GM食品トップ企業が英国での試験栽培断念
2003年9月28日
ザ・オブザーバー
ロビン・マッキ―(科学部)
訳 河田昌東
主要なGM作物開発企業のバイエル社が英国でのGM作物試験栽培の中止を決めた。この動きはGM企業に対する強い風当たりの結果と受け止められている。バイエルは英国でGM試験栽培を行っていた最後の企業である。 同社は、状況がよくなればまた再開したい、と昨日発表はしたが・・・・。
同社は断念にあたり環境大臣のマーガレット・ベケットを非難した。彼女が全ての試験栽培場所を公開すべきだと主張したことがこの決定のきっかけになった、と同社のスポークスマンはオブザーバー紙の記者に語った。
先週までバイエル・クロップサイエンス社(バイエルの子会社)は、これまで試験栽培は抗議者らによっていつも破壊されてきたので、GM作物の試験場所を秘密にする、という約束が取れるのは近いと信じていた。正確な試験栽培の場所を公開せず、企業はその場所のある郡名だけを発表すれば良いはずだった。 一般環境での栽培に関する諮問委員会は、このあいまいな広報でもリスク評価の点では受け入れ可能である、と言っていたが、警察は試験場所をはっきり公開することが「作物破壊者」らを助ける要因だ、と苦情を申し立てていた。しかし、最後の段階で環境省と食品・農村省(Defra)はバイエルに対してこうした規制の変更は支持しない、と伝えたのだった。 「試験栽培の秘密を守るための何らかの動きがない限り、バイエル・クロップサイエンス社は来期の英国での試験栽培を中止せざるを得ない。少数の人々の破壊活動がGM作物の情報獲得を阻止したのは残念だ」と同社は言った。
バイエル以外にも過去数年間に行われた多くのGM作物試験は妨害され、他社は撤退した。最後まで残ったバイエル社が今回中止を決めた。アメリカやカナダに英国の農業科学者の頭脳流出が今後強まりそうである。
企業がこの最後の逆風の責任をベケット大臣のせいにする事実は特に興味深い。先週、ベケットが彼女の同僚大臣に出した手紙では、GMフリー・ゾーンを全面的に禁止するというEUの新たな法律を支持すべきでない、としていた。この動きはEUにおけるGM作物の商業栽培にゴー・サインを出すものだった。 しかし、GMの試験栽培が妨害にさらされる限り、商業栽培への展望はますます遠のいたといえる。「これは裏口モラトリアムだ」と企業関係者は言った。