遺伝子組み換え大豆をめぐるブラジルの戦い
オーガニック消費者協会発行「GM ウォッチデイリー」
(http://www.GMwatch.org/archiv.asp)
(訳)芦川 誠三
以下の3つの記事からおわかりのように、記事(1)の件(くだん)の判事は、ブラジルにおける遺伝子組み換え利用に賛成を表明しており、すべては他の2判事の決定にかかっている。
(1) 遺伝子組み換え種子を解禁するブラジル
(2) ブラジル 今週、「遺伝子組み換え作物法」を議会に上程
(3) 遺伝子組み換え作物をめぐる法廷闘争小史
(1)
遺伝子組み換え種子を解禁するブラジル
アラン・グレンデニング(AP 通信 経済記者) 2003年8月12日(東部時間朝9:38)、ブラジル サンパウロにて
火曜日、連邦判事が、アメリカの巨大農業企業「モンサント社」に対し、ブラジルでの遺伝子組み換え大豆販売を解禁した。モンサントは、このセレーヌ・マリア・ド・アルメイダ判事の決定を歓迎したが、しかし、会社の勝利は短命に終わりそうである。控訴審における他の2判事がこの決定を覆し、2000年の禁止段階にまで戻す可能性があるからである。
モンサントは、同社の「ラウンドアップ・レディ」大豆種子のブラジルにおける広範な不正使用、つまり、近隣諸国から密輸入した同種子を自分の畑で作付けしていることにより蒙った損失の法的賠償を求めている。法律をめったに行使しないのがブラジル政府であるが、同国の大豆収穫の17%がその不正種子によるものと、専門家は見ている。2002年から2003年のシーズンに、ブラジルは約5200万トンの大豆収穫をあげているが、これはアメリカに次ぐものである。
同判事は、遺伝子組み換え種子を禁じる科学的、法的根拠はなく、もしそれが使えなくなったら、強いブラジル農業も痛手をこうむるとする、モンサントの立場を支持しているが、グリーンピースなど環境擁護派は、環境を害する疑念があるという理由で反対している。
モンサントは、6月に、ブラジルの大豆を買っている250の商社と150の輸入業者に対し、不正使用種子大豆の輸入監視をまもなく始めると警告した。セントルイスに本拠をおく戦闘的な同社のこの動きは、事業の中心を除草剤の生産から、遺伝子組み換え種子の世界的拡販へとシフトさせていることに表れており、長年ブラジル農家がモンサントの技術をなんら対価を払うことなく使用していることを厳しく非難している。さらに、ブラジル政府に対する遺伝子組み換え種子合法化のロビー活動も続けてきている。火曜日、ニュヨーク市場で、モンサントの株は、40セント上がって、21.89ドルになった。
(2) ブラジル 今週、「遺伝子組み換え作物法」を議会に上程 (出典:just-food.com 2003.8.12)
ブラジル農業大臣 ロベルト・ロドリゲスは、政府は今週、遺伝子組み換え作物の生産・販売を認める法案を議会に提出すると語った。ロイター電によれば、大臣は、同法案は最優先議案として扱われ、45日以内に採決されるとも語っている。政府の姿勢は、9月の終わりから10月初めに始まり、12月まで続く夏の穀物シーズン開始前には、遺伝子組み換え大豆栽培についてはっきりさせたい、というものである。遺伝子組み換え穀物のこれまでの禁止にもかかわらず、闇市場での栽培と販売はブラジル国内で広く行われており、政府は、今年初めに、来年早々までにはこれも合法化されると宣言している。
(3)遺伝子組み換え作物を巡る法廷闘争小史
1995
相互関税引き下げ協力のための生物安全法の条文化と、生物の安全に関する国家技術委員会(CTNBio)の創設。遺伝子組み換え作物はこの委員会により認可される。
1996
モンサント社 ブラジルにおける遺伝子組み換え大豆の調査開始。
1998 CTNBioはモンサント社「ラウンドアップ・レディ」大豆の南部での使用を認めたが、この認可は環境評価なしに行われたため、消費者監視グループIdec(アイデック)が、認可差し止め仮処分を申請し認められた。
2000
アントニオ・プルーデント判事が遺伝子組み換え作物の栽培を禁じた裁判所命令の延長を決定。アメリカ政府とモンサントは、この決定を提訴したが、却下された。
2001
アメリカ政府とモンサントは新たな動きを起こし、現在、連邦地方裁判所で係争中である。3人の判事のうち1人は遺伝子組み換え作物に賛成。
<遺伝子組み換え作物に関する実態>
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現在栽培されている全遺伝子組み換え作物の99%は4つの国、即ち、アメリカ、カナダ、アルゼンチン、中国に限定されている。
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遺伝子組み換え作物の栽培を禁じている国は、すでに30ケ国におよぶ。
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大多数の国が、食品で遺伝子組み換え作物を5%以上含む場合、その表示を義務付けている。
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ヨーロッパでは、80%近い人々が遺伝子組み換え作物の消費を望んでいない。
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世界で増加しているのは、遺伝子組み換えではなく、自然有機栽培であり、2005年までには、全農業の4分の1近くが有機栽培になると考えられている。
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もし、ブラジル政府が遺伝子組み換え作物を許可すれば、とうもろこし、大豆、小麦、綿花の種子市場は、4つの多国籍企業により完全に押さえられてしまう。つまり、国の主権はこれら4つの会社の意志に委ねられることになる。
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フェルナンド・エンリコ・カルドソ大統領の時、政府は、モンサントの<グリフォサト>工場建設に対し2億5000万ドルの低利融資を行った。<グリフォサト>とは、通常、遺伝子組み換え種子<ラウンドアップ・レディ>とともに販売されている<ラウンドアップ>除草剤の主原料である。前大統領は、遺伝子組み換え種子生産の基礎作りを助けたわけである。
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もし、その資金を北東部半乾燥地域の井戸建設に使っていたら、100万家族の飲用水問題は解決されていたであろう。