://www.nias.affrc.go.jp/pressrelease/2002/20020823.html(農業生物資源研究所プレスリリース)
http://narc.naro.affrc.go.jp/chousei/shiryou/press/ineyurai/ineyurai.htm
(中央農業総合研究センタープレスリリース)
http://www.kumiai-chem.co.jp/(クミアイ化学工業)
(11)耐塩性イネ
東京農業大学 進化生物学研究所
海水の半分近くまで塩分耐性を高めた遺伝子組み換えイネを開発。7月の日本植物細胞分子生物学会で発表される。
(毎日新聞 01年4月28日)