遺伝子操作は本質的に危険
ロイター、AP、ABCニュース、USニュースワイア
遺伝子操作の根本を問う新レポート
2001年1月15日
訳 山田勝巳
10億ドル産業を支えてきた科学が長く見過ごしてきた決定的な欠陥が、今日発表された研究で明るみに出され、食品の遺伝子操作の安全性について重大な問題があることを指摘している。
ハーパー・マガジンの2月号に発表された科学論文で、著名な生物学者バリー・コモナー博士は、現在アメリカのコーンと大豆の25−50%を占めるバイテク産業が、全ての生物でDNA遺伝子が遺伝を完全にコントロールしているという40年前の古い理論を拠り所にしている事を実証している。 この理論(セントラル・ドグマ)では、遺伝子をある生物から別の生物へ移した場合、必ず”特定の正確で予測できる”結果になるので安全だということになっている。
この観点からこの問題を捉えると、一連の科学論文はこの確立した理論と矛盾するとコモナー博士は結論している。 例えば、昨年、30億ドルかけた人ゲノム計画で分かった人の遺伝子数では、人と受け継いでいるものがとてつもなく違う原生動物や植物との違いを説明するには少なすぎる。 これは、DNA以外の何かが遺伝の多様性に貢献していなければならないことを示している。
このセントラル・ドグマでは、遺伝子の化学組成と遺伝した性質を発現する特定の蛋白質構造が1体1で対応することになっている。 だが、コモナー博士は、”違った組み込み”を行う特殊な蛋白質の影響下では、一つの遺伝子が、色々な蛋白質を生成でき、遺伝特性が一つ以上になると指摘する。 その結果、遺伝子の遺伝への影響が化学組成から単純に予測できなくなっており、人ゲノム計画とバイテクの両方で主要目的からずれてきている。
コモナー博士の研究は、農業バイテク企業が食用作物に遺伝的改変を加えるやり方に対して警鐘を鳴らすものだ。 研究者は、植物に組み込んだ遺伝子は、その植物には目的以外の遺伝的影響はないと単純に想定している。 しかし、最近の研究では、その組み換え植物自体の遺伝子が攪乱されることを示している。 政府が業界を野放しにしているため、このような結果には気付かない。
「遺伝的操作された作物は、巨大な無制限の実験をしている事になり、その結果は本質的に予測できない。 大惨事になるかも知れない。」とコモナー博士は結んでいる。
コモナー博士は、遺伝の分子による説明をDNAだけに帰することが出来ない最近の研究のいくつかを引用している。博士は、「教義的理論が適用できない実験データは、生きている細胞の複雑性に帰すことが出来ないもので、人工的に変えられた遺伝構造は早かれ遅かれ意図しない潜在的に悲惨な結果をもたらす可能性を意味している。」と警告している。
遺伝を説明するには単純で極めて魅力的なセントラル・ドグマ(中心教義・中心的理論)は、殆どの分子遺伝学者を”素晴らしくて疑うことが出来ない”ほど信じ込ませてきた。 その結果、セントラル・ドグマは、矛盾するデータが増えてきて変更が必要であるにもかかわらず、受け付けられずに来たため、バイテク産業が知らず知らずに、大量に科学的に不健全な事業を農業で許してしまったのである。
注: 本ホームページの論説
「遺伝子操作は何故危険か・・・ヒトゲノム計画の背景」(バリー・コモナー)も参照してください。