GEカビ 環境にぶちまける災厄

ニューサイエンティスト(UK) 
2002年9月28日
ボブ・ホームズ
訳 山田勝巳

遺伝子組み換えカビが、守るはずの作物を害する。

 初めてカビが遺伝子組み換えされ雑草を枯らすように強化された胴枯れ病菌が作られた。 問題は、これが作物も枯らすことだ。
 この結果この組み換えカビは、環境中には解放されないが、如何に遺伝子組み換えが意図しない結果を招くかを示すものだ。 また、必要があれば、バイテクで作物を標的にした武器が作れるという証明でもある。 このカビはベルベット・リーフ(Abutilon theophrasti)という雑草を標的にするが、これが綿の近縁種でもあるため、これを標的にした殆どの作物をも殺してしまう。 「除草剤が効かないから、生物防除を考えなければならない。」とイスラエル、リホボットにあるワイズマン科学研究所の植物性理学者ジョナサン・グレッセルは言う。 
 理論的には、病気が一種類の品種だけに感染するものが多いので生物防除が適している。 例えばアメリカでは、コカインの木やアヘン芥子を標的にしたカビを試験している。 しかし、ベルベット・リーフに炭素病を起こすようなカビは、宿主をも害するため除草剤としては不適切なものだ。 それでグレッセルのグループは炭素菌カビ(Colletotrichum coccodes)にフザリウムという別のカビの毒性遺伝子を追加して殺草力を強化することにした。 組み換えたカビは確かに温室実験ではベルベット・リーフに対して強い致死力があり、それをネーチャー・バイオテクノロジー(DOI:10.1038/nbt743)に報告した「これでなんとか使い物になるだろう」と言う通りだった。

ところが、強化カビは通常炭素菌には冒されないはずのトマトやタバコの苗も殺してしまった。 このケースは、影響が早い段階で分かったものの、これはまさにGM反対者がGMの予期しない結果であるとして警告してきたことだ。 「毒を組み込むことは危険だ。」とワシントンDCにある懸念する科学者連盟のジェーン・リスラーは指摘する。 懸念を宥めるために、グレッセルは、温室の外で試験する前にこのようなカビに「フェイルセーフ」修飾をすることを提案している。 生殖遺伝子を除去することで、別の植物を害する類縁カビへの毒性遺伝子を伝達することを防げる。胞子形成遺伝子を除去することで空気伝染を防ぎ、冬が来るたびに完全確実に死に絶えるように出来る。

こうした対策をとっても完璧とはいえない。 例えば、このカビが特に熱帯地方では、胞子を生じずに生き残るとモントリオールにあるマッギル大学の植物生理学者アラン・ワトソンは話す。 生物防除剤の殺草力を強化する他の安全な方法があると思う。 ワトソンは炭素菌と一般の除草剤低用量合剤の特許を持っている。この除草剤は、草の病気に対する抵抗力に干渉して菌が優勢になるようにしている。 この除草剤の綿圃場での試験はこれからだ。

 

 

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