GM作物のBt毒-規制上のごまかし

2004年3月24日

ISISニュース

訳 山田勝巳

 

ジョー・カミンズ教授がBt毒とBt作物の影響を検討し、Bt作物自体の毒ではなく代替毒を使う毒性試験に基づく評価の根本的欠陥を指摘しています。更にBt毒が哺乳類に有害である証拠もあります。完全な内容をお知りになりたい方はISISの会員になってください。

 

除草剤耐性とともに遺伝子組み変え作物に挿入されているバチルス・チューリンゲンシス(Bt)毒遺伝子は、食用作物の中心的組み換えである。Bt作物は世界中の6200万fに2003年現在作付けされている(1)。

 

Bt菌は胞子の中に結晶として複数の毒性蛋白を保持している。各毒性遺伝子は単離されて培養されており、各々の毒性遺伝子から関連蛋白質が合成されている。しかし、それぞれの毒素はそれぞれ昆虫に特有である。中心的毒素はCryと表示され、各毒はCry1,Cry2などと表示される。Cry1等には変異種があって遺伝子配列がかなり異なるCry1AやCry1Bがある。そして、更なる小さな違いを示すのにCry1Aa、Cry1Abなどと表す。

 

組換え作物のそれぞれの毒素は、イントロン、ポリAシグナル、プロモーター、エンハンサーなどの制御配列を用いて自然な毒素のDNA配列を変えてある。毒素のDNA配列は自然の遺伝子が作物でより高い活性を持つ様に変え、多くの場合は毒素のアミノ酸配列を変えて植物細胞でより溶存し易くしている(2)。

 

GM作物のそれぞれの毒素は他の毒素遺伝子や蛋白質とは独立して評価しなければならず、規制上の評価を複雑にしている。しかし、北米で許可されている全てのBt作物では、天然毒素の哺乳類や環境に対する特性評価であって、GM作物の中にある人工の組み換え遺伝子の評価に基づくものではない。監督機関は、人工の組み換え遺伝子によってできた毒素は、昆虫に対する毒性があり自然毒と免疫学的相関があれば自然の毒遺伝子と同等だと単純に解釈した(3)。

 

したがって、GM作物にある実際の毒については試験していない。これは、GM作物から毒を単離する費用が膨大なものになると考えられたためである。

 

哺乳動物への毒性

Cry毒素は昆虫に対し共通の作用がある。毒素蛋白質が昆虫の腸管細胞膜に結合する。この毒素レセプター(受容器)は、膜にあるアミノペプチダーゼ酵素とカドへリン様蛋白である事が確認されている。Cry毒素は、昆虫の腸管細胞からカリウムイオンを奪い細胞崩壊を起こす(4)。Cry毒素が結合するアミノペプチダーゼはグリコシル化(蛋白質に短い炭化水素分子が結合)していて毒のレクチン状蛋白領域で認識されている(5‐8)。 レクチンは蛋白質に付随する炭化水素に結合する蛋白質類のこと。通常植物から分離され、その多くは哺乳類の細胞成長に影響を与えるものと植物を害する昆虫に毒性のあるものが知られている。

 

科学論文で報告のあるCry毒素の哺乳類への毒性は比較的少ない。アーパッド・プシュタイ博士はGM食品の健康リスクに関する優れたレビューを出しているが、その中に総合的Bt毒に関する章がある。このレビューには、エジプトでの研究でマウスに単独で投与した場合にも組み換えポテトで与えた場合にもCry1毒素は、腸管の超構造(ultrastructure)に肥大を起こしている報告が載っている。プシュタイはGM作物のより完全で幅広い動物給餌試験が必要だと指摘している(9)。

 

メイワン・ホー博士は、哺乳類に対するBt毒の最新報告をレビューしている。その中にGM飼料を与えた牛の死、消化器内に組み換えDNAが生き残る事、マウスの腸にBt毒素が結合する事が書かれている(10−12)。この調査の報告内容のいくつかは以下に記している。

 

Cry1Ac毒素は、マウスの小腸細胞の表面蛋白に結合し腸の生理学的な変性を来たす事が確認されている(13)。Cry1Ac毒による膣と腹腔内接種では、膣を含む粘膜上にたくさんの抗体反応を誘起した。大腸では発情周期中の抗体反応が変化し、膣の場合は生殖周期の間変化はなかった(14)。Cry1Ac毒をマウスの鼻腔内、肛門、小腸へ接種した場合では、血清、腸、膣、肺で免疫反応があった(15)。Cry1Ac毒は、コレラ毒よりも強いイムノゲンだった(16.17)。

 

これらの数少ない研究はBt毒の影響に関する突破口なのだが、真剣に追試がなされていない事は、Bt毒素の入っている食品が大量に表示もなく消費されている事を考えると重大な誤りである。その上、この問題を指摘した発見に関して監督機関は殆ど触れることはない。

 

組み換え遺伝子の動きや哺乳類の消化器系での毒の作用は、動物への影響を見る鍵となる。Cry1Ab毒素のあるトウモロコシのサイレージが牛に与えられた。4週間後に腸内容物と便の調査が行われた。低コピーBt遺伝子は消化器系では定量できなかったが、Bt毒素は消化器系と便から検出された(18)。

 

Cry1Abを持つコーンを与えられた豚は、Cry毒素遺伝子と毒素蛋白質を大量に持っていることが分かり、Cry1Ab蛋白質は消化器内で完全に分解していない事が分かった(19)。スターリンク(Cry9C)コーンを与えられた豚は、接種したCry遺伝子の約1/4が肛門内容物から発見されており、この遺伝子が消化中に部分的にしか分解しない事を示している(20)。 GMコーンを与えられた動物には、Cry毒遺伝子と蛋白質が完全に消化できない事は明らかだ。この遺伝子と毒蛋白の動物への影響は、当然もっと詳しい研究が必要だ。北米ではGM食品が表示されていないので人や動物が接種する事が、悪影響があるのかどうか判断する事が出来なかった。はっきりしているのは、給餌試験でのDNAや毒蛋白は’現実のもの’であり、監督機関が承認したバクテリアによる代替蛋白は事実ではないということだ。

 

標的外の生命体に対する毒の影響

 環境中の標的外の生命体へのBt毒とそれを決定する遺伝子の影響は、ある程度までは調査されていても全く不十分だ。GM作物周辺の土壌は、これらが放出されれば蓄積している可能性がある。

 

コーンが土壌へBt毒を放出する事は実験室でも圃場でも確認されている(21)。三種類の組み換えを発現したコーンのハイブリッドの根の分泌物中にこの毒が放出されている(22)。根から分泌されたBt毒は土壌分子と結合して少なくとも180日は活性がある(23)。Bt毒は土壌からも水耕溶液中からでさえも植物に取り込まれることはない(24)。Btコーン分泌物は、土中のミミズ、線虫、原虫、バクテリア、菌糸に全く影響がないと報告されている(23)。しかし、最近の研究では、Btコーンの破片は、ミミズにとって致命的ではないが200日以上曝されたものは体重が激減した事を示している(25)。

 

Bt結晶蛋白には線虫を標的にするものがある一方、鱗翅目や鞘翅目を標的とする毒は線虫を標的としないようだ(26)が更なる調査が必要だ。土壌線虫は、植物病原性のものと害虫を食べる線虫がある。Bt作物によって後者が死ぬとなれば経済的には壊滅的打撃になるだろう。

 

Bt作物によって益虫が殺される可能性があれば高くつく。緑クサカゲロウはコーン害虫を食べる益虫。Btコーンを食べる草食昆虫を緑クサカゲロウは食べる。少量のBtCry1Ab毒素を消化した草食昆虫は緑クサカゲロウの生存には影響がなかったが、大量に摂取したものでは緑クサカゲロウの生存率が下がり生き残ったものも発育が遅れた(27)。

草食昆虫を食べる事が「緑クサカゲロウを間接的に中毒させる」懸念を調査するために、実験室で高濃度の天然Cry1Ab毒を草食昆虫に処方して緑クサカゲロウに与えた。天然のCry1Ab毒を与えられた昆虫を食べた緑クサカゲロウは、Cry1Ab組み換えコーンを与えられた昆虫を食べた緑クサカゲロウに比べると非常に影響が少ない事が分かった。(28,29)。この研究を行った学者は、この試験は「Btコーンが補食昆虫に全く脅威にならない事を証明」するために行ったという(29)。だが、天然のCry1Ab毒がBtコーン内で合成されたCry1Ab毒と同じである事が証明できなかったばかりか、Btコーンは較べものにならないほど毒性が強い事が証明された。この毒性は、BtコーンのBt毒によるものか、組み換えプロセス中の何かであるのかはわかっていない。

 

Btコーンの花粉がオオカバマダラ蝶に悪影響があることは詳しく検討されているのでここでは更には触れない(30)。

 

規制上の不備

 Bt作物の哺乳類への毒性と環境影響の評価法は、米農務省(USDA)動植物保健検査局(APHIS)の圃場試験済みGM作物の規制緩和に関する報告に記されている。害虫抵抗性作物と除草剤耐性作物の評価は、どちらも作物中で除草剤耐性をもたらす微生物酵素でもBt毒性蛋白でもなく、細菌培養から分離されたBt毒性蛋白や酵素に基づいて行われている。

 

細菌培養で作られたBt毒は、GM作物で使われている遺伝子とは異なっている。この蛋白質は、GM作物中のアミノ酸配列では著しく変えられている。監督部署とその諮問委員会は、細菌が産生するものが毒や酵素としての活性がありGM作物で生成される蛋白質に類似した免疫特性があれば、GM作物によって生成される蛋白質と”実質的に同等”であると主張している。

 

例えば、コーンのCry1Ab毒性遺伝子は、GM作物が生成するものとは違う大腸菌が生成した毒を使って試験されている(31)。Cry3Bb1のBt遺伝子で組み換えられたコーンは、同様に細菌の蛋白質で試験されている(32)。Cry1Fと除草剤耐性遺伝子で組み換えられたコーンは、哺乳類と標的外生物への安全性で作物のではなく細菌の蛋白質試験に基づいて承認されている。Cry2AbのBt毒で組み換えられた綿は、細菌が生成した代替物の試験で承認されている(34)。Bt毒遺伝子で組み換えられたじゃがいもは、上記同様、作物の蛋白質ではなく、細菌の代替蛋白を使って試験されている(35)。

 

これらは、Bt作物のリスク評価の典型的な例だ。何百万という人や動物がGM作物に曝されている現状からみると代替毒や代替酵素で試験する慣行は筋が通っていない。このような軽率な手順がまかり通るのは、GM食品や飼料の表示がない事によって可能になるもので、それがあれば製品の追跡が不可能ではないとしても非常に困難になる。

 

イギリスのGM科学検討パネル(2004)の第2回報告によると、「GM植物に導入された遺伝子は、細菌の遺伝子配列に基づいているが、植物体内でより効率的に発現させるため適当なコドンを使って新たに実験室で合成されている。」と述べている。しかし、この報告は、哺乳類への安全性と環境影響(特に標的外生物への)はGM作物で作られる蛋白質の代わりに細菌の代替蛋白を使っている事は述べていない。その結果、アメリカ、カナダ、その他の国で生産されているGM作物は、毒性試験が行われておらず毒性が分かっていないし、GM作物から作られた製品に表示をしていない事が人や動物への影響をあやふやにしてしまっている。

 

これらの理由により、明らかにGM作物の認可は違法である

 

 

 

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