狂牛病がいかに種の壁を越えるかの研究

2001年10月22日

ロイター通信ニューヨーク発

メリット・マッキニー記者

訳 山田勝巳

(原論文は:Journal of Virology 2001年75巻: p10106-10112)より

 

イギリスの狂牛病の発症で起こったと思われる脳消耗病(CJD)が、いかに種から種へ移るのかの一端を新しいレポートで垣間見る。 他の動物からの副産物を家畜に与える考えを疑問視する発見だ、と研究者の1人がロイターに話した。


  狂牛病又は牛海綿状脳症(BSE)は、プリオンと呼ばれる異常脳蛋白質の蓄積によって起こると考えられている多くの脳消耗病の一つである。 1996年に、新型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)(人の脳消耗病)が、イギリスの青年で報告されている。 この新型CJDは、BSEに感染した牛肉を食べた人に発生するという強力な証拠がある。


  このような種から種へ病気が飛び移ることは、余り頻繁には起こらないと考えられているが、そのプロセスは殆ど知られていない。 プリオンに冒された特定の種に何が起こるかを調べるために、モンタナ州ハミルトンのロッキー・マウンテン研究所の研究者は、病気のハムスターの異常プリオンをマウスに注入した。 このマウスのグループにはスクレイピーの症状は全く出なかったし、標準的な実験室の試験でも病気の原因になるものは検出できなかった。 しかし、研究者がこのマウスの脳から組織を取りだしハムスターに注射したところ、全てのハムスターがスクレイピーを発症した、とウィルス学ジャーナル11月号(Journal of Virology)に報告されている。


  研究者達は、自分たちの発見が他のプリオン病に該当するかどうかは分からないが、現在のプリオン病検出感度は不十分だと結論している。 最初ハムスターのスクレイピーを注射されたマウスは病気にはならなかったが、他のマウスは運が悪かった。 研究者が最初のグループで病気が出なかったマウスの脳から、ハムスターのスクレイピー病原体を取ってこれを他のマウスに移したところこのマウスは病気になってしまった。 「スクレイピーは、(二世代目で)この新しい種への対応を学んだようで、上手く作用した。」と研究著者の1人ブルース・チセブロ博士はいう。 「マウスへの2度目の注入では複製が早くなり、もっと致命的になった。」と記者発表で話した。 だが、マウスで出たスクレイピーは、それぞれ出方がバラバラだった。 一匹一匹のマウスの病気になるまでの時間や影響を受けた脳の部位もそれぞれ違っていた。

 

ロイターとのインタビューで、著者の1人であるリチャード・レイス博士は、他の動物の副産物を飼料を使うのは止めた方がよいのではないかと話す。 牛に他の動物の副産物を使った飼料を与えることを止めた農家は多いのだが、鶏や豚など他の家畜には与えている。 この研究は、病気にならない動物が他の動物に病気を移すことを示しているので、そろそろ、こういうことは考え直すべき時だとレイスは説明する。 この研究では、プリオン病が、別の種へ移動するのは、非常にゆっくりしたもので、発見するのは必ずしも簡単ではないという結果である。

 

 

 

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