Genes and Development: Vol. 14, No. 22, pp.
2869-2880, November 15, 2000
外来遺伝子は染色体上の同じ場所に組み込まれても予想通り発現したり、
あるいは発現停止(サイレンシング)する組換え体を作ったりする
http://www.genesdev.org/cgi/content/full/14/22/2869
訳 河田昌東
Christopher D. Day, Elsa Lee,1
Janell Kobayashi,2 Lynn D. Holappa,3 Henrik Albert,4
and David W. Ow5
(合衆国植物遺伝子発現センター、農業・農業研究サービス部門)
要約
植物の組換え遺伝子の変異をコントロールする努力の中で、我々はCre-loxによる組換えを利用して、gusレポーター遺伝子を様々な標的位置に厳密かつ再現性をもって導入することが出来た。分析に用いられた各組換え体はデザインどおりの位置に組換え遺伝子を1コピーだけ持っていた。どの標的位置に挿入したものでも、ほぼ半数が組換え遺伝子の発現を示した。しかしながら、発現の絶対量は挿入場所によって10倍までの変動があった。このことは、染色体上の位置によって遺伝子の発現が影響されるという見解を実証するものである。予想外の発見は、どこの場所に外来遺伝子を挿入した場合も、ほぼ半数で組換え遺伝子の発現が十分に行われなかったことである。こうした組換え遺伝子の部分的な発現は、遺伝子サイレンシングの結果であろう。何故ならこれらの組換え体でgus遺伝子の発現が低い原因は、DNAがメチル化され転写が不十分だったからである。メチル化は新たに組み込まれたDNAだけに起こり、その外側のDNAには起こらなかった。十分に発現する形質も、部分的にしか発現しない形質も、いずれも有性生殖した子孫に遺伝する。導入された組換え遺伝子のサイレンシングは、形質転換の過程で起こる確率的な事象のように見える。