有機商品消費者協会

 

ハンセン博士:遺伝子操作された食品から起こるアレルギーの危険

http://www.organicconsumers.org/ge/hansen090805.cfm

 

200597

GMウオッチ・デイリー(http://www.gmwatch.org

訳 高岡芳江

 

ポルトガルの研究員によって遺伝子組み換え(GE)トウモロコシと大豆へのアレルギー反応は通常の物とは異なった反応をするかどうかを調査するために、大人と子供のグループを対象にアレルギーのプリック検査が行なわれた。彼らは両者に違いはないと報告したが、この研究は厳しい批判を浴びた(http://www.gmwatch.org/archive2.asp?arcid=5669)。このアレルギー研究に関するアンダーソン氏の質問に対する、消費者組合研究員ハンセン博士の返事にはGM食品の潜在的アレルギー性に関して、いくつかの興味ある、示唆的な問題点が含まれている。

 

● アンダーソン氏

私たちは遺伝子組み換え(GE)トウモロコシにどれだけ曝されているのか正確には把握していないということもあり、GEトウモロコシが関与するアレルギーを発病する危険度はわかっていない。かなりの割合でGEトウモロコシが米国で収穫されているが、私たちは人が消費する食品に含まれるGEトウモロコシの正確な量はどのくらいなのかわからない。米国産トウモロコシの8割は動物の餌になり、人々に消費されるトウモロコシの大部分はコーンシロップのような原形を留めぬ食品に加工されているということを思い出してもらいたい。23年前、多数の非政府組織(NGO)が食品の検査をし、トウモロコシまたは大豆食品にGEトウモロコシとGE大豆を検知したが、遺伝子組み換えであった大豆とトウモロコシの米国収穫面積の割合から想定されるより、それらの食品に含まれる遺伝子組み換えされたトウモロコシや大豆の割合ははるかに少なかった(例えば、10倍や20倍以上少ない)という結果が出た。 この結果は、トウモロコシもしくは大豆のほとんどは動物の飼料に振り分けられていることを暗示していた。 だが、私たちは真の暴露がどれほどはびこっているかわからない。ほとんどのアメリカ人は加工程度の高い形でのトウモロコシを多く消費するため、遺伝子組み換えの暴露はとても少ないだろうし、トウモロコシが占めるアメリカ人の食品摂取量率は低い。 これはトウモロコシ食品を救援物資として送られている、飢えや栄養失調のアフリカ人たちには当てはまらないであろう。また、遺伝子組み換えされたタンパク質を含有しているはずのGEトウモロコシへの暴露(例えば、コーンマフィンやトルティーアなど)は摂取がとても不規則的であるため、トウモロコシとアレルギー症状を関連付けるにはかなり無理があるだろう。GEトウモロコシが入った食事をし、中程度あるいは強度のアレルギー反応が現れても、アレルギーをトウモロコシが原因だと決めつけるのはとても難しいだろう。食物摂取調査をはじめに行い、それから、食餌から全てそれらの食品を外し、どれがアレルギー症状に関連しているのか確かめるためにもう一度食品ひとつずつ調べるのである。次にトウモロコシを食べ、それが遺伝子組み換えでないものなら、トウモロコシをアレルギー源の対象から除外するであろう。しかし、77名の研究参加者ではサンプルサイズがとても小さいというのはわたしも納得する。この論文のもっとも深刻な問題点は、組み込まれたタンパク質(Bt穀物の場合、特にCRYプロテイン)がアレルゲンであるかどうかという基本的な質問に答えていないことである。 この研究はIgE抗体による食物アレルギーを誘発するトウモロコシのタンパク質レベル、これは自然界に存在するタンパク質であるが、これが遺伝子操作によって増加するかどうか、それによってアレルギー症状の深刻化が増加するかどうかだけを問題視している。この種の研究はモンサント社と他の会社が定期的に行なっているタイプのものだ。つまり、この研究では組み換え操作して生産されたトウモロコシのタンパク質自体がアレルゲンであるかどうかは分かり得ないのだ。真の問題は、通常は人が食べないたんぱく質が取り込まれた時、そのタンパク質のアレルゲン性をようにテストするかなのだ。 まさにこの疑問は20011月にローマで開催された遺伝子組み換え食品のアレルゲン性に関するFAO/WHO合同専門家会議へと繋がったテーマなのだ。会議の報告書、専門家が生み出した方法は非常にうまい。 専門家会議の結論の一部はこうだ:

2.バイオテクノロジー由来の全ての産物はアレルゲンの可能性を査定しなくてはならないと強調。

5.アレルゲン性の有無が不明の原料から、目的のタンパク質が発現しているとき(Bt穀物のCryプロテインの場合のように)、FAO/WHO2001年度決定分析図(イベントツリー)は初期調査でも食物と環境が由来の既存アレルゲンとの配列の相同分析をするように勧告している。もし既存のアレルゲンと合致が見られたら、そのタンパク質がアレルギー因子だとほぼ容認される。

 

この新しい研究に携わる著者らは調査に使ったGEトウモロコシ(Btと除草耐性タイプ)とラウンドアップ耐性大豆は、アレルギーを引き起こすとされる原料からの遺伝子を含まないといっていることを付け加えておく。そこで、FAOWHO によると、最初の段階は挿入されたタンパク質と既存のヒトアレルゲンとの配列相同(もしくは、類似)を見ていくべきであるのに、この著者らは完全にそのステップを怠った。

 

また、多くの研究では様々な遺伝子組換えタンパク質と既存のヒト・アレルゲンとの間に配列相同(実際は配列類似)があると示していることを指摘しておこう。アメリカ食品医薬局バイオテクノロジー研究所(食品医薬局のリサーチグループで規制担当でないクループ)所長ジェンダル博士が行なった研究では、「ある種のアミノ酸残基は特異的な結合に重要であるのは明らかだが、いくつかの保存性のアミノ酸置換はアレルゲン性に関与してないかもしれない。それゆえ、(アミノ酸配列の)同一性が8個以上長くなくても、類似の範囲内で発現する極めて高い同一性でアミノ酸配列の合致があれば、それには意味があるとして扱うことは慎重であるべきかもしれない。例えば、CryA(b)とヴィテロゲニン(卵アレルゲン)の類似性は十分追加の調査に値するかもしれない」と結論付けた。補充すれば、もし、既存アレルゲンのほかの特質、例えば、分子サイズや糖たんぱく質であること、消化妨害作用、熱分解しにくいことなどをみると、それらの特質のいくつかは様々なCryプロテイン、とりわけ、CryCにも共有されている。 

 

2001年度のFAO/WHO合同専門家会議が提案した配列相同の議定書を用い、保守的な仮説を1,2付け足し、オランダ人科学者2名が掲載した論文では、市場に出回っているGE商品に挿入されたタンパク質と既存のヒトアレルゲンとの配列相同が判明した。この研究は遺伝子組換えタンパク質に共有される数に限りがある同一性配列分子(パパイヤ・リングスポットウイルスの外殻タンパク質、アセト乳酸合成酵素GH50と、グリホサート分解酵素)とアレルゲンタンパク質は線状エピトープの可能性(の一部)として同定できる」と発見し、「この追究のプラス結果は、アレルゲン性の今後の発生に対して臨床検査を妥当なものにする」と結論付けた。http://www.biomedcentral.com/1472-6807/2/8 にアクセスしてみてください。明らかにこの研究はGE食品のアレルゲン性における更なる調査の必要性を示している。市場に出回るGE穀物は2001年度FAO /WHO 合同専門家会議によって提案された議定書や決定分析図に従っていなかったことも指摘すべきだ。

 

要約すれば、この論文は重要な問題(それをただ補助的な問題であると見なしている)を回避し、調査人口は少なく、研究結果が何も出なかったのは驚きことではない。これはとてもまずい研究ではあるが、GM食品に対するアレルギー反応の可能性を監視するため、定期的な商品化後の調査をその研究が訴えているということは強調しておこう。その結果は強調すべきだ。

 

● ハンセン博士

この研究の中和を図るために、そして、Bt穀物に関連したCRYたんぱく質(とりわけ、Cry1AbとCryAc)はヒトアレルゲンであるかもしれないこと、人間の内臓に悪影響を及ぼすものかもしれないという示唆的な証拠があることを示すために、わたしはもう少し情報を付け足そうと思う。1999年に研究誌Environmental Health Perspectivesに「バチルス殺虫剤を浴びた後の農民の免疫応答」という題で記載されたの環境保護局(EPA)財源による研究は「1992年のアジア産マイマイガコントロール実験のBtの使用は、殺虫剤散布後の健康への影響力があることを報告し、殺虫剤を浴びた者の間で典型的なアレルギー性鼻炎症状と、喘息の悪化、皮膚反応が生じたことと関連があるとされた。不幸にも、これらの症状がBt由来の過敏症なのか中毒反応なのか、または、散布時の季節に偶然重なって現れるただの空中アレルゲンによるものなのかを特定するフォローアップ調査はなかった。よく似た結果が1994年春に別のBt散布のケースでも見られた」(1999年バーンステインら、575ページ参照)フォローアップがなされていないため、Cryプロテインがアレルギー反応源でなかったとどうして言うことができるのか? これは明らかに「探さない、見つからない」の典型である。

 

バーンステインらの農民対象の研究から得たデータは、若干名の農民の体内にCryたんぱく質(別名デルタ・エンドトキシン)の存在を匂わせた。この研究にはBt殺虫剤の散布前後の農家の看視プログラムが組み込まれていて、多数の農民は皮膚感作を催し、農民の体内にIgEIgG抗体の存在が認められ、それらの反応はBt への暴露レベルが高い農家に強く現れるということがわかった。 皮膚感作とIgE抗体の両方はアレルギー反応の構成要因である。

 

その研究内容の一環として、微生物Btk散布剤(ジャヴェリン)の4種類のエキスである、ウォーターエキス(J-WS)、メルカプトエタノール・ナトリウムドデシル硫酸エキス(J-ME-SDS)、タンパク質性Kエキス(J-PK)、プロ・デルタ・エンドトキシンエキス(J-PROTOX)を使用した。2名の農家にプロ・デルタ・エンドトキシンのみを含んだJ-PROTOXエキスに対して皮膚プリック検査で陽性反応が出た。別の連鎖反応を用いた遺伝子研究では農家が働いていた畑で使われたジャヴェリン商品中にCry1AbCry1Ac遺伝子が存在していたことを立証した。つまり、これはCry1AbCry1Acを含んだ遺伝子組換え食品によるアレルゲン性の疑いを検査するために、利用可能な皮膚薬剤と血清剤が今日存在することを意味する。 彼らの研究結果からBt穀物でできた遺伝子組換え食品のアレルゲン性について、いくらか懸念を緩和するはずだと著者らは述べている一方で、そのようなアレルギーテストをするための皮膚薬剤と血清剤が今日あることを明確に述べている。「循環器経路で敏感にされた123人中たった2名の農家にBtkプロ・デルタ・エンドトキシンへの反応が出現しただけなので、消費者がこの種のタンパク質の遺伝子コードをもつ(トマトやポテトなどの)遺伝子組換え食品を口から暴露した後にアレルギー性感作を発症することはまれであろう。しかし、この調査期間中に開発された信憑性の高いBt皮膚試薬と血清試薬の入手可能により、こういったアレルゲン性の可能性を今後臨床検査することが今日では有り得るようになった」イタリック体は追加。(バーステインら、1999年、581ページ参照)

 

さらに、メキシコの2大学(メキシコ自治大学と国立工科大学先進研究センター)とキューバから編成された研究者チームに遂行され、7年前から研究誌に記載された5つの実験からなる一連の研究は(Btコットン中に見られる)CryAcたんぱく質は、本来の長さのもの(プロトキシン)と短く先を切ったもの(可溶性品種)の両方に、免疫原生とアレルゲンの特性を保有していると示唆している。BtkHD73BtコットンのCryAcを採取するためのバクテリア源)からのCryAcの“クリスタリン(cCry1Ac[プロトキシン]と可溶性の(sCry1Ac[短く先を切ったものの]両方を使ったハツカネズミの研究は、腹腔内(IP)もしくは胃内経路からネズミに施され、ネズミの体内から抗Cry1Ac抗体反応が認められた。両方の経路から注入されたマイクロ・グラム量のCry1Acは特定の粘膜抗体の分泌ばかりか、強烈な全身抗体性反応を誘発した。”(ヴァズクエツ‐パドロンら、1999年(a), 1989ページ参照)。

もうひとつの実験ではCry1Acは有力な全身免疫と粘膜抗体免疫増強剤(アジューバント)であると立証した。「Cry1Ac がほとんどの漿液と腸のIgG抗体反応を促すCT(コレラトキシン)と同様に有力な粘膜免疫と全身免疫増強剤であるという結論になる」ヴァズクエツ‐パドロンら、1999年(b), 578ページ参照)。 鼻中経路からの暴露を調査することを含んだ三つ目の実験でもまた、「腹腔内経路と、鼻中経路、直腸経路からの免疫処置が解析された全ての粘膜表面のIgM、IgG、そしてIgAを誘発した」(モレノ‐フィエロスら、2000年、885ページ参照)。四つ目の実験では、ネズミに発症した粘膜、全身免疫反応の更なる特徴から、Cry1Ac プロトキシンは粘膜組織内の特定の免疫応答を誘発できる有力な免疫原生であると確認した。 これはほとんど他のタンパク質への反応では観察されていないことなのだ」イタリック体は追加。(ヴァズクエツ‐パドロンら、2000年(a)、147ページ参照)。五つ目の実験でもまた、「Cry1Ac プロトキシン(pCry1Ac)はネズミの小腸の粘膜表面に結合する。 ...6つのpCry1Ac結合ポリペプチドは小腸と分離された小腸刷子縁膜小胞(BBMVs) に存在する。その上、このタンパク質は生体位 “in situ” の一時的変化をネズミの空腸の電気生理学的特性に引き起こした。「この実験結果は動物の腸の一部とCryプロテインとが体内 “in vivo”で、腸の生体状況に変化が生じるといった何らかの相互作用を引き起す可能性があること示している」(ヴァズクエス‐パドロンら、2000年(b)、54ページ参照)。 著者らは「独自に殺虫性遺伝子組換え植物を凝らして開発した食品を商品化する前に、粘膜組織と動物の免疫システムにおいて、Cry1Aプロテインの安全性を証明するために毒性学的検査を行なう必要がある」と、結論を述べている。(ヴァズクエス‐パドロンら、2000年(b)、58ページ参照)。

 

かつての議論の1項にCryプロテインは哺乳類には影響はないと提示されたが、この論議は影響を受けやすい昆虫だけが内臓に短く先を切ったエンドトキシン(例えば、短鎖Cryプロテイン)と結合するレセプターをもっているという論と哺乳類はそのようなレセプターを持っていないので短く先を切ったエンドトキシンは哺乳類の内臓と結合しないという論から成っていることから、この五つ目の実験は重要なのである。

 

これら全ての研究は米国の環境保護局(EPA)といった様々な規制当局に無視されているのは明らかである。今日、Cry1Acは有力な全身と局所免疫原生で、強力なアジューバントであるという証拠があり、Cry1Acはネズミの小腸のタンパク質表面に結合するという証拠もある。昆虫に関しては、Cryプロテインは内臓のタンパク質表面にも結合する。最後に、バーンステインらの研究はCry1Abと(または)Cry1Acを検出するためにヒトの皮膚試薬と血清試薬を持ち合わせていることを示唆している。なぜこのような試薬が適切な人的研究に使われないのか? バーンステイン博士は彼の実験のフォローアップをしようとしているが、その実験をするための財源を探せないでいる。加えて、ヴァズクエス‐パドロン博士や彼の同僚らによって行なわれた実験のフォローアップがない。どうしてなのかと私は不思議に思う。

 

注)

Grammatical Error ”…soy and corn was GE.” à should be “…soy and corn that was GE.”

Immune Responses in Farm Workers After Exposure to Bacillus Thuringiensis Pesticides”

3        文中のtoxocological testはtoxicological testの間違いであろう。

 

 

戻るTOPへ