EUのGMO新規承認モラトリアム解除とGMOをめぐる欧州の状況(下の1)

 

農業情報研究所 Report

04.6.2

EUのGMO新規承認モラトリアム解除とGMOをめぐる欧州の状況(中)
EUのGMO新規承認モラトリアム解除とGMOをめぐる欧州の状況(上)

 

共存問題

 自他共に世界一厳しいと認めるGMO規制を完成した欧州委員会も、GM作物の商用栽培、あるいは大々的な栽培の開始の前に、なお解決しなければならない問題があると認識している。それが「共存問題」である。

 (1)非GM作物汚染と共存問題

 GM作物の屋外栽培は、主として遺伝子移動を通じて、近隣の非GM作物、有機作物を汚染する恐れがある。欧州環境庁(EEA)は2000年、欧州議会の要請に応え、GMOや様々な化学物質のような科学的複雑性と不確実性で特徴づけられる技術の研究成果の普及や、これら成果の利用・予防原則の使用も含むそれらの管理のあり方に関する特別プロジェクトを立ち上げた。その研究成果の一つが、02年3月に発表されたGM作物の花粉を通しての遺伝子移動に関する報告であった[i]

 この研究は、GM作物の環境と農業への影響を評価するために、EUにおいて商業的利用が見込まれるナタネ、テンサイ、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、大麦について、当時最新の研究による知見を詳細に検討したものである。ヨーロッパの果実についても、簡単な検討を行った。検討結果は、作物による程度の違いはあるものの、総じて言えば、現段階では、これらの作物のいずれも、花粉を完全に封じ込めることはできない、従って種子と花粉の移動は今以上に測定され、管理されねばならないというものであった。それは、作物間の直接的な遺伝子の流れを最小化し、汚染された生存種子と自生植物群を最小限に抑えるために空間的・時間的隔離のような管理システムが利用できるが、隔離帯や作物その他の植物による障壁は、天候や環境の条件により完全とはいかないとも述べていた。

 GM作物の屋外栽培により、近隣の非GM作物、有機作物はもちろん、近縁野生種も汚染される可能性と、これを完全に防ぐ方法がないことが、多くの科学的知見を通して確認されたわけである。非GM作物が汚染されれば、消費者・市場が非GM食品を受け入れない現状では、非GM作物栽培者は、少なくとも何らかの経済的損害を受けることになる。とりわけ、ほとんどの国・団体の有機農業基準は、いかなるレベルのGMOの存在も認めない(GMOゼロ)から、多くの有機生産者が存続できなくなるだろう。そうであれば、GM作物栽培を希望する生産者の選択にも圧力がかかる。すべての農業者が平和的に「共存」できなければ、GM農業の普及も妨げられることになる。

 欧州委員会も、GM作物の普及のためには、「共存問題」に取り組まざるを得ない。欧州委員会は03年3月、初めて共存問題に取り組むことを公式に明らかにした。それを伝える3月5日のプレス・リリース[ii]は、「欧州委員会は今日、GM、慣行、有機作物の共存について政策討論を行った。委員は、共存の概念、これまでになされた準備作業、可能な農場管理手段、GMフリー区域の実行可能性(フィージビリティー)、(GMOの)偶然の存在に関する賠償責任の問題に取り組んだ。また、委員会は国家及びEUレベルで取られるべき政策選択と行動も議論した」と述べる。 

 (2)欧州委員会の考える共存問題と共存措置

 上記の欧州委員会文書は、「欧州委員会は、共存は非GM作物中のGM作物の偶然の存在の経済的帰結に関係することに注意する。問題の起原は、基本的には、GM作物であれ、慣行作物であれ、有機作物であれ、農業者が彼らの選択する農作物を自由に選択できるべきだというところにある。EUでは、農業のいかなる形態も排除されてはならない」と言う。さらに、フランツ・フィシュラー農業担当委員は、「共存は、経済的・法的な問題であって、リスクまたは食品安全の問題ではない。EUでは許可されたGMOだけが栽培できるからだ。共存措置は新しいものではない。例えば、慣行農業、種子生産者においては、種子の純粋性基準を確保するための農場管理規範実施の多くの経験が既にある」と強調する。このような考え方は、関係者との協議を経て03年7月に発表された「共存確保のための欧州委員会ガイドライン」においても、少しも変わることはなかった[iii]。

 要するに、欧州委員会にとっては、共存問題はリスクや食品安全とは無関係で、純粋に「経済的な」問題であり、「共存措置」とは、種子生産者が製品の純粋性を奪われることで経済的損失を防ぐ措置と同様、GM農業、慣行農業、有機農業が相互に経済的損失を受けることのないように保証する手段だということだ。

 このような基本的考え方に基づく共存措置は、非GM作物のGM作物の汚染を、経済的損失が生じないレベルに抑える農場管理の実施と、このレベルを超える汚染が生じた場合の損害補償措置ということになる。経済的損失が生じないレベルとは、新表示規則でも表示が義務付けられることのない0.9%未満ということだ。これは有機農業についても同様だ。ヨーロッパのほとんどの国や有機農業団体はGMOゼロを基準としているが、これら基準の大枠を定めるEUレベルの統一基準にはGMOに関する定めはない。同時に、共存措置は、GM農業を不可能にし、あるいはそれに損害を与えるようなものであってもならない。

 欧州委員会の共存措置ガイドラインは、共存措置は、@あらゆるタイプの農業者の利害均衡を確保するもので、A効率的で、コスト節約的で、B作物特定的で(偶然の混入の可能性は作物ごとに大きく異なり、例えばナタネでは非常に大きく、トウモロコシは中間的、ポテトでは非常に小さい)、地方的・地域的側面を十分に考慮した措置でなければならないという一般原則を強調する。

 だが、欧州委員会は、自ら共存措置を決定しようとはしなかった。何が効率的で、コスト節約的な最良の方法であるかを決定する要因の多くは、国ごとに異なり、また国の内部でも異なる国家的・地域的特徴と農業慣行にあるというのがその理由である。欧州議会[iv]や十全な汚染防止措置が講じられなければ食品安全も危うくなると主張する消費者団体[v]EUレベルで法的拘束力を持つ措置を講じることを要求したにもかかわらず、欧州委員会は各国が定めるべき共存措置の一般的指針(ガイドライン)を提示するにとどまった。

 そのガイドラインは、汚染を抑えるための措置として、@農場レベルの措置(隔離距離、緩衝帯、生垣のようは花粉障壁など)、A近隣農場間の協同(播種計画に関する情報、開花期が異なる作物品種の利用など)、B監視と通知の計画、C農業者の訓練、D情報交換、E助言サービスを例示する。

 措置が適用される地域的範囲については、農場レベル、また作物や製品のタイプ(例:種子生産)で異なる近隣農場との緊密な協同ができる範囲を優先すべきであるが、適切な場合、あるいは他の手段で十分なレベルの純粋性が確保できない場合には、地域レベルの措置も考えることができるとした。ただし、フィシュラー委員は、地域または国全体がGMOを完全に締め出すような「GMフリーソーン」の設置は許せない、そのような決定を公権力が行えば司法の問題になると言う[vi]。実際、03年9月、欧州委員会は、有機農業と伝統的農業を保護し、また動植物遺伝資源をGMOとの交雑から守るための手段としてGMO使用を年間禁止する北オーストリア政府の決定を拒否している。地域レベルでのこのような措置を正当化するだけの地域に特別な事情が立証できないというのがその理由である[vii]

 損害賠償責任については、各国がそれぞれの民事責任法を検討し、既存の国家法がこれに関して十分で衡平な可能性を提供するかどうかを明らかにする、保険も既存のものの実行可能性と有用性を検討するか、新たな計画を立ち上げることができるとしただけである。

 (3)共存は可能なのか

 ところで、このような意味での「共存」はそもそも可能なのか。深刻な疑問がある。汚染のレベルを一定の限界(ゼロではない)内に抑えるだけなら、欧州委員会が例示するような農場レベルの措置や近隣農場間の協力で可能かもしれない。それは、前にも掲げた欧州環境庁(EEA)の研究[viii]も示唆していた。最近発表されたトウモロコシに関するフランスの研究[ix]もそれを示唆する。

 これはフランス国立農学研究所(INRA)と穀物生産者の研究施設であるArvalisが中心となって行った研究だが、GMトウモロコシと非GMトウモロコシを10m離して栽培すると、非GMトウモロコシの汚染レベルは1%から2%だったが、それ以上離すと0.9%以下に下がったという。ただし、開花期が同時だと汚染は避けられない。開花期を2週間から3週間ずらすと、汚染はなかった。この研究は、畑からサイロまで、さらに家畜飼料製造用のサイロまでの隔離の可能性も調べたが、荷台とトレーラートラックを丁寧に掃除、専用の乾燥室を使うと、同じサイトで連続して飼料を製造しても、飼料の偶然の汚染は0.9%以下に抑えられたという(ただし、これはトウモロコシについてだけのこと、ナタネの場合ならばもっと厳しい措置が必要になるのは間違いない)。

 だが、これらの措置は「経済的」に実行可能なものなのか。このフランスの研究は、これらの措置によるコスト増加は2.5%から5%で、GMトウモロコシの採用による収量増加は6%から25%になるから、経済的に十分引き合うと結論する。だが、これはいかにも話がうますぎる。汚染レベルを一定限界内に抑える措置は、天候や地域の環境条件により異なるだろう。INRAと全国農業経営者連盟(FNSEA)の以前のトウモロコシに関する共同研究では、汚染を1%までに抑えるには100m離すか、開花期を4日ずらす必要があった。また、15haのGM区画による非GM区画の風による汚染率の評価では、平均2mの風速のボースでは隣接区画の汚染率は0.7%だったが、平均風速6mのローヌの谷では、隣接地域の100ha以上で汚染率が1%以上になった。収量増加も確実というわけにはいかない。この研究だけで、欧州委員会が言うような共存が可能と言い切ることはできない。

 もっと一般的には、欧州委員会自身が2000年5月にEU共同研究センター(JRC)に委嘱した研究[x]がある。その研究結果は、欧州委員会が発表を躊躇っているとグリーンピースが告発したものだ。EUの以前の表示限界である1%を基準として共存の経済的可能性を探ったこの研究の結論は次のようなものであった。

 同一地域におけるGMナタネと非GMナタネの共存は、追加コストのために経済的に難しい。遺伝子汚染を避けるために農業方法の変更が必要になり、通常または有機の農業者は種子の純粋性を保つために、認証された種子を購入しなければならなくなるだろう。GMナタネとGMトウモロコシの商用栽培により、有機・通常生産者の経営費用はナタネで10%から41%、トウモロコシで1%から9%増える。一般的に、非GM種子・作物の純粋性(GMOとの交雑のレベルが1%未満)を保つことは、大部分の場合、不可能に近い。

 種子自体の純粋性も保証されない。欧州委員会は今、慣行農業・有機農業種子のGM汚染の上限を定めようとしている[xi]。委員会によれば、交雑は自然現象であり、GM汚染に限らず、種子の純粋性を保つことは不可能である。それは、非GM農業においても、古来避けがたいことだったという。従って、種子のGM汚染ゼロの可能性は最初から排除された。そこで非GM種子として許容されるGM汚染の上限を定め、それ以下の汚染レベルの種子は、たとえGM汚染があっても非GM種子と認めるということになるわけだ。

 問題は上限を具体的にどう定めるかである。欧州委員会は、2001年3月の植物科学委員会(SCP)の意見[xii]に基づき、EUで栽培が予想される次の作物の上限を次のように定めようとしている。

 ルタバガ:0.3%

 ビート、トウモロコシ、ポテト、ワタ、チコリ、トマト:0.5%

 大豆:0.7%

 これらの上限は、最終製品のGM汚染を0.9%以内に抑えることを念頭に、植物繁殖システムや偶然の種子汚染の蓋然性などを考慮に入れて決められた。前に述べたように、今のところ、EUには、GM作物の商用栽培はほとんどない。だが、非GM種子はGM作物栽培国からの輸入に大きく依存しており、トウモロコシ、大豆、ワタ、ナタネ種子の輸入依存度は、それぞれ33%、80%、66%、10%になる。最近の研究でも、通常種子中の「偶然」または「技術的に不可避」のGMOの存在が不可避であることが示されたという。

 しかし、そうであれば、「共存」は極めて困難であるか、不可能な場合もあり得ると考えざるを得ない。SCPの意見は、当時の表示基準に従い、最終製品の汚染レベルを1%未満に抑えることを念頭に置くものであった。勧告された上限も、現在の「理想的な」種子生産の下でのみ達成できるもので、意見書は、将来、1%という表示基準の見直しも必要になるかもしれないとしていた。GM作物が大規模栽培されるようになれば、「自然現象」による交雑の機会は当然増える。そのうえ、生産段階以降の全過程での汚染の機会も増える。仮に種子汚染の上限が上記のように定められたとすれば、生産以後の全段階での汚染は0.6%(ルタバガ)、0.4%(ビート等)、0.2%(大豆)以内に抑えねばならない。後の二者では、この汚染を種子汚染よりも低く抑えねばならないことになる。どうしてそれが可能なのか。有機農業は汚染ゼロを基準とするかぎり、最初から存在を否定されることになる。

 欧州委員会は、ほとんど不可能に見える「共存」を確保するための措置の策定をEU各国に任せたわけだ。というより、このような困難を前に、自らの責任を放棄したと言うべきかもしれない。効率的で、コスト節約的な最良の方法は国ごと、地域ごとに異なるという委員会の言い分自体はその通りだろう。だが、それは具体的共存措置を各国に委ねる理由にはならない。各国はこんな責任は引き受けたくない。ルペルティエ環境相は今年5月、「この問題にはEUレベルで取り組む。それが成功しなかったら、年末までに専らフランスのための手続を提案する」と述べた。環境相は屋外実験についても非常な慎重派である。今年の実験計画発表を前にしたゲマール農相は、GMOは農薬使用削減など有用なものだ、共存措置策定の権限は農業省にあり、環境相の発言は「意見」にすぎない、進歩と革新の追求を阻害することがないように、十分用心した上で屋外実験を追求すると応酬した[xiii]。農相も、共存については欧州委員会の規則を望むが、委員会からの提案がなければ国家措置を取ると言う[xiv]。だが、両者が考える共存措置は似てもつかないものだろう。国家共存措置は、簡単にはまとまりそうもない。

 他の国も似たようなものだろう。一応は共存措置を策定すると言うが、まともに取り組んでいるようには見えない。ドイツは、重大な損害を受けた非GM農民に訴訟に訴える権利を認め、GM作物を採用する農民に全国データベースへの登録を義務付け、農業規制に違反した場合には最高5万ユーロ(約700万円)の罰金か、最高5年の懲役刑を科す法律を制定した。これは、「共存」措置というより、GM農業を禁止するに等しい措置だ。緑の党に属するキュナースト農業・消費者保護相は、農民にGM作物栽培を思いとどまらせ、消費者に最大限の食品安全を提供するものだと言う。ドイツ農業者協会会長は、このような厳しい罰則があるからには、農民にGM作物栽培は勧めないと言う[xv]

 デンマークも最近共存措置を制定した[xvi]。GM作物を栽培する農民は、栽培を始める前に許可を得なければならない。農民は栽培を許可されたことを証明せねばならず、認可書の提示を要求される。栽培計画は近隣農民に知らせねばならず、要求される隔離距離を守る。安全ルールに違反した場合にのみ、近隣農民への補償責任を負う。GM作物栽培者は、GM作物に作物を汚染された非GM農民に補償するための基金として利用される1ha当たり74デンマーク・クローネ(約1,300円)の料金を払わねばならない。これは欧州委員会の眼がねに適うだろうが、これでGM汚染がどこまで防げるのだろうか。非GM農民は偶然の汚染による損害は補償されないし、有機農民は最初から排除される。

 英国政府の諮問機関である農業・環境バイオテクノロジー委員会(AEBC)は昨年11月、英国が取るべき共存措置に関する報告書[xvii]を提出したが、委員会内部の対立が露呈しただけであった。とりわけ、有機農業・食品との共存については対立が深い。GM作物を栽培する農民が厳格なガイドラインに従わねばならいことことでは一致したが、これが有機農業団体の望むGM汚染ゼロ(実際には検出限界の0.1%)までカバーすべきかどうかでは合意できなかった。GM汚染による損害を補償する基金の必要性でも合意があるが、有機食品汚染に誰が責任を負うかでは分裂したままである。

 有機農業・食品の問題は、一定レベルの種子汚染を認める以上、有機農業基準を緩める以外に解決の方法はないだろう。昨年9月11日、フランスの全国有機農業連盟(FNAB)は、欧州委員会に対し、種子の汚染上限を現在の検出限界である0.1%にすることを要求、さらGM関連部門の完全な分離を可能にする全事業者の義務的認証、GM関連部門事業者による0.1%以上の汚染が生じた場合には有機農業と加工業者への損害賠償を求めるという決議を送りつけた[xviii]。欧州委員会がこれを受け入れることはあり得ない。かといって、GMOゼロの有機農業基準を緩めれば、有機農産物・食品に対する消費者の信頼が揺らぐ。それは、通常の農産物・食品に格下げして販売するか、需要を減らすしかない。どのみち損害は避けられない。

 要するに、欧州委員会が言うような「共存」はありそうもないということだ。これでは、有機農民を始めとする反GM農民の欧州委員会不信は強まるばかりだろう。彼らを含む多くの環境団体、消費者団体は、最初から「共存」など不可能と見てきたが、GM作物・食品の販売・導入をめぐる立場は、もともと欧州委員会と異なっている。欧州委員会は、リスク評価手続を強化し、厳格な表示・トレーサビリティー規則を制定したからには、残る問題は経済問題に還元される「共存問題」だけだと主張する。だが、これら反GM派にとっては、GM食品・作物の導入がもたらす問題は、なお環境の問題であり、食品安全の問題でもある。 

 例えば、種子の一定レベルのGM汚染を許容するという欧州委員会の立場が明らかになった昨年9月、地球の友・ヨーロッパは、例えばナタネのような作物について提案された種子汚染のレベルは、農業者がそれと知らずにヘクタ−ル当たり1万の GM種子を撒くことを許すもので、「スーパー雑草」発生などの環境リスクばかりか、消費者にGM食品を強要する汚染にもつながると反対を表明している。彼らにとっては、「共存措置」もGMO導入の阻止につながるものでなければ意味がない。そんな可能性もほとんど期待できない状況のなか、地域レベルでのGMO導入の禁止に向けた運動が広がり、強まっている。

 反GM農民・市民・消費者グループは、地方団体に対し、その領土へのGM食品・GM作物の導入を禁止するように要請する運動を展開してきた。いわゆる「GMフリー」地域化への要請である。他方、EUには、生産効率だけを追求する大規模農業生産を可能にする条件に欠け、安売り競争では生残れない多くの地域がある。例えば、山岳地域を多く抱えるオーストリアの多くの農民は有機農業に生き残りを賭けている。有機農業だけではない。品質・安全性への信頼を武器に農業の生き残りを図り、それが地域経済の活性化に重要な役割を演じている多くの地域がある。GMOへの消費者・市民の反発の強さを考えると、GMO導入はこれら地域の命取りとなりかねない。反GMグループの呼びかけに、EU全土の多くの地域が呼応している。GMO新規承認モラトリアム解除は、この動きに一層の拍車をかける。今や、GM食品・作物導入をめぐる戦線の重心が、地域・地方とEU(欧州委員会)・国の間に移ってきた。 

 (以下、GMフリー地域創出をめぐる動向については、近々掲載予定の[下の2]に譲る。それをもってこのレポートを完結させたい)


[i] EEA(02.3),Genetically modified organisms (GMOs): The significance of gene flow through pollen transfer.報告内容の簡単な紹介は、農業情報研究所(02.3.28) EU:欧州環境庁(EEA)、GM作物花粉による遺伝子移転に関する報告を発表

[ii] European Commission(03.3.5),GMOs: Commission addresses GM crop co-existence.

[iii]European Commission(03.7.23),GMOs: Commission publishes recommendations to ensure co-existence of GM and non-GM crops

[iv]農業情報研究所(02.5.24) 欧州議会委員会、法的ルールでGMO・非GMOの共存確保を

[v]農業情報研究所(02.6.13) 法的共存ルールなしのGM作物解禁に警告:EU消費者団体

[vi]農業情報研究所(02.3.28) 前掲。

[vii]European Commission(03.9.2),Commission rejects request to establish a temporary ban on the use of GMOs in Upper Austria;農業情報研究所(03.9.3) 欧州委員会、北オーストリアのGMO禁止要請を拒否

[viii] EEA(02.3)、前掲。

[ix] Agrisalon(04.4.20), Les producteurs de maïs "prêts" pour les OGM, selon une étude.

[x] JRC(02.5),Scenarios for co-existence of Genetically modified,conventional and organic crops in European Agriculture.参照:農業情報研究所(02.5.18)  EU:GM作物と非GM作物の共存は困難

[xi] European Commission(03.9.29),Questions and Answers about GMOs in seeds;農業情報研究所(03.9.30) EU:欧州委、種子GM汚染上限設定へ、共存は可能なのか

[xii] SCP(01.3.17), Opinion concerning the adventitious presence of GM seeds in conventional seeds.

[xiii] Agrisalon(04.5.6) M. Lepeltier pour la coexistence des cultures OGM et non-OGM.

[xiv] Agrisalon(04.5.23),OGM: la France "bien décidée à rester très vigilante", selon M. Gaymard.

[xv] DW-World(04.5.15),German parliament Approves Gene-Food Law.

[xvi]農業情報研究所(04.4.2) デンマーク、GM共存ルールを制定、GM作物栽培者には補償基金料金

[xvii] AEBC(03.11), GM Crops? Coexistence & Liability;農業情報研究所(03.11.17) GM作物共存・責任に関する英国政府バイテク委員会報告

[xviii] Agrisalon(04.9.12),Au parlement européen, la FNAB refuse toute contamination par les OGM.

 

 

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