ブラジルで大豆論争が渦巻く

    

スチブン・ルイス

Food Chemical Newsvol.45, No.7

2003331

訳 河田昌東

 

ブラジルはバイテクの泥沼に直面している。ブラジル政府は最近遺伝子組換え大豆を認めるだろうと言った。国内で栽培された組換え大豆は今年度推定8 を占め、ブラジルの国内外で販売される予定である。しかしながら、このバイテク作物のブラジルにおける長期的な 見通しは必ずしも良くない。バイテク大豆はブラジル南部で密かに、大量に栽培されてきたので、政府は今季バイテク大豆と非バイテク大豆を確実に分別するのは不可能だと判断したのだ。国内ではいくつかの地域ですでに収穫が終わっており、輸送経路や保管を分離するには十分な時間がない。来季以降はバイテク大豆の商業栽培を禁止する良いチャンスだと考えているので、現時点で、政府はバイテク大豆を分別するためのインフラ整備を行う計画をもっていない。閣僚レベルでは今年収穫したバイテク大豆の販売認可を支持する意見が多いが、ラウンドアップ耐性大豆の栽培が将来地域に与える影響の調査が十分行われるまでは禁止すべきだと言う世論が増えつつある。バイテク作物に関する中国の規制に十分応じることが出来ないので、ブラジルから中国への輸出にも影を落としている。それが逆にルラ新内閣のバイテクに対するスタンスに強い圧力をかけている。今月初めに、中国農業省が行き詰まっていたブラジルの証拠文書問題は解決した、と発表してこの圧力はなくなった。

 

現在、バイテクの商業化に関する正式の政策を作る問題で国内での圧力が強まっている。今月開かれた国際大豆フォーラムで、82%の参加者がラウンドアップ耐性大豆の栽培を速やかに認めるように希望した。この会議の後で、農業相ロベルト・ロドリゲスはラウンドアップ耐性大豆に関する決定は8月までには行うとするステートメントを発表した。もし出来なければ、生産者達は来季の種子を買ってしまうであろうし、その結果来年もまた不法な栽培が繰り返されたと言う批判が増えるだろう、と彼は警告した。

ブラジルの下院立法議会の農業委員会は今月、国家バイオセーフテー技術委員会が引き続きブラジルにおけるバイオ作物の商業生産に勧告する評価の責任を持つ、と確認した。しかしながら、バイテクの商業化に対する同委員会の規制の効果はますます疑わしくなっている。RR大豆の商業栽培を当初認可しようとする試みは2年前に裁判で阻止されている。 同委員会メンバーに最近環境弁護士が指名されたことはバイテクの商業化に将来も反対の決定が行われると予測される。

閣僚達は、現在の大規模な違法栽培の責任はカルドソ前大統領にあるとしている。ブラジル政府はバイテク作物の法的な栽培禁止を強化することも出来ず、より規制を強化するために必要な手段もない。来季はバイテク大豆の作付けを十分監視するためには農業省の軍隊が必要となろう。疑惑が深まり有効な手立てもないブラジル政府にとって、大量の農業関係の役人を雇うことはルラ政権には簡単には出来ない相談である。

 

 

 

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