2005年8月8日
EurekAlert
翻訳 房谷まひる
遺伝子組換えトウモロコシはメキシコ南部で発見されなかった
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2005-08/osu-gmm080205.php
オハイオ州コロンバス―多くの科学者達の考えに相反して、メキシコ南部で遺伝子組換え(以下GM)コーンは土着のトウモロコシ作物にまだ広がっていなかった。
2003年と2004年に栽培されたトウモロコシから採れた何万もの種子の分析の結果、メキシコ及びアメリカ合衆国の科学者達は、これら土着の品種に遺伝子転換のいかなる兆候も発見しなかった。
この調査結果は、科学者達を驚かせた、とオハイオ州立大学の進化、生態学及び生物学の教授であるアリソン・スノーは言った。彼女は、国立科学アカデミーの学会会報の最新版に今週オンラインで載る、この調査の指導を手伝った。
この調査結果は、トウモロコシの土着の品種の中に組換え遺伝子がどの程度見つかるかを調べるための初めて公表される報告である。
4年前、研究者達は、スノーと彼女の同僚が今回調査を実施したメキシコ州南部の州オアハカで、4本のGMトウモロコシの穂軸を発見したと報告した。そしてGM穀類の栽培に関しての政府の禁止令にも関わらず、GMトウモロコシは遠く離れた山岳地域の辺りまで広がっていることが他の未発表の調査によって確認された。
トウモロコシを中心に自国の文化、独自性を発展させてきた国―この作物はここで数千年前に初めて生み出された――で、土着の植物を汚染する可能性のあるGM品種を輸入するという考えは、多くの市民をぞっとさせるものである。
「土着のトウモロコシの遺伝的な多様性は、大きな文化的な意義を持つ重要な資源である。もし農家の人々が、彼らが非常に大事にしている土着の植物が遺伝子組換えに変わってしまったと考えたら、彼らはそれを栽培することをやめさせるかもしれない。」とスノーは語った。
「この地域で遺伝子組換えコーンがどのくらいあるものなのか、誰も知らなかったが、我々は5〜10%位高い確率もありうると考えていた。加工食品や動物用飼料のために何百万dものGM穀物が毎年輸入されているので、アメリカ国境を渡って転換された遺伝子がやって来る大きな可能性がある。」とスノーは語った。
1998年にメキシコ政府は、国内におけるGMトウモロコシの栽培に対して6年間の猶予期間を課した。しかしながらメキシコの農家の人々は、ワタやダイズのようなGM作物を栽培することを認められている。
2年以上にわたる調査で、調査員達はオアハカの125ヶ所の畑で870本のトウモロコシから153,000個以上の種子を集めた。彼らはこれらの種子をトウモロコシの種子に非常に低濃度の組換え遺伝子があるかないかを検査することができる、アメリカの2つの商業会社に送った。
研究者達は2つの主要な組換え遺伝子の痕跡を探していた。そのうちの1つまたは両方が、全てのGMトウモロコシで、見られるものなのである。検査の結果はどの種子にもどちらの組換え遺伝子も存在の兆候がない事を示した。オアハカで遺伝子組換えトウモロコシが成育していないという事が分った。スノーは語った。「作物の中に組換え遺伝子が入り込む事を望まないメキシコの農家の人々は、これらの招かれざる遺伝子が消え失せたようだと分って安心するだろう。」
「この調査より以前にオアハカに存在していた遺伝子組換え植物は、ただ単に生き延びられなかったのかもしれない。」とスノーは言った。現在のGM品種は、たとえ現地の植物と交配する事ができて、それにより耐寒性の性質を獲得するとしても、オアハカで耐えられる程の耐寒性にはならないのかもしれない。
土着のトウモロコシは主に山岳地帯で栽培される。そこでは気候と土壌は非常に過酷なものであろう。また、遺伝子組換えした種子の流入は、もし農家の人々が問題に気が付いて、自分達の種子の貯蔵に特別の予防策を取ったので減少したのかもしれない。
メキシコ政府は、将来、ある時点でGMトウモロコシの栽培を承認するかもしれない。―同時に遺伝子組換えした種子は、アメリカからメキシコに簡単に入る事ができ、遺伝子組換え種子がさまよい込む事例がもっと多くなる可能性があるだろう。
スノーはこの調査をメキシコシティーにある国立生態研究所(SEMARNAT)及び生物多様性の情報と利用に関する国立委員会(CONABIO)、そしてアイオワ州フェアフィールドにある北米遺伝子ID会社からの科学者達と共に実施した。