日刊酪農乳業速報
2004年2月10日
bST供給制限で、米国の生乳生産量減少か
泌乳量の増大効果がある、遺伝子組み換え型の牛成長ホルモン、bST(商品名ボスィラック)の供給をアメリカのモンサント社が、制限すると発表したことで、米国の生乳生産量が、落ち込むとの観測が流れている。これを受け、早くもクラスV(チーズ向け)先物乳価が上昇し始めた。本誌と提携している「アグラユーロップ」紙が、最新号で報じた。
同紙によると、ボスィラックの供給制限は、製造上の問題が、発覚したことに伴う措置。オーストリアの製造工場の問題点を米食品医薬品局(FDA)に指摘されたことで、モンサント社は3月1日から、供給量を過去最高時の50%に削減するとともに、価格を9%引き上げると発表した。94年に、bSTが、FDAに認可されて以来、初めての値上げ。こうした事態は、少なくともジョージア州の自社工場で製造を開始する来年初めまでは続くという。
さらに1頭当たり乳量を10〜15%増大させるボスィラックは、米国の乳牛の22%に投与されているため、供給制限により、米国の生乳生産量が減少するとして、クラスV先物乳価が上昇し始めた。複数のアナリストは、「今回の供給制限が、生乳生産量に与える影響は少ない。」と見ているが、一方で、T〜1.5%落ち込むとの調査結果も出ているようだ。
bSTをめぐっては、国際化を見据えたコスト削減のために、日本でも使用を認めるべきとの意見があるが、農水省は、現在のところ否定的な考えだ。松島浩道牛乳乳製品課長は、「引き安全性に対する日本の消費者のきわめて高い要求水準を考えると、ホルモンを投与して生産量を増やすなどということが、受け入れられるはずは無い。国際化には、安全、安心な牛乳の供給を考えて、生産加工面でのコスト削減に、地道に努めることが必要だ。」と話している。