EUはGMOの表示をさらに強化する
ザ・ウオールストリート・ジャーナル
02年6月5日
記者 ブランドン・ミッチェナ‐(ブルッセル発)
訳 河田昌東
バイオテクノロジーに関する深い溝を反映する投票で、ヨーロッパ議会の環境委員会は遺伝子組換え生物を含む食品と動物飼料に更に広範な表示を求める案を僅差で可決した。同委員会の案は、EUがバイテク原料から作られたものは食肉、日用品から砂糖や大豆油などのような高度に精製されたものまで、たとえ組換え遺伝子が検出されないものでも義務的に表示することを求めている。
また、この案は表示が義務付けられる限界値を成分の1%(現行)ではなく0.5%まで引き下げ、EU参加15ヶ国で認可されていないバイテク原料を痕跡でも含むものは、例えEU以外で認可され栽培されているものでも、販売を禁止するというものである。
アメリカはヨーロッパとアメリカ国内の多くの食品製造業者とともに、そうした厳しい表示はバイテク表示のある全ての製品を事実上禁止するものだ、と警告している。実際、この新しい規制が始まらないうちに、多くのスーパーマーケットは自分の店はバイテク・フリー・ゾーンだと宣言している。「これは大問題を起こす」というのは匿名を条件のアメリカ政府代表である。アメリカではバイテク製品は特に表示が求められていない。
同委員会の採決結果はまだ予備的なものである。この夏後半のヨーロパ議会が全体としてこの委員会の勧告の取り扱いを決める予定で、同法律草案はヨーロッパ各国の委員会で議論され、多くの修正条項をつけられた上で再度EU議会にかけられる。
ヨーロッパ議会の多数派を占める中道‐右派の政治家たちは、同委員会で、より面倒の少ないルールに圧倒的多数が賛成した。同委員会が最終的な修正条項を付ければ貿易摩擦が生じ、消費者を困惑させ、詐欺的で見せ掛けだけの表示を招き寄せる、というのが彼らの賛成の理由である。しかし、社会党や緑の党連合のメンバーはもっと厳しい規制案を支持し、一連の食品騒動でヨーロッパの消費者達に生じた混乱に対し信頼を取り戻すためにそうした厳しい規制が必要だと主張した。
環境グループ、地球の友のロビイスト、ギールト・リツセマは、より厳しい規制を求めるキャンペーンを行ったが、この結果を「環境の観点からみれば正解だ。遺伝子組換え生物由来の全ての食品はラベルをつけるべきだ」と評価した。
修正条項がもっと厳しいということは、高度に精製された大豆油や砂糖も、バイテク大豆やコーンで飼育した動物由来の食肉その他の食品とともに、遺伝子組換え蛋白質を痕跡も含まないにも関わらず表示が必要となることを意味する。
同委員会は複雑なトレーサビリテイー(追跡可能性)の仕組みを基礎にして表示を求める決定をしたが、本質的にはこれは、食品製造の各段階でバイテクか非バイテクかを表示しなければならないことを意味する。