「サイトカイン工場」--GMOによる食品汚染の危険性

 

Professor Joe Cummins

The Institute of Science in Society

PO Box 32097, London NW1 OXR

訳 田中しのぶ

 

サイトカインはがんに深く関わる免疫系や、病原菌の感染に対して強い効果を示すタンパク質の総称(インターフェロン、インターロイキンもサイトカインの一種)であり、抗がん剤、免疫抑制剤、抗ウイルス剤として利用されている。しかしサイトカインの工業生産にはコストがかかるため、最近では作物への遺伝子組換えによって大量生産している。それはつまり、動物やヒトの細胞に含まれているはずの遺伝子が、食品となる作物中に広がったり、遺伝子そのものや遺伝子産物であるタンパク質が土壌や水、地下水、空気などを汚染する可能性があるということである。何といっても、それによって「何が起こるかわからない」のが最も恐ろしい。

 

インターフェロンγは、ニワトリの免疫力を高め生育を促進するのに使用されている。肉や卵の生産のために世界中で飼われているニワトリには、驚くほど短期間のうちにアデノウイルスベクターを使って組換えインターフェロンが組み込まれた。しかし、アデノウイルスベクターを使用したヒトの遺伝子治療で患者が死亡した例もあり、確実に安全だとは言い切れないのだ。また、インターフェロンがニワトリの卵、肉、肉骨粉に残留する可能性も残されている。さらに、同じ遺伝子を導入しても、環境によって作られるタンパク質が異なる場合があるため、安全評価が相当複雑化すると考えられる。作物によるヒトのインターフェロン生産は、病気に苦しむ多くの人を救うだろう。組み換えインターフェロンの臨床効果については多くの文献で有用性が報告されているが、経口摂取(つまり、食べること)すると痴呆、神経毒性、かんしゃくなどのさまざまな副作用を引き起こすという報告もある。ニワトリへのインターフェロンの導入は、ヒトへのそれと同じく病気のニワトリを作り出すことになるのではないだろうか。

 

さらに、臓器移植による拒絶反応を防ぐのに使われるインターロイキン-10の組み換えタバコの圃場試験は、外部からまったく隔離されていない開放系の農場で行われている。組み換えタバコに含まれるインターロイキン遺伝子が土壌や水を汚染した場合、自然界に存在するウイルスがこの遺伝子を獲得することで殺し屋ウイルスとなるかもしれないのだ。このような危険性について、私は警告したい。インターロイキン-2とインターロイキン-4はタバコの培養細胞でつくられている。培養細胞は液体培地で培養されていて、サイトカインは後から簡単に抽出できるようにと、細胞外…つまり培地内に分泌されるようになっている。タバコの培養細胞が生産したインターロイキンを細胞外へ排出するということは、そのタバコが開放系の農場で栽培された場合、生産されたインターロイキンは簡単に自然界へと広がっていくことになる。

 

これらのことから、作物によるサイトカインの生産が、サイトカインの自然界への拡散、食料汚染などの悲惨な結果が引き起こされることは明白だ。結論として、サイトカインはワクチンや薬剤のようにヒトの病気に対して非常に有効ではあるが、その生産は限定された設備で行うべきであって、外界に開放された農場での生産は行われるべきではない。

 

This article can be found on the I-SIS website at http://www.isis.org.uk/Pharmingcytokines.php

 

 

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