アメリカ農務省がネブラスカのバイテク作物混入を認める
02年11月13日(水)
ランデイー・ファビ
ワシントン発ロイター
訳 河田昌東
ブッシュ政権は水曜日(13日)ネブラスカの農場で生産された大豆に医薬品生産用に遺伝子組換えされたバイテクコーンが意図せずに混入したかどうか調査中である、と発表した。
アメリカ農務省は個人企業のプロデイジェン社が栽培した約50万ブッシェルの大豆を隔離した、と発表した。問題は在来大豆が栽培された同じ畑で少量のバイテクコーンが混ざったかどうかである。このコーンは先月大豆を収穫した際に混ざった、と農務省は言った。
医薬品用に認可されたバイテクコーンは人間の食用にも家畜飼料にも認可されていない。「我々は今状況を調査中だ。結果がどうでも恐らくこの大豆は廃棄されるだろう」と農務省のスポークスウーマン、アリサ・ハリソンは言った。
農民は土壌の健康と生産性を守るために、通常大豆とコーンを同じ畑で交互に作る。環境団体は農務省が医薬品用作物に対する規制を厳しくしないと人間の食用作物に混入する、と懸念を表明していた。「医薬品用作物を作る企業への農務省の無神経な許可が汚染の発生を許している」というのは地球の友（FOE）のスポークスマン、ラリー・ｂホーレンである。
しかし、農務省と共にバイテク作物の規制にあたるＦＤＡ（食品医薬品局）は、「このバイテクコーンがアメリカの食品供給チェーンに入らなかったと信じている」といった。農務省と企業担当者はプロデイジェン社のコーンでどんな医薬品を作っていたか詳細を述べるのを拒否した。しかし、同社はインシュリン生産に使われるトリプシンというタンパク質をつくるコーンを開発していたと信じられている。
プロデイジェンと農務省の談合
農務省当局者とプロデイジェン社はこの隔離された大豆の処分について話し合った。「プロデイジェン社は決定を速やかに実施し、安全で最も責任ある製造過程を確立するために努力している」と同社は声明のなかで述べた。
プロデイジェン社は、エイズや糖尿病のような病気とたたかうための医薬品を安価に大量に作ることが出来るバイオ製薬に力を入れてきた。新世代のバイテク作物―――他の植物や動物、人間などのタンパク質を作れるようにしたもの―――は、その他にガンやパーキンソン病の治療に使われる抗体をも作れるように変えられる。
農務省の動植物保健調査サービスのスポークスマン、ジム・ロジャースは、同省が、プロデイジェン社が連邦法を侵害したかどうか調査中だ、と述べた。農務省は、テキサスに本社のあるプロデイジェン社に、大豆収穫前に（前年度作付けした）コーンを除去するように勧告した、と言った。「我々が見たときは植物が一本も無かったし、（生えてきたら）除去するように言った。今回それは守られなかった」とロジャースは言った。
プロデイジェン社が大豆を収穫後、農務省の調査官が収穫した大豆の中に、コップ一杯ほどの見慣れないコーンの茎と葉っぱが混ざっているのを発見した。農務省は直ちにその大豆を隔離した。調査員達はこのコーンの茎と葉がプロデイジェン社の品種かどうか確認中である。
スターリンク事件の再来を阻止
プロデイジェンその他のバイテク企業は先月自発的に医薬品用作物を中西部とプレーン草原地帯では栽培しないことに合意し、偶発的な混入の危険性をなくす、と述べたばかりである。アメリカの山ほどあるバイテク企業、ダウケミカル社はじめモンサント社なども含む、は医薬品用の作物を数年以内に商業化する目的で新たな遺伝子組換え作物の圃場試験をしている。
バイオテクノロジー産業機構は、穀物取り扱い業者や食品加工業者が、スターリンク事件でこうむったような被害の恐れを表明したあとで、新たな政策を作った。 2000年9月に、動物飼料にのみ認可されていたスターリンク・コーンが、ヒトの食品用のコーン製品に混ざっているのが発見された。この発見はスターリンクがアレルギーを起こすかもしれない懸念から、国中を巻き込み、コーン・チップスやタコスの皮の回収騒ぎに発展した。
アメリカの輸出業者は外国の消費者がアメリカの作物を短期的に拒否したために、数百万ドルの損失をこうむった。アメリカ大豆協会の会長、ステファン・センスキーはこの問題でアメリカの大豆輸出が落ち込むことは無いだろう、といった。「我々の考えではそうなって欲しくない（輸出への悪影響）。なぜなら農務省が非常にはっきりした対応を取ったからだ」。センスキーは、海外の大豆輸入メジャーがアメリカ産の大豆購入を控えるとは信じない、といった。（チャールス・アボットとクリストファー・デーリング、リチャード・コーエンによる追加報告がある）