BSE予防−問題と対策

最善のBSE発生防止策は有機畜産

M.パーデイー

訳 山田勝巳

 

イギリスでも完全に有機転換された農場で自家飼育された牛からは、BSEが一頭も発生していない。 また、BSEに罹った牛が有機農場に導入された場合も、有機飼育牛への水平伝達は全く起こっていない。

 

BSEは、抗酸化力を失ったマンガンの超酸化物が、脳を汚染した結果であることを生化学、病理学、環境的証拠が示している。 この結果生じたプリオンで汚染された肉骨粉のリサイクルによって伝達した可能性がある。

 

BSEの予防には以下の予防策を採る必要がある。

1. 環境中から過剰にマンガンを取り込まない。

2. 脳にマンガンが蓄積するような血液と脳の障壁に漏れの生じる状況に牛を置かない。

3. 農場の土壌から抗酸化物質補助因子である銅、セレン、亜鉛が欠乏しないようにする。

4. これらの補助因子が植物や動物に吸収されるのを妨げるような近代畜産方式を止める。

5. 化学物質、放射線等酸化力のあるものへの過剰暴露を避ける。

6. マンガンを含有する可能性のある脳リサイクル品を牛に与えない。

 

BSE予防飼育法 (問題点とその解決法)

 

問題1.  血液/脳障壁で金属代謝機能が未発達な時期に、代用乳、自由摂取ミネラルなどとして酸化物・硫化物の形でマンガンを子牛に与えている。 マンガンは肥料や殺菌剤として様々な形で作物に散布されている。 また、鶏糞、下水汚泥、鉄の高炉灰肥料の使用に伴って、マンガンが土壌に蓄積される。 成牛でも、鶏糞、お茶の残滓、米糠、大豆など濃厚飼料の成分としてマンガンが蓄積される。  水はけが悪く酸性の強い土壌では、マンガン摂取がしやすくなる(化成肥料の大量使用による場合もある)。  マンガンの吸収は、ホルモン投与や銅、鉄、リン、カルシウム、マグネシウムが食餌中又は牛の体内に欠乏している時にかなり多くなる。 

 

対策1:有機的方法; 人工粉乳やミネラルを子牛に与えない。 全乳と有機管理された土壌で栽培した飼料によってミネラルバランスを得る。マンガンが雨や灌漑で流亡するのを防ぐため腐植を増やすような有機物を大量に土壌に施用する(こうするとマンガン肥料を使う必要が無くなる)。 こうすると銅、カルシウム、マグネシウム、燐、鉄の流亡も防ぐ事ができ、また土壌pHが中性に近くなってマンガンの蓄積を防げる。 場合によっては、石灰を使い水はけを良くする。 有機畜産技術は好気性微生物とミミズ、軽量機械によって土の硬化を防ぎ、水はけを維持し、空気とpHを適性に保つ。

 有機栽培作物は細胞膜が強くカビの攻撃を受けにくい。 どうしても必要な場合は、殺菌剤として銅剤を使い、マンガン剤は使わない。

 

対策2:非有機的方法;  銅を使った粉乳やミネラルを使う。 マンガンが入っていない物。鶏糞やマンガンの入った濃厚飼料は使わない。 下水汚泥や鶏糞(マンガンを多量に含む餌を与えたもの)を肥料として使わない。 高濃度の酸化マンガン剤を与えない。 低濃度の硫化マンガン剤を使う。 子牛や妊娠牛(牛の胎児)には一切マンガンを与えない。 ホルモン投与を止める。  水が溜まったり酸性化して土壌中にマンガンが蓄積しないように、軽い機械を使い、化成肥料を最小限にし、排水を良くし、石灰マグネシウムで空気を良く送り込み、pHを中性にして、土を固めないようにする。

 

 

問題2. 持続性ストレス、低レベル放射線暴露、ビタミンB欠乏、大量エストロゲン/成長ホルモンの使用、浸透性殺虫剤の使用等が、血液/脳障壁の透過性を高めて、マンガンやリサイクルされた+3価マンガンを脳に無制限に通してしまう。

 

対策;  密飼いや粗暴で残虐な扱い、トラックなどで頻繁に移動するなどのストレスを無くす。

首輪通信機や耳タグ給餌機を使わない。レーダー、ラジオ、移動無線、電話の塔(パラボラ・アンテナ)の近く、飛行機の航路近くで飼わない。ビタミンB欠乏の高カロリー飼料を与えない。成長促進や繁殖目的のホルモンを使用しない。浸透性の殺虫剤を使わない。 非浸透性殺虫剤で血液、脳障壁を越えないデリスのような粉末又は水溶性の殺虫剤を用いる。 適当な間隔があくように牧草地をローテーションして牛の寄生虫を防ぐ。

 

 

問題3.  灌漑や土砂降りの雨によって土壌から腐植が流亡する近代農業では、銅、セレン、亜鉛などの抗酸化補助因子のような微量養分が殆ど欠乏している。

 

対策; 蓄糞や堆肥で土壌中の腐植を保持し、軽い機械を使い、草地、クローバー、豆科植物のローテーションなどを行って、酸性化する化学肥料を使わない有機的方法で農業を行う。 腐植を維持して保水力を高め、灌漑を出来るだけ避ける。

 

 

問題4. 化学肥料、土壌農薬、重機による硬盤の形成によってミミズや小動物、好気性菌が減少して酸性化し、土壌の自然な排水性を損なっている。 酸性化すると土壌中で利用可能なモリブデンが不足する。 利用できるモリブデンは銅と結合し、この痩せた土地に依存する牛にとって二次的な銅欠乏を生じる。 大豆を飼料に多く利用すると、牛の消化器系でフィチン酸塩が過剰になり、これが銅や亜鉛と結合して吸収を妨げる。慢性的エストロゲンやステロイド投与は、牛の銅吸収を妨げる。 大豆やアルファルファ中心の食事によるエストロゲン大量摂取でも牛の銅吸収を妨げる可能性がある。ジチオリン酸分子のような特定の浸透性殺虫剤や抗生物質、駆虫剤の中には、銅を効率良くキレート化して、牛が利用できる銅を無くしてしまう。

 

対策: 化学肥料、土を固める機械、土壌農薬の使用を最低限に抑えてpHを中性に保ち、好気的で生物学的に生きた土を維持するようにする。 蓄糞や堆肥を沢山使って良質の腐食とミネラルバランスや栄養循環を維持する。大豆飼料を最小限にする。 ジチオリン酸殺虫剤や牛による銅の吸収を妨げる抗生物質やホルモン剤のようなキレート剤を使わない。

 

 

問題5.高濃度浸透性殺虫剤(ウシバエなどの内部寄生虫駆除に使われるもの)、無線トランスポンダー・タグ・首輪、長期ストレス、紫外線とオゾン、移動電話・レーダー・電磁波・超音波源に近いと、これらは全て現代の牛の脳に対し複合的に高い確率で強度の酸化ストレスを与える。

 

対策;  浸透性殺虫剤の使用を避ける。 ウシバエはハエの一年のライフサイクルで牛の背中からウジが出るときを捕らえて根絶する。 浸透性でないデリス殺虫剤を幼虫に寄生された牛にだけ擦り込む。 

シラミは、紫外線で殺される地域で牛を飼う場合は回避できる。 日射が強烈な日に、強い紫外線を避けるために木や建物の影に自由に出入りできるようにする。 寄生虫は、良くできた清浄な牧草地のローテーションで回避できる。 密飼い、乱暴な扱い、不必要な運搬でストレスを与えない。 トランスポンダーを使わない。 オゾンや侵略的照射は、農場自体をそのようなもののない地域へ移さなければ避けようがない。

 

マーク・パーディ

背景

1986年以来、悪名高い新種の神経変成症候群 BSEとvCJDは、気付かぬうちにイギリス農業の鼓動を弱らせてしまった。 何千頭もの牛がこの病気の犠牲になり、若い人々の犠牲が増加しつつある。 国家、利害関係者、政党、農家、犠牲者、消費者を巻き込んだ激しい争いを引き起こした。 

 

BSEの後遺症が深刻であるにもかかわらず、この症候群の原因解明への真の努力は殆どなされず、最善の治療法、抑制法、まして予防法など全く想像も付かない状態である。 

 

ここに述べる物語は、この失態全てに一条の光明をもたらすものである。 私自身の突拍子もないエコ捜査と独自の野外調査、そしてそれと連携して進むケンブリッジ大学生化学者ディビッド・ブラウン博士の研究室での実験を記している。 これまでに、vCJDとBSEが牛と人がそれぞれ別個に同じ一連の有毒なマンガンと酸化物質という環境要因に曝された結果であり、共食いによるものではない可能性を示す確固とした証拠が挙がってきている。 このような論点の仮説が勢いを持ってくれば、現在主流の考え方ががらりと変わる可能性がある。 

 

たった一人の探査行

私のことが公に知られるようになったのは、1984年に高裁でイギリス政府の定めたウシバエ根絶法を粉砕してからだった。 私は、この判決によって、毒性の中でも特に脳内の金属とその価電子の微妙なバランスを崩す力のある浸透性の有機リン系殺虫剤を、我が家の牛に処方しなくて済むようになった。 だから、1986年にイギリスの牛にBSEがその醜い姿をもたげてきたことは驚きではなかった。 英国政府がウシバエ退治に他国が用いる4倍量という大量の浸透性有機リン殺虫剤を義務化したツケが出たものであって、私には当然の結果と見えた。

 

ある地域では、義務化されたウシバエ有機リン殺虫剤処理を行った期間とその地域で発生したBSEの比率に明らかな相関があった。 同様の研究がアビニョンのブーニアス教授によってフランスでのウシバエ対策義務化キャンペーンとBSE発生件数について行われ、同じ相関性を報告している。

 

当時酪農家だった私は、私の有機農場に買い入れた牛が発症してBSEを直に経験する事になった。  完全有機の農場で育成された牛にBSEが一件も発生していないという調査発表を見て強い印象を受けた。 有機基準では、20%まで一般の飼料が許されており、肉骨粉もその範囲で許されていたにもかかわらず、である。

 

そのときから、BSEとその人間版であるvCJDについて、大方が原因として合意していることに重大な疑問を抱いた。スクレイピーで汚染された肉骨粉を、僅かでも食べた牛にBSEが発生するという仮説には論理的な欠陥がありすぎた。 BSEで汚染された牛肉を食べることによってvCJDが発生するという連続論も同じくらい欠陥があった。

 

牛の脳を肉骨粉としてリサイクルすることで生体蓄積が進み病原(+3価、+4価マンガン)をばらまいた可能性は否定できないが、それはそもそもどうして病気が発生したかには関係がない。

 

これまでの仮説の欠陥

  明らかな欠陥の多くは、新変異型伝達性海綿状脳症(nvTSE)の極めて重要な発生原因として、肉骨粉/BSE牛肉中のスクレイピー因子だとしていることだ。

 

1. 1970年代から1980年代にかけて、原因とされているイギリスの肉骨粉が何千トンも牛の飼料として輸出されたが南アフリカ、スウェーデン、東ヨーロッパ、中東、インド、第3世界の国々ではBSEがまだ発生していない。

 

2.  肉骨粉製造工程の処理温度、製造技術を変更したことが羊のスクレイピー因子の生存に繋がって牛に移り、BSEが発生したとなっている。 しかし、スクレイピーが風土病になっているアメリカやスカンジナビアでは全く同じレンダリング方式がとられているにもかかわらず、BSEが発生していない。

 

3.  アメリカで、スクレイピーに汚染された脳組織を与えたり、注射したりして牛にBSEを発生する実験をしたが、成功例はない。

 

4.  イギリスで牛の餌として肉骨粉を禁止した1988年以来4万頭以上の牛が生まれたが依然としてBSEが発生している。  更に、1996年に全ての家畜の飼料に肉骨粉を禁止した後でもBSEが発生している。

 

5.  山羊や羊はTSEに感染性があるが、肉骨粉を蛋白源として飼料中に恒常的に与えてもBSEは全く発生していない。

 

6.  ロンドン動物園のクードゥー鹿5頭のうち4頭がBSEを発症したが、肉骨粉の入った餌が与えられたことはない。

 

7.  エクスムーアのリスコムに以前あったイギリス政府の実験農場では、濃厚飼料は一切与えずに牧草とサイレージだけで子牛を育成するようになっていた。 にもかかわらず、この農場で4頭がBSEの犠牲になっている。 

 

8.  vCJDの原因だとして機械的に回収した肉製品やベビーフードを、vCJDが発生していない世界中の国へ輸出した。 その上、地方の肉屋の頭骨を割るやり方が、その地域のvCJD発生の増加理由として説明されている。 しかし、このやり方は小さな肉屋では英国全土で行われていたことだ。

 

数え切れないほどの疫学的欠陥、そして何百万ポンドも費やした研究でもスクレイピーの病原とこれらの病気の原因との因果関係が分からないにも関わらず、BSEがスクレイピーによって発生したという作り事が言い触らされ、これが一般の人々に念仏のように擦り込まれてきた。

 

プリオンの起源; 最初の原因を探る。

全ての海綿状脳症は、この病気に罹った哺乳動物の神経系統にあるプリオンという蛋白質の奇形によるものであることが病理の主要な特徴であることは十分に立証されている。 しかし、自然界でプリオンがそもそもどのように異常化したのかは誰も分かっていない。 私は、牛の背骨にあるプリオン蛋白から僅か数ミリしかない背中に添ってかけられる浸透性の有機リンウシバエ殺虫剤がプリオン蛋白の奇形を起こす原因になっているのではないかと疑い始めた。

 

有機リン殺虫剤は、哺乳動物の神経蛋白質の分子形状を変え脳が正常に機能出来なくなる影響のあることが知られている。 しかし、誰も有機リン殺虫剤が、プリオン蛋白をも奇形化してしまう可能性については思い至らなかった。 色々な関係機関に試験をしてもらおうと再三努力したが聞き入れられず、最終的に私が資金を集めロンドン精神病研究所のステファン・ワットレィ博士に、有機リン殺虫剤フォスメット(英国の農場で極端に高濃度使用されている)を使って脳細胞培養をしてくれるよう御願いした。  驚くべき事に、この実験では有機リン殺虫剤は、海綿状脳症の初期に見られるプリオン蛋白の細胞代謝異常を起こすことが分かった。 これはフォスメットに暴露すると哺乳類はこの病気に罹りやすくなることを示唆している。 残念ながら、この一連の実験では、TSE脳の鍵であり主要な証拠であるプロテアーゼ抵抗性を持つプリオン蛋白の奇形は起こらなかった。

 

群発退治

  私は、有機リン殺虫剤だけが原因ではないと結論した。 恐らく、有機リン剤と働く何か(Xファクター)が欠落部分を埋めることで原因を作っているに違いない。 そこで振り出しに戻り、世界のあちこちに昔から多く海綿状脳症が発生している地域に共通する特有の環境要因を調べ始めた。 海綿状脳症が人と動物に高い割合で発生しているコロラド、アイスランド、スロバキア、カラブリア、サルディニアなどを調べて回った。 分析の結果、これらの地域の食物連鎖にはマンガンのレベルが異常に高く、銅、セレン、亜鉛の欠乏が見られた。 病気の出ていない隣接する地域では、マンガンレベルは正常に戻っていた。

 

マンガン汚染された人々

調査した海綿状脳症の発生の多い地域では、環境中にマンガン供給源がそれぞれ特定できる。 それは自然発生するものや産業の燃焼による酸化マンガンで、火山、酸性雨、鉄・ガラス・セラミック・染め物・武器工場、無鉛ガソリン精油所、飛行機の離陸空域等だった。

 

この調査の結果、海綿状脳症の原因について、総合的仮説を発表することが出来た。これによって、わたしは、 ケンブリッジ大学でひたむきにこの捕らえどころのないプリオン蛋白を研究し、その働きについての理解に風穴を明けたディビッド・ブラウン博士とつながりを持つことが出来た。

 

ブラウン博士は、銅が正常なプリオン蛋白に結びつくことを示しただけでなく、銅蛋白が抗酸化力を持つことを明らかにした。 彼のラボでの研究内容と私の現地調査内容が符合した事で、マンガンが過剰で銅が欠乏する地域に生息する病気に罹りやすい哺乳動物では、マンガンがプリオン蛋白の銅と入れ代わるという、私の仮説に欠けていた部分を補完できた。

 

この置換が、TSE発生の鍵と考えられる重要なプロテアーゼ(蛋白質分解酵素)抵抗性を持つプリオン蛋白の異形化を起こすと考えた。 これを基にディビッド・ブラウンは、プリオン蛋白を生成する細胞にマンガンを注入する細胞培養実験を行い、見事に有機リン殺虫剤では上手く行かなかったプリオン蛋白の異形化を起こしたのである。

 

日本での追試の結果、マンガンが正常な水分補給と最終折り畳み段階を乱し、折り畳み異常を起こすことが示された。 更に、ケース・ウェスタン大学(クリーブランド)とフランスの研究チームが、CJDで死亡した患者の脳を死後解剖したところ、ここでも、対照群に較べて10倍量のマンガンと1/2の銅というTSE食物連鎖に見られたのと同じような高マンガン、低銅現象が見られた。

 

暗雲の中にも銀あり

  TSE多発地域の中には、銅の欠乏は見られるが、別の転移金属である銀が異常に高いところがあった。 マンガンと同じように銀もプリオン蛋白の銅リガンド部で入れ替わりやすい。 これらの地域は主に、スキー場、貯水場、航空路上、沿岸部で雨や雪を降らしたり雲や霧を散らす為にヨウ化銀を広範に空中散布しているところだ。

 

TSEに更なる光明−致命的酸化リンクが判明

新しいTSEの多発地を訪れるたびに、どこも同じように標高の高い、雪で覆われた針葉樹林帯であることに気付いた。 共通するマンガン過剰、銅欠乏のリンクとは別にこの地理的共通点に当惑した。

 

しかし、1995年以来20例のCJDが発生しているカラブリアン村を訪れたとき、この地理的条件とTSEの関係の謎が解けた。 最近この村は、恐ろしいほど真っ白なコンクリートで家を造っており、それも白い砂岩の地盤上で、ギラギラ陽射しが照り返すところに建っているのである。 この環境は、強烈な紫外線集中条件を備えている。 この実体験で、私の調査で共通していた高い標高、雪で覆われた針葉樹林帯という地理条件と、強い紫外線・高濃度オゾンの関係が閃いた。

 

紫外線は、TSEを科学するのに必要なもう一つのリンクだった。 つまり、罹患した哺乳動物にTSEの病理が最初に現れるのは、網膜、瞼、皮膚という日光に最も曝されやすい露出部に現れる傾向である。 さらに、銅が結びついた正常なプリオン蛋白は、網膜、松果体、視覚野、視床下部、脳下垂体、脳幹など脳の周辺で紫外線によって発生した電磁波を通す神経系統に分布しているという事実である。 プリオン蛋白は、脾臓、リンパ系、グリア細胞、ニューロンの成長と修復時の増殖に神経成長因子が仲介する幹細胞などその生理機能に電磁波エネルギーを利用する部位にも発現して

いる。

 

この点では、経絡に添って電気恒常性を維持する調整機能を果たすのが正常な銅プリオンで、中国医学で認知されているこの電磁気経絡の存在に科学的根拠を与えうるのが銅プリオン蛋白の電気伝導性である。

 

銅プリオンは導体/マンガンプリオンは電磁エネルギーの絶縁体

銅が電流を通す導体として産業利用されていて、マンガンは電池や電球のフィラメントとして電気エネルギーを蓄えるのに利用されていることを考えるとプリオン病の原因を総合的に説明出来る可能性がある。 つまり、正常な銅プリオンは、睡眠、性、行動などの生命サイクルのバランスを維持する働きを助けるために神経系を通して光エネルギーを通過させ脳を刺激する。  それに対し、マンガンプリオンは、紫外線エネルギーを遮断し蓄積して発火点まで達する。 このレベルでは、神経病原性フリーラジカルがクラスター爆弾のように爆発し神経系に添って連鎖的に伝わって行く。

 

こうなると、TSEに罹った哺乳動物は、正常な銅プリオンが不足しているため、網膜で受けた紫外線の酸化力を排除できない。 そして、紫外線のエネルギーが溜まり、行き場を失って蓄積されている無害なマンガン2+(抗酸化物質)を致死的マンガン3+/4+(酸化物質)に変換してしまう。 従って、網膜にマンガンプリオン蛋白が蓄積されると、安全なものが致死性のものに変わってしまう。

 

紫外線のような環境オキシダント(酸化剤)は、マンガン汚染と銅欠乏哺乳類のプリオン蛋白を「ジキルとハイド」のようなものに変え、フリーラジカルによって連鎖反応を起こし中枢神経を冒して、ニューロンが「潰れ」神経変成を起こしてTSEへ進行する。

 

人間による環境オキシダントの増加と新変異型TSEの出現

  在来型のTSEの生成を司る環境因子を検討したが、若年の哺乳類に出始めたより悪性な最近のTSE(BSEやvCJD)はどのような要因が新たに関与しているのだろうか。 恐らく、これらの急速に進行する新型TSEは、中枢神経に到達する酸化力を持つ人工的環境要因、例えば浸透性の有機リン剤(虱用シャンプー、ウシバエ剤等)、レーダー、オゾン、携帯電話のマイクロ波、紫外線の増加(オゾン層破壊による)、コンコルドの超音波等、に暴露する量が増え、これらが複合的に働き、致命的酸化の引き金となり悪性で加速化したTSE発生が若年層に起きていると思われる。 

 

TSEは、組織の酸化物処理機能(ホメオスタシス=恒常性)が破壊された結果であるとも言える。 TSEに罹りやすい哺乳類が、抗酸化金属(銅、セレン、亜鉛)が不足した状態で高濃度のマンガンと酸化剤に同時に曝され、これらが複合して、中枢神経が超酸化状態になり、抗酸化防御がない状態でフリーラジカルが連鎖反応で拡散するようになる。

 

在来型と新変異型CJDが、都市に較べて、農村や沿岸地域に多く発生するのは、この酸化起源説で上手く説明できる。 また、80%のCJDが農村や沿岸地域に発生している事実は、BSEに汚染された牛肉等の消費によるものだとすれば都市も農村も同じように消費しているわけだから、これによってvCJDが起こるという神話を払拭してしまう。 農村や沿岸地域は、近年紫外線、浸透性農薬等人為的原因による酸化剤の複合暴露が増加しつつある一方、 都市環境では皮肉にもスモッグが覆っているため紫外線が吸収・分散され、排気ガスとの反応によるオゾン発生を防ぎ、災禍を免れている。 ステイトン・アイランドとロングアイランド(コンコルドの離陸、レーダー、沿岸紫外線地、マイクロ波の全てがある)では、アメリカでもCJD発生率が際だって高いのは当然かも知れない。

 

マンガンが人を殺める

新変異型TSEとマンガンのつながりは、環境オキシダントとのつながり同様確定的だ。 過去20年に亘って、ヨーロッパでは高濃度酸化マンガン添加剤が、牛や人、動物園の動物、ペットの食物連鎖中に自由摂取ミネラル、錠剤、肥料、殺菌スプレー、塗料、ガソリン添加剤など様々な形で増えてきている。 更に、この金属を生体濃縮する大豆がトレンディであるとして飼料利用が増えている。 気掛かりなのは、マンガンが幼児や子牛の代用乳に自然な母乳の1000倍近いレベルで添加されていることだ。 未成熟な哺乳動物の食餌中に過剰なマンガンがあることは、血液の脳障壁が十分に形成されて居らず、マンガンなど金属が脳に過剰に取り込まれることになってしまう。 

 

この毒性マンガン・オキシダントTSE原因説で、脳下垂体組織を使う成長ホルモン療法が一種のCJDを起こす医原病的TSEをどう説明するのかと訝る向きもあるかと思う。下垂体や網膜の組織は、実験室ではTSEを良く伝達するが、これらがまさにマンガンを最も良く蓄積する組織なのだ。 これらの組織に含まれる高濃度のマンガンがいわゆる感染源として働くのだろうか、特に酸化され3+の致死的プロオキシダントの形になったとき。

 

地球の全地域で

  私は現在、英国、ヨーロッパ、そして今回日本と最近CJDやBSEが多発している地域で、関連のある水、土、植生、大気、血液/組織の総合環境調査計画(金属とオキシダント分析等)に基づいて野外調査の範囲を広げて実施している。

 

また、オーストラリアの北にある島でアボリジニーに多発している奇妙な進行性致死的神経退行性疾患(バーズ病《Birds disease》として知られている)を調査するよう依頼を受けている。 この島は、マンガン採掘場の本拠地でもある。

 

今後の方向

英国で有機的に飼育された牛には全くBSEが発生していないという事実は、持続的有機農業方式が最善のBSE予防法になることを示している。有機農業とは、家畜を全乳、寄生虫のいない牧場でのローテーション、腐植が豊富な

好気的土壌で栄養バランスの良い牧草で育てることを意味する。 この点では機畜産は、慣行畜産で何度も繰り返される浸透性の殺虫剤による致命的酸化の影響に曝すことを避けることが出来る。 そして、BSE発生の核心にあるミネラルバランスの崩れ、抗酸化力の欠乏から家畜を保護する事が出来る。

 

 

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