カナダ最高裁がハーバード大学組み換えマウス特許を阻止

2002年12月5日

ロイター

ディビッド・リュングレン

訳 山田勝巳

 

オタワ発−カナダ最高裁は、木曜、カナダの科学研究に大きな影響を及ぼす、ハーバード大学のガンになりやすいマウスやその他の組み換え生物に特許を認めなかった。

 

この判決は、17年に亘るハーバード大学の開発したガン研究の貴重なツールになっている、いわゆる腫瘍マウスにカナダが特許を与えるかどうかに決着をつけるもの。 ハーバード大学は、この最初のマウスとその系統すべてを使う研究に権利を確立することを目指していた。

宗教団体や環境団体が反対してきた、この特許で、ハーバード大学は、自らの開発したガンになりやすいゲノムを使って作る人以外の哺乳動物にまで権利を拡大することも目指していた。

 

1869年に制定された特許法が「高等生物」を取り扱うようになっていないとして、5−4で議会に照会する決定をした。 この決定は、すでにアメリカや日本、ヨーロッパ各国で特許を取得しているだけに、驚きを持って受け止められている。

 

「私は、議会が高等生物に特許を認める意図はなかったと思う。」と最高裁判事ミシェル・バスタラチは、多数側として書いている。「高等生物に占有権を与えることには独特の懸念があり、現在の特許法では議会がこの種の発明家の権利を守る術として認めないだろうと思う。」と書いている。

 

反対してきた人たちは、研究者が「全く私的な動物の世界」を創り出し、膨大なほ乳類に支配権を持つという事態を防止できたと喜んでいる。「生命の勝利。ほ乳類が機会と同じだとか、電球と同類で、産業の発明したものではないから、相応に扱うべきだとカナダ人は考えている。」とグリーンピースカナダのジョー・ダフィは言う。

 

しかし、判決に反対する人は、学者が特許保護を得られない国で研究することを望まないだろうから科学研究がダメージを受けることになるだろうと言う。カナダバイテク研究利用協会BIOTECanadaのジャネット・ランバートは、「この判決で、知識の探求と革新が凍り漬けになる。カナダにとって社会経済的大損失になる。」と語る。

カナダには400社以上のバイテク関連企業があり、約60,000人を雇用している。そして、統計的に1999年にC$8億2700万だったのが、2001年にはC$14億ドルにほぼ倍増していると指摘する。

 

ハーバード大学を弁護してきたディビッド・ロウは、判決にはがっかりしたが、議会がこの特許法を見直してくれることに期待を表明して、「特許法のそもそもの目的は研究促進にある。特許の弱い国では研究が少ない。」と語る。

 

宗教団体は、この決定に安堵しており、裁判所は難問を決着したとして、「高等生物に特許が与えられたとすれば、高等生物に権利を持つことは規定しているが、それに対する責任については全く言及されていない。」とカナダ教会評議会のカレン・ハミルトンは言う。

 

 

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