動物性油脂成分規格違反が発覚 改めて問われるBSE感染リスク
05.1.27
農水省が26日、肥飼料検査所による1月の立入検査で、特定動物性油脂(牛脂)の成分規格違反が認められたと発表した(飼料安全法の基準・規格に違反する事例について)。特定動物性油脂(特定油脂)とは、BSEの感染源となり得る不溶性不純物含有率が0.02%以下ならば牛用飼料に利用できるとされる唯一の動物性油脂で、食用肉から製造される。違反油脂は基準を超える0.06%の不溶性不純物を含んでいた。
製造者の山口県特殊化成組合に対しては、基準・規格に違反した油脂の出荷停止や出荷済みのものについての出荷先への違反事実の連絡などの指導を行ったという。ただし、「当該油脂は、出荷先において鶏豚等用油脂の原料として使用されており、牛用飼料用としての出荷はされていないことが確認されております」と、この油脂がBSE感染を招く恐れは否定している。
とはいえ、違反が今回限りにとどまる保証はない。鶏豚等用として使用されたといっても、交差汚染が起きない保証もない。違反の発覚は、油脂の飼料利用からくる飼料規制の抜け穴への懸念を高める。牛用飼料として利用可能な唯一な動物性油脂を特定油脂に限ったのも昨年5月1日以降のことだが、特に心配されるのはそれ以前のリスクである。
01年12月27日、牛の代用乳に使うことを許される油脂は不溶性不純物0.02%以下のものに限るとされた。しかし、他の飼料に不溶性不純物0.15%以下のものを利用することはできた。02年1月から04年3月までの検査では、121の検査に対して3件のこの基準への違反が発見されている(農水省の食品安全委員会プリオン専門調査会への提出資料)。
しかも、これら油脂には、03年4月からは牛飼料への利用が禁止された死亡牛からの油脂が含まれた。その上、以後も、去年5月から飼料への利用が全面禁止された牛の脊柱を原料とする油脂が利用されてきたことになる。これら油脂も、不溶性不純物が03年3月までは0.15%以下、同4月以降は0.02%以下ならば、牛の飼料に使うことができた。微量とはいえ感染性の高い背根(脊髄)神経節が含まれていた恐れがある。
そして、このようにして(牛)飼料への利用が次々と禁止されてきた油脂がどう処分されたのか、なお残存しているのか(アイルランドではファスト・フード用の油として大量に残存していることが最近発覚した)、残存しているとすればどう管理されているのか、こうしたことは全く分からない。
こうしてみると、飼料利用規制が導入された01年末以後も、動物性油脂を通してのBSE感染がどこまで防げたか疑問になる。それがもたらすBSE感染リスクを改めて見直す必要があるかもしれない。