7th October 2002 - English Nature ref: 02/03-168. 1

2002年10月7日(英国自然保護機構 文書:02/03-168)

 

 

カルタヘナ・プロトコールの実施要領

遺伝子組み換え生物の国外移動の規制に関する英国自然保護庁のコメント

 

 

1.            我々はEC及びそのメンバー国による2002年6月の(カルタヘナ)プロトコールの批准決定を歓迎し、規制案が出来るだけ速やかに強制力をもち、他国における速やかな批准を促すことを希望する。

 

2. 規制案はカルタヘナ・プロトコールと幅広い整合性があるが、以下に述べるような幾つかの重要な問題点が削られている。さらに、我々はGMOの積み出しにおける組み換え遺伝子の意図的な、あるいは偶発的なスタッキング(複合)に関し、いくつかの追加的な保障措置を提案したい。

 

. 規制案から削除された主なものは、カルタヘナ・プロトコールの第12条に定められ、ECデイレクテイブ2001/18の第23条にも定められている決定の見直しの条項である。「オリジナルの決定が基礎にしているリスク評価の結果に影響を与えるような環境の変化が起こった、即ち関連する新たな科学的、技術的情報が利用可能になった」と輸出国が考えた場合、オリジナルの決定の見直しを輸出国が輸入国に対して要求するかもしれない。プロトコールのこうした要素が規制に組み込まれることが大切である。さもなければ、規制は同様な条項を含んでいるEUデイレクテイブ2001/18の23条との整合性を失うからである。

 

4. 前項に述べられたような何らかの新しい情報が明らかになった場合、出来るだけ速やかにバイオ安全情報センター(BCH)に報告されなければならない、ということを追加すべきである。

 

5. 同様の議論に基づき、2条には、特定のGMOが「悪影響がなさそうだ」というある国の会議の決定を覆すには、オリジナルのリスク評価を無効にするような新たな科学的情報が明らかにならなければならない、ということを述べる1項を加えるべきである。この場合、問題のGMOは規制の第1節の目的に含まれるであろう。

 

6. 第10条には、あるGMOの放出が「生物学的多様性の保護と持続的利用に明らかな悪影響を与えそうな非意図的な国家間移動につながるかどうかを、人間の健康に対するリスクを考慮し」、メンバー国は如何にして決定するか、あるいはメンバー国にその決定を期待すべきかどうかを規定する必要がある。カルタヘナ・プロトコールにはこれに対応する明瞭な条項が欠けている。GMOの非意図的な国家間移動の影響は輸入国あるいは地域により非常に多様な環境への影響がありうる(プロトコール第26条に規定されている社会経済的な影響を含む)ので、輸出国が潜在的な悪影響を評価すると期待することは非合理的である。従って、潜在的に非意図的な国家間移動をもたらすような如何なる(GMOの)放出も、BCHに通告すべきである。どの国がリスクのレベルを決める責任を持つか決定する必要の問題点は残る。我々の見解ではBCHがその義務を負うべきである。

 

7. 我々のもう一つの主たる懸念は、複合組み換え遺伝子(stacked transgene)を含むGMOを、規制においてどのように取り扱うかについてである。これには意図的及び非意図的な組み換え遺伝子の複合の双方が含まれる。

 

8. 我々は一個以上の組み換え形質(複合組み換え遺伝子)を持つGMOの最初の意図的な国家間移動は、もし個々の組み換え遺伝子が既に関係国で輸入が承認されている場合でも、第4条の下で取り扱われるべきである、と強く勧告する。例えば除草剤耐性と害虫抵抗性の遺伝子を持つトウモロコシの種子は、もし除草剤耐性種子と害虫抵抗性種子が既に別個に承認されているとしても、新たな認可が必要である。ACREは最近「複合遺伝子」植物によるリスクは個別の表現型に関する情報からは推測できない、という見解に達している。我々はこの見解に同意する。現在の計画的なGMOの放出指示書(release Directive)では、そうしたGMOは、恐らく別のパートCの届け出を通じて行われざるを得ないし、そうなれば規制案の下で新たな品種として取り扱われることになろう。この点については特別に記載するのが有用である。

 

9. ひとたび遺伝子組み換え作物がEUできちんと確立されれば、北アメリカのように、組み換え遺伝物質の混合が種子生産、収穫そして輸送の間におこることは大いにありうる。ほとんど不可避のこうした結果の一つは、非GM又はGM種子の双方への未承認組み換え遺伝物質の偶発的な混入である。これは規制案第10条で取り扱うべきである。しかしながら規制案には、承認済みの組み換え遺伝物質がGM種子に偶発的に混入し、複合組み換え遺伝子となった場合を取り扱う条項はない。我々はこれには重大な欠落があると信じる。なぜなら組み換え遺伝子の複合体はリスク評価を経て承認された個々の組み換え遺伝子とは異なる挙動をするかもしれないからである。例えば、除草剤耐性遺伝子同士が偶然組み合わさった場合、作付けローテーションにおける雑草駆除で更なる除草剤の散布が必要になり、生物多様性に有害な結果をもたらし得る。また多くの場合、組み換え遺伝子の複合の影響は、個別の遺伝子の挙動に関する知識だけからは予測できないからである。

 

10. この規制の目的は、組み換え遺伝子の偶発的複合の発生を、先手をうって阻止し、それが避けられない場合には、次年度以降その種子が蒔かれるのを防止することにある、というのが我々の見解である。従って、我々は複合組み換え遺伝子(種子生産過程の交雑で出来た)と遺伝子組み換え種子の混合(収穫後の偶発的な混合で生じた)とを同じように取り扱うよう強く主張する。我々は、種子中の承認済みの組み換え遺伝子に別の形質の組み換え遺伝子を含むことが判明した場合、輸出国は輸入国に対して報告する義務を科すよう、第10条を改正すべきだと提案する。

 

11. 我々はすでにこの点について、種子中の組み換え遺伝子の偶発的な混入に関する規制案に関るDEFRA専門家会議に対し強く指摘した。我々の意見のコピーはこの文書の最後に添付されている。この二つの法律(訳注:カルタヘナ・プロトコールと英国規制案)はお互いに整合性があるようにすべきだということに注意しなければならない。特に、偶発的混入に関する規制案は輸入された種子の純度を問題にしており、それゆえにカルタヘナ・プロトコール下の輸入国としてのECの役割に直接関わってくる問題である。我々は、遺伝子組み換え作物が、ヨーロッパと世界中に広がるにことに伴い発生するであろう問題点をあらかじめ予期し、複合組み換え遺伝子を含む種子、又は組み換え遺伝子を含む種子の混合物の輸入と輸出の双方に関する規制を可能な限り強化すべきだと勧告する。

 

12. 承認済みの組み換え遺伝子が偶発的に混入した場合、輸入国に通告する必要性についてカルタヘナ・プロトコールでは特に述べられていないが、第2条では「このプロトコールの如何なる条文も、ある国が生物学的多様性の保護と持続的利用をより強化する行動を・・・かりに、そうした行動がこのプロトコールの目的と条件に合致し、国際法のもとにおける当事国の他の義務と合致しているならば・・・とる権利を制限すると解釈すべきではない、と述べている。

 

 

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