遺伝子をオン・オフする光スイッチ

科学者は遺伝子を観察するための新しい手法を手に入れた

 

Nature 2 September 2002

クリストファー・サーリッジ

訳 ピコ(ペンネーム)

 

1つの植物は離れた他の植物の葉が反射する光を検出することができる. 今回、研究者はいつでも好きな時に好きな場所で遺伝子の効果を観察するための方法を作り出すために,遺伝子をオン・オフするためのスイッチとして自然界の光検出システムを利用した.

カリフォルニア大学バークレイ校のピーター・クエイルとその仲間は,赤色の閃光にさらされると青色になり,その後遠赤外光にさらされるとより色の薄い状態に戻るような酵母菌を作った.

同様なテクニックは動物細胞でも働き、研究者が明りをつけるのと同じくらい簡単に、選んだどの遺伝子の発現の研究にも使えるはずである。

 

今では科学者は,遺伝子組換え動物―例えばミバエやマウス――において,ある決まった時間に遺伝子を活性化したり,特別な組織の中で活性化するために,化学薬品や熱(温度)を用いている. 光を用いればはそれらの方法よりも傷つけないし,(発現を)1つの細胞に絞ることさえできる.

 

植物はフィトクロムと呼ばれる蛋白質によって光を検出している.フィトクロムには PrPfr(訳注)という2つの状態がある.Pr状態のとき赤色の光が届くと,Pfr型に変化する.光が可視スペクトルの赤色の端から外れると元にもどる.クエイルのチームはこの変化の多くの効果の中の1つを利用した.PfrフィトクロムはPIF3という蛋白質に結合するがPrフィトクロムは結合しない.

酵母の研究から研究者らはGAL4――DNAの(特定の)部位に結合することによって遺伝子を起動させる蛋白質――の分子の半分にフィトクロムBを結合させ、他の半分にPIF3を結合させた(訳注:GAL42量体を作って遺伝子を活性化する)。

 

フィトクロムBが光の影響下でPIF3に結合するとGAL4の単量体2つは一つ(の2量体)になる.そうするとGAL4GAL4プロモーターを含む遺伝子に結合し、これらの遺伝子が翻訳され蛋白質を産生されるようにできる. βガラクトシダーゼとよばれる蛋白質をコードしている遺伝子のテストケースでは,酵母細胞を青色に変化させることが出来た.

 

訳注 Pr:赤色光吸収型 Pfr:近赤外光吸収型

 

References

Quail , P.H. A light switchable gene promoter system.

Nature Biotechnology, published online, doi:10.1038/nbt734 (2002).

 

 

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